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「テ・アゲロ」
テ・アゲロ the twins (5人)

テ・アゲロ  the twins ⑧ -29-

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埃の溜まった階段を、一段一段、足元を確認しながら櫻井が下りて行く。

片手は壁を伝い、片手は軽く宙に浮く。

その様子を見て、大野が、ははんと唇の端を上げる。

「お前、こえぇんだろ?」

櫻井の耳元でそっと囁く。

櫻井は立ち止まり、一段上に立つ大野を見上げる。

「怖がったら、honeyが助けてくれる?」

いつになく可愛らしいことを言う櫻井に、大野は驚いて目を見開く。

「お、お前、本気で言ってんの?」

「本気も本気……。言ってなかったけど……俺、高所恐怖症。」

櫻井が、引きつった顔でニッと笑う。

それを見た大野が、楽しそうに笑い声を上げる。

「そうか、そうか!お前にも苦手なものがあったんだな?」

大野は櫻井の肩を叩き、櫻井の横を、体を縦にして通り過ぎる。

「honey?」

「お前はなんでもできすぎなんだよ。」

大野は笑いながら、スタスタと階段を下りて行く。

「お、大野さん!」

有岡の手が大野に向かって伸び、櫻井の肩にかかる。

「二人でそこで怖がってろ。」

「ええ~?そんな~!」

有岡の訴えに耳も貸さず、階下に降りた大野は、

部屋の中央に置かれた台の周りをグルッと一周する。

台の上には、フラスコ、ビーカー、シリンダー、

器具を固定させるビュレットには試験管がついたままだ。

試験管の中身はとうに蒸発し、白い粉がこびりついている。

大野はそれに鼻を近づけ、クンと嗅いでみる。

微かに香りがするような気もするが、古すぎるのか、量が少なすぎるのか、

何の匂いか嗅ぎ分けられるほどではない。

フラスコの中身も同じだ。

こちらはわずかに黄色みを帯びている。

大野はその細くなっている部分を人差し指と親指で摘み、鼻に近づける。

今度は微かに嗅いだことのある匂いが漂う。

大野はそれを戻すと、壁伝いの棚に近づく。

並べられているのは古そうな紙の束と何冊かの本。

ファイルが数冊。

ファイルと言っても、今のプラスチックの物ではなく、

厚紙で表紙が作られ、紐で綴じられた物だ。

新しそうなファイルを手に取りパラパラと捲る。

次のファイルに手を伸ばし、それを開いた頃、やっと櫻井と有岡が下りて来た。

「お前ら、時間かかり過ぎ。」

大野はファイルから視線を離さず言い放つ。

「で、どうなんです?大野さん?」

「何が?」

大野はファイルから目を離さない。

「何が書いてあるんですか、それ?」

有岡は小走りで、大野の隣にやってくる。

大野の肩に手を掛け、ファイルを覗き込むと、見たことがあるような、ないような、

アルファベットと数字と記号の羅列が目に入る。

「な、なんなんです?これ?」

「さぁな?」

大野は手早く、次のファイルを取り出す。

いつの間にか隣で違うファイルを開く櫻井が小さな声でつぶやく。

「これは……。」

振り返り、櫻井の顔を覗き込んで有岡がじれったそうに言う。

「だから、なんなんですか!?」

「お前、理科、得意じゃなかっただろ?」

大野が、ふふんと鼻を鳴らす。

「俺は思いっきり文系です!数字とか見ると、かゆくなる!」

有岡は二の腕を撫で、ブルブルと震えて見せる。

「自慢じゃねぇが、俺もだ。」

大野はファイルを戻すと、古い紙の束を掴む。

「でも、何が書いてあるか、わかってるんでしょ?」

有岡は、丸い目をさらに丸くして大野を見つめる。

「大事なとこはあらかた持ってかれてるみたいですね。」

櫻井がファイルを捲っては戻りながら、溜め息をつく。

「だな?」

大野も古い紙に次々目を通していく。

紙は相当古いらしく、字も墨で書かれている。

「だから!何が書いてあるんですか!」

有岡が叫ぶと、仕方なさそうに大野が言う。

「化学式……みたいだな?」

「何かの実験が行われていたのは間違いなさそうですね?」

櫻井も同意して、大野の手元の古い紙の束を捲る。

「元々の液体の配分を調整してた?」

「何のために?」

大野が櫻井を横目で見る。

「ここの祭り用なら必要ねぇだろ?

 ずっとその配分で祭りは行われて来たんだ。」

「……軍?」

櫻井が眉間に皺を寄せる。

大野は小さく息を吐く。

「じゃなけりゃいいけどな……。」

大野は紙の束をまとめて元に戻す。

「それ以外に考えられねぇな。」

「ぐ、軍~?」

有岡の目が丸くなって、大野を見つめる。

大野が櫻井に目配せすると、二手に分かれて部屋を物色し始める。

「大野さ~ん!どういうことなんです~?」

「わかんねぇから調べてんだろ?お前も調べろ。」

大野が怒鳴るように言うと、有岡は仕方なく、棚に置かれた本に手を伸ばす。

「ねぇ、大野さん?」

手にした本をパラパラ捲る。

本は日本語で書かれていない。

パタッと本を閉じ、棚に戻す。

「ねぇ、大野さん!」

「あ~?」

大野はめんどくさそうに答える。

「何を調べたらいいのかわかりません!」

大野と櫻井は呆れて顔を見合わせる。

「だったら、端に行ってろ。」

大野に怒鳴られて、シュンとした有岡の背を、櫻井が階段の方へ促した。










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