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「テ・アゲロ」
テ・アゲロ the twins (5人)

テ・アゲロ  the twins ⑧ -45-

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二人はゆっくり男に近づいて行く。

地味なグレーのジャケットに、ツバ付きの帽子を目深に被ってはいるが、

大野も櫻井も、見間違いではないと確信していた。

男は二人から逃げるように背を向け、走り去ろうとする。

「誠さん……ですよね?」

不意に大野に声を掛けられ、その肩がビクッと揺れる。

村の大人たちは祭りの準備に余念がない。

誰も三人に気付く様子はない。

男はそれでも背を丸め、逃げようとする。

と、大野の声がその背中を止める。

「瑠加さんの部屋に、人形がありました。」

男は足を止め、ゆっくり振り返る。

「……人形?」

「そうです。あなたの人形です。誠さん。」

誠と呼ばれた男は、訝しそうに二人を見つめる。

「……どこかで……会ったことが……?」

大野を見て首を傾げる。

「ええ、以前……冬の散歩道と言うバーで。」

誠はじっと大野を見て、思い出したように顔を上げる。

「ああ、記者さん……。」

「はい。」

大野がにっこり笑うと、誠は逆に疑り深そうに眉をひそめる。

「どうして……こんな所に記者さんが……?」

大野は困ったように頭を下げ、誠に一歩近づく。

「すみません……本当は大貴さんに頼まれて……あなたを探してました。」

「大貴に……会ったこともないのに?」

「はい。ここに戻ってきて欲しいと……。」

誠は何も言わず、大野を見つめる。

「ここに来たのも、大貴さんに頼まれたんです。」

「大貴はなぜ……?」

「大貴さんも菊代さんも……あなたに戻って来て欲しいんです。」

「俺に……?」

「そうです。あなたに……瑠加さんの後を引き継いで欲しいと思っているんです……。」

瑠加と言う言葉に、誠の瞳が揺れる。

「…………。」

誠が何も言ってくれないので、大野は櫻井の顔をチラッと見る。

櫻井は小さくうなずき、大野の隣に進み出る。

「失礼だとは思ったのですが……瑠加さんの日記を……読ませて頂きました。」

「日記……。」

「ええ、中学時代の日記です。」

誠の顔色が変わる。

「そこにはたぶん、全てが書かれていたのだと思います。」

「……あいつはなんて……?」

大野は躊躇いがちに口を開く。

「あなたへの気持ちと……あの日、ここであったことが……。」

誠は静かに息を吐く。

視線を空に向け、遠い昔を思い出すように、ゆっくり目をつぶる。

「そうですか……。」

二人は黙って誠の言葉を待つ。

「ではお二人は……知ってるんですね。

 私と瑠加のこと……ここで何があったのかも……。」

「はい……。」

誠は準備中の祭りの様子を見回し、ひと目を避けるように木々の間に入って行く。

大野と櫻井もそれに続く。

「あの日も……大人たちは、祭りの準備に忙しかった。」

歩きながら、誠は思い出すように、一言一言言葉を区切って話す。

「夜になれば、大人たちは大人の祭りでいなくなる。

 俺達は、お互いに、自分の想いに苦しんでた。

 絶対知られてはいけない想い……。

 だから、瑠加は……あんな薬を作ったんだ。」

「薬は、お祖父さんの……つまりは誠さんのお父さんの研究結果……?」

誠はチラッと大野の方を振り返る。

「ああ、父はこの村に軍が介入した時の資料を整理していて……、

 軍が何の為にあの花を調べていたのか疑問に思ったんだよ。

 残った資料で研究して……途中でわかったんじゃないかと思う。

 あの薬がとんでもない化け物を生み出すって。

 父の研究資料は途中までで、それを引き継いで瑠加が作った。

 俺の為に……俺と、結ばれる為に……。

 そんなことしなくても、俺の気持ちは瑠加にしかなかったのに……。」

「使ったんですか?あの薬を……?」

誠は小さくうなずく。

「あの薬は……悪魔の薬だ。」

誠はギリッと奥歯を噛みしめ、辛そうに顔が歪む。

大野と櫻井は顔を見合わせ、犬の墓のことを思い出す。

中学生には……いや、大人であっても、きっと残酷な光景だったに違いない。

「それは……その……体を重ねてから起こったんですか?」

大野が聞きづらそうに聞く。

誠は溜め息のようにうなずいて、ぼそりと答える。

「俺と瑠加が……体を重ねたのはその時を合わせて二度だけ……。」

「二度?思いが通じ合ったのに?」

櫻井が不思議そうに聞くと、誠が振り返る。

「あの薬は……悪魔を生み出す前に、最高の快楽を与えてくれる。」

「快楽……。」

櫻井が思わずそうつぶやくと、誠が大きくうなずく。

「薬のあるなしで……全く違ったんだよ。

 このまま一緒にいたら、あの薬を使いたくなる。

 あの惨状を見てもなお、忘れられないほどの快感だったんだ。」

三人は、犬の墓の前に来ていた。

誠は墓の前に跪き、手を合わせる。

大野と櫻井も少し後ろから手を合わせた。

いつもは静かな神社が、人々のざわめきで満ちている。

遠くでピヨ~と笛の音がする。

徐々に暮れ始めた空は赤く、鳥が群れをなして飛んでいく。

誠が立ち上がると、大野は誠をじっと見つめる。

「あの薬は……使ってからどれくらいで悪魔を生み出したんでしょうか?」

誠の顔が歪む。

「すみません。辛いことを聞きました。

 実は、あの薬に似た薬で苦しんでる友人がいるんです。

 少しでも……何か手がかりはないかと思いまして……。」

大野の言葉に、誠はうつむき加減で視線を斜め上に上げる。

「俺達が服を着る時間は十分にあったから……2時間後くらいじゃないかな?」

大野は納得したようにうなずいて、頭を下げる。

ピ~ヨヨ~~と笛が響き、ついで、太鼓の音がする。

三人が神社の広場の方に視線を向ける。

篝火に火が灯され、ざわめきが、どんどん大きくなっていく。

パッと提灯が赤く色づく。

祭りが、始まろうとしている。










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