Love so sweet №84

「……だからね、この曲でユニット組むなら、俺はリーダーとだと思うわけ。」

打ち合わせ予定の部屋から、松本の声が聞こえてくる。

しまった！

先を越されたか！？

俺は急いでドアを開ける。

「おはようございます！」

大げさにドアを開け、大きな声で挨拶して会話を中断させる。

松本の目論見通りになんてさせるか！

「あ～、さっそくで悪いんだけど、今度のアルバム、ユニットなんだよね？」

「今、松潤とその話してたんだよ～。」

相葉君が楽しそうに話し始め、ニノに視線を送る。

ニノもうなずいて俺を見る。

「そのことだけど……。」

俺は鞄を椅子に置き、みんなの顔を見回す。

相葉君、ニノ、松本……。

「智君は？」

「まだ。前の仕事が押してるみたいですね？」

「そうなんだ。俺が最後かと思ったのに……。」

ま、それならそれで好都合。

松本が、ニヤッと笑いながら腕を組む。

「今、話してたんだけど……。」

俺の前までやってきて、強気の視線で俺を見る。

「リーダーがユニット組むなら、俺がいいんじゃないかって話してたんだ。」

「松本が？」

「ライブの構成を考えると、それが一番いいんじゃないかと思うんだ。

　今度のライブ、コンセプトが……。」

「ちょっと待って。」

松本にこのまましゃべらせてたまるか！

ライブを持ち出されたら、俺ら、松本の言いなりじゃん！

「いやいや、俺と智君が組むのが一番いいと思うよ？」

「翔さんと？」

松本が怪訝そうに眉間に皺を寄せる。

「うん。」

「そうかな？ライブのことを考えたら……。」

俺は近くの椅子の背もたれに両肘を掛け、下から松本を見上げる。

「俺と智君の声、重ねるといい感じになると思うんだ。」

「声？」

「そうそう、ハーモニー。

　心も体も信頼しあってる俺らから生まれるハーモニーは、格別。

　ぜひ、ファンの子たちにも聞いてもらいたいと思ってる。」

相葉君とニノがニヤニヤしだし、松本が面白くなさそうに、ふんと鼻を鳴らす。

「それよりも、ここはライブの構成が優先でしょ？

　4つのユニット、構成で考えたら……。」

まてまて。

まだそこまでライブの話、進んでないよね？

これから、どうとでもなるよね？

「ライブより、まずはアルバムでしょ？」

「ライブありきのアルバムだから！」

松本も、そう簡単に引いてくれない。

まぁ、仕方ないか？

ユニットなんて久しぶりだし、

毎日一緒にいる俺と違って、松本は仕事でないとなかなか会えないし。

だからって、ここは譲るわけにはいかない。

松本と二人でなんて歌わせたら……。

ライブでどんな演出されるやら！

「この間発表された研究でね……。」

俺はおもむろに鞄から、ファイルに入った資料を取り出す。

「マサチューセッツのＤｒ.サンチェと京大の松岡教授の共同研究なんだけど……。」

分厚い資料をペラペラと捲る。

「俺と智君の声の音域がこれとこれ、波形がこれとこれ。」

テーブルの上に資料を並べる。

それを覗き込むニノと相葉君。

松本は遠巻きにその資料を見てる。

よしよし。

「この重なる部分。これが至高のハーモニーを奏でるらしいんだ。」

「へぇ～、そうなんだ～。」

相葉君が感心したように資料を見つめる。

「本当ですかねぇ？」

疑り深そうなニノの顔。

「こうやって、結果が出てるんだから、一目瞭然。」

なんなら、他の資料もお見せしますよ？

ユニットの話を聞いて、すぐに集めたんだから！

「信用できないね。」

松本が顔を背けて、フンと鼻を上げる。

「信用できるまで、説明してもいいんだよ？」

松本は面白くなさそうな顔を、さらに不機嫌にして資料を奪う。

「これが本当だとしても！ライブを考えたら……。」

「ライブでも、至高のハーモニーは生きるんじゃない？」

「流れってもんがある！」

「ハーモニーは誰の心をも打つ！」

「ライブ！」

「ハーモニー！！」

俺と松本が睨み合っていると、静にドアが開く。

「ごめんね～、遅れた。」

智君が申し訳なさそうに入って来る。

「リーダー！」

「智君！」

智君が、ん？と首を傾げる。

「「ねぇ、どっちと歌う！！」」

俺と松本が智君に詰め寄る。

もちろん……俺だよねぇ？

智君！

そこは、信じてるよ！





この結果は、アルバムで……。

って、どっちでもなかったらどうしよう？(笑)