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つなぐ(やま)

つなぐ 二十二帖

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光に包まれた頭の中将の体が、次第に変化していく。

帝の額に感じる櫻井の指の熱さ、

それが強くなっていくと、光がさらに大きくなる。

「あ、ああぁ~っ!」

光に包まれた何かは、奇声を発し、帝から離れて行く。

何が起こっているかわからない帝は、ただ茫然と成り行きを見守るしかない。

見ると、先ほどまで藤壺の姿であった妖も、元の姿に戻っている。

二宮も、目を見開いて、光を見つめている。

「ああああああ~~~っ!」

断末魔のような声に、帝がビクッと体を震わせる。

すると、指が額からスッと離れ、守るように櫻井が帝の前に立ちはだかる。

大きな光が徐々に弱まり、光に包まれていた何かがその姿を現す。

部屋の中央には2mはあろうかと言う大きな蜘蛛が、

長い足を痙攣したように、小刻みに動かしている。

その頭には牛のような角が生え、大きな口が黒い顔の半分を赤く染めている。

「……牛鬼であったか……。」

櫻井がつぶやくと同時に、帝の体から力が抜ける。

ガクッと畳に突っ伏した帝に、二宮が駆け寄る。

「帝!」

「心配は要りません。少しお疲れになったのでしょう。

 隅に寄っていてくださいな。」

「う、うむ……。」

二宮は言われた通りに帝を抱え、隅に寄る。

「おのれぇ~~!たかだか人の分際で!」

牛鬼が櫻井を睨み、まだ痺れの残る足を櫻井に向ける。

「帝に何をしたのです?」

「何を?たわけたことを!」

牛鬼の足が、勢いよく櫻井に襲い掛かる。

「あっ!」

二宮が小さく声を上げる。

櫻井が印を結ぶより早く、元の姿に戻った男の手が動く。

「はっ!」

男の手から光と共に放たれた圧が、牛鬼の足を跳ね除ける。

「ううっ!」

牛鬼の体が震え、ザザッと櫻井から離れる。

「助かりました。」

櫻井がニコッと笑って男を見る。

「お前が死んではわしの封印が解けぬからな。」

「すみません。この部屋の結界だけで手一杯で。」

櫻井が困ったように笑って、部屋を見回す。

部屋の四隅には、人型の紙が、その腕を大きく広げているように張り付いている。

「ですが、この結界もそんなに長くは持ちません。

 狐殿なら、なんとかなりましょう?」

「ふん。わしになんとかする義理はないわ。」

男がめんどくさそうに視線を逸らす。

「そこをなんとか……。

 全て終われば、封印も結界も解きますゆえ……。」

「当たり前だ!」

「お手数ですが、どうかお願いします……。」

櫻井が、涼し気な笑顔で男を見つめる。

「お前……悪いと思ってないだろう?」

「狐殿は人が悪い……。思っておりますって。」

櫻井がクスクスと笑う。

「……封印が解かれた暁には、精気ももらうぞ?

 疲れるからな。」

「私の精気でよければ……。」

櫻井が柔らかく笑い、男が、ふんと鼻を鳴らすと、牛鬼の足が男に伸びる。

「お、おのれ~!お前も妖であろうが!

 人の味方をするか!?」

牛鬼の足を避け、男が飛び上がる。

「わしは誰の味方でもないわ。」

男は叫びながら牛鬼の背に飛び降りる。

「うっ!」

背を打たれ、一瞬動きを止めた牛鬼に男の手がふわりと落ちる。

「う、ううっ!」

手の動きとは逆に、背中から重しを乗せられたように

身動きの取れない牛鬼から、呻き声が漏れる。

「なぜ、こんなことをしている?

 お前なら、他でいくらでも精気ぐらい吸えるであろう?」

「……あいつの精気は極上だ。お前も吸ってみろ、そうすればわかる。」

「極上?」

「そうだ……。あいつは母を恋しがり、人を恋しがる。

 その想いの溶け込んだ精気は恐ろしく甘い。」

「…………。」

「あいつの欲しがる相手になって、あいつと交われば、その精気の甘さがより引き立つ。」

「だが、あやつは精気を吸われている人間には見えん。」

牛鬼が低い声で笑う。

「できるだけ長く味わいたいからな。

 だが、あいつの体はもうボロボロのはずだ。

 内から精気を吸っているのだ。

 俺はあいつの見た目も気に入っているからな。」

いやらしい声を立て、牛鬼が笑う。

「お前もやってみればいい。格別だぞ?」

人と交わることによって、内から精気を吸い上げる。

そんなことをすれば、臓器が一気に歳を取る。

肌がしぼんでも人は生きていけるが、臓器が萎んでは……。

「あやつが生気のない、白い肌をしているのはそういうわけか?」

「ふっふっふ。より美しかろう?」

牛鬼は、キッと男を睨むと、口から勢いよく糸を吐き出す。

あっという間に、白い糸が、男の体をグルグル巻きにする。

「狐殿!」

櫻井が叫ぶと、白い、ミイラのようになった男が叫ぶ。

「おい、お前も手伝え!」

「すみません。結界は作れるんですが、どうも攻めるのは苦手で……。」

櫻井はクスッと笑って、肩を竦める。

「まだまだ修行中ですから。」

「全部わしにやらせる気か!?」

白い物体となった男が、微かに震える。

「……すみません。そのつもりです。」

「だったら……封印を解け!

 でないと、わしだとて、こいつの動きを止めるくらいしかできんわ。」

「……そんなことはないでしょう。1000年を生きる白狐ともなれば……。」

「山賊相手とはわけが違うわ。」

櫻井は唇を捻って、不満そうに口角を引く。

「仕方ありませんね……。」

櫻井は袖を押さえて印を結ぶ。

「臨……兵……。」

ブツブツと低い声で何か言い、印をどんどん変えて行く。

印を結び終わると、指刀を作り、十字を切って男に向かって投げる。

パリンと、何かが割れる音がする。










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