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つなぐ(やま)

つなぐ 二十九帖

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男の体を追うように、櫻井の体も落ちる。

繋がった部分は外れ、お互いの体液とネリの感触が腹の辺りに広がる。

薄っすら汗ばんだ肌から、早い鼓動が伝わって来る。

もちろん、櫻井の鼓動も同じように早い。

「智……。」

男の体に体重を預け、男の髪を撫でる。

「智……?」

櫻井は、動かない男が心配になって、首の角度を変え、男の顔を覗き込む。

「大丈夫だ……。」

男の手が動く。

櫻井と同じように櫻井の髪を撫で、親指で額を撫でる。

「ちゃんと精気は吸えましたか?」

男の指が、生え際に沿って櫻井のこめかみを撫でる。

「ああ……。こんな極上の精気は初めてだ。」

男が微かに笑う。

「ふふふ。私もこんなに気持ちのいい行為は始めてです……。」

男の爪先が、櫻井の頬をなぞる。

くすぐったさに、櫻井が首を竦める。

「お前は大丈夫なのか?」

「……なんのことでしょう?」

「お前は……精気を吸われて……体は大丈夫なのかと聞いてるんだ。」

櫻井は笑って、いつの間にか戻っている、綺麗な鼻筋を撫でる。

「要らぬ心配です。あなたは必要以上に精気を吸ったりしない……。

 そうでしょう?」

「もちろん、そうだが……。」

櫻井は疲れた顔でクスッと笑う。

「必要な分なら致し方ありません……。大事に吸ってくださいね。」

櫻井も男の頬を撫でる。

「だが、具合が悪くなったらすぐに言うのだぞ?

 牛鬼が言っていたのを覚えているか?」

「……何を?」

男は櫻井の首筋に指を這わせ、乱れた髪をその指に纏わせる。

「内から吸えば……内が歳を取る。見た目は変わらないと……。」

櫻井は男の上から、体を下す。

男の方を向いて横向きに寝そべり、男の胸に手を添える。

先ほどまで激しく上下していた筋肉は、もうすでに穏やかな鼓動を刻んでいる。

「精気を吸われた者に利くかどうかはわかりませんが……。」

櫻井の手が、男の頬を包む。

男も櫻井の方に顔を向ける。

「私には雅紀さんがいますから。」

男は片眉を上げ、下目遣いで櫻井を見る。

「……なるほど。だから明日の使いは鬼っ子なんだな?」

櫻井はクスクス笑って男の頬に唇を当てる。

「帝の心と体が少しでもよくなるよう……。

 きっと、雅紀さんなら帝を助けてくれるはずです。」

「……そうだな。」

男は櫻井の顎に指先を添え、唇に唇を当てる。

「あいつなら、鬼っ子の後見に十分だ。」

櫻井は嬉しそうに笑って男の唇をそっと舐める。

「……さすが、1000年を生きる狐殿ですな。」

少しずつ唇をずらし、小さな顎を甘噛みする。

「わしは妖としてなら、いくらでもあいつを守ってやれるが、

 人の世界には、人の世界のやり様がある。」

「そうです……。雅紀さんが人の世界で生きて行く為には……、

 人の後見人も必要です……。

 そして、帝にとってもおそらく……。」

「おそらく……?」

男は、櫻井の唇が首筋に移動すると、櫻井の後頭部を軽く掴む。

「雅紀さんの人柄が癒しとなるでしょう。」

男は笑って櫻井のうなじを撫でる。

「だが、そう簡単に鬼っ子が会える相手ではあるまい?」

「そうですね……後は、星の導くまま……。」

櫻井の唇は男の顔のラインに沿って動いて行く。

「お前は……鬼っ子の為にどうしてそこまでする?」

櫻井は男の顔から唇を離すと、じっと男を見つめる。

「あの子の両親は……、まだ私が修行し立てだった頃、人の手によって殺められました。

 鬼だと言うだけで……。」

男は、ふんと眉山を上げる。

「それが人のやり方だ。恐怖を感じたと言うだけで、何もしていない妖を切り捨てる。」

櫻井は縋るように男を見つめ、その手を頬に添える。

「あの子が一人、小屋で震えているのを見つけ……、

 私が一人で育てようと隠しました。

 角さえ隠せば、人として生きていける。

 成長が遅いので、定住はできませんが、それが、人としての私の償いです……。」

「お前が背負う必要はあるまい?」

櫻井は微かに笑って、男の胸に顔を埋める。

「あの子の両親を討ったのは……私の師匠に当たる人です……。

 だから私は……攻撃用の印を……結ぶことができません……。」

くぐもる声でそう言った櫻井を、男の腕が抱きしめる。

「……そうか。」

男の腕が櫻井の肩を撫で、髪に唇を落とす。

「わしは一度、戻らねばならん。

 だが、何かあれば呼べばいい。」

「呼んだらすぐ来てくれるんですか?」

「ああ、いつでも来てやる。

 だから、静かに待っていろ。」

櫻井はクスッと笑って顔を上げる。

「それは頼もしい……。」

男の唇が櫻井の額に触れる。

「帰って来る時には土産を持って来よう。

 お前好みの土産だ。」

櫻井は小さく首を振る。

「何も……。智の体一つで……。」

男は櫻井の潤んだ瞳を見つめ、唇を合わせる。

「そう言えば……、まだ結界を解いていませんでしたね。」

櫻井は男に抱かれたまま印を結ぶ。

最後に指刀を収めると、男を見上げる。

「これであなたはどこへでも行ける。私がいなくても……。」

寂しそうな声の響きに、男の手が櫻井の肩を擦る。

「心配するな。戻って来る。」

「わかっています。あなたが大きくなって帰ってくることは……。」

櫻井は窓から見える、小さな空に目をやる。

「星が……教えてくれています……。」

男は櫻井の顎を掴み、自分の方に向けさせ、唇を合わせる。

深く、深く唇を合わせ、櫻井を抱きしめる。

櫻井の両手も男の背中を抱きしめた。










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