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つなぐ(やま)

つなぐ 十三帖

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「まあ、怪我はしないだろうが……。

 いつまでもこうしてるわけにもいかんだろ?」

櫻井から一歩離れ、目の前の大男に視線を移す。

男の目がキラリと光る。

「ば、化け物だ~っ!」

櫻井の首を切ったと思っていた山賊は、腰が抜け、その場に転がる。

「だから、そうだと言っている。」

「私は違いますよ?ちょっと幻覚を見てもらっただけです。」

櫻井が不満そうに口を尖らせる。

男は、ふふんと鼻で笑い、肩の高さまで手を上げ、パッと開く。

「見ているがいい。」

男は周りの山賊達にそう言うと、その手を上に上げる。

だが何も起こらない。

男は首を傾げ、もう一度繰り返し、はたと気づく。

「そうだった。封印されていては妖力も使えん。」

男が櫻井の方へ振り返る。

「ダメです。封印は解けません。」

「力を使えば早く済む。」

「早くなくてかまいません。そのままお願いします。」

「今のわしにはこの小さな結界が精一杯じゃ。」

「肉体同士のぶつかり合いも、たまにはいいのでは?

 力仕事、お好きでしょう?」

男はチラッと大男を見る。

「あの大刀を振るわれたら、わしでも一貫の終わりだぞ?」

「大丈夫でしょう。狐殿は相当強くていらっしゃる。」

櫻井がニコッと笑う。

「確かに強いが……疲れる。」

「疲れるくらいなんですか。」

「疲れれば……精気が必要になる。」

男は眉間に皺を寄せ、眉尻を下げる。

「では、疲れないように戦ってくださいな。」

櫻井はしれっと答え、あなたならできるでしょうと言わんばかりに

ニコッと笑う。

何が起こるのかと、様子を伺っていた大男がそっと刀を振り上げる。

「やれやれ。」

それに気づいた男は、仕方なさそうに大男に向き直る。

「うだうだ喋ってれば、痛い思いをせずに首が飛んでたものを。」

大男は男に向かって刀を振り下ろす。

大きな刀は男のわずか三寸ばかりの空を振り切って行く。

「ふむ……、まだまだのようだが……。」

「まだまだだと?今のがわざとだわからなかったのか!」

「わかっているから、まだまだだと言っている。」

男はわずかに腰を沈め、スッと飛び上がる。

「できるやつは、殺れる時に殺る。」

男の体が大男の上に降りてくる。

その男の体を大男の刀が、一瞬のうちに横から払う

「殺った!」

下っ端の山賊が叫ぶ。

大男もそう思い、ニヤッと笑う。

だが、男の姿が刀の影から現れ、大男の腕の上に乗ると、山賊達も大男も息を飲む。

「自分よりできる奴の隙を突くのは難しいぞ。」

男は大男の頭の上で倒立し、そのままとんぼ返りのように飛ぶ。

「まぁ、わしに隙などないがな?」

男が軽やかに着地すると、大男がガクッと膝を付く。

「御頭(おかしら)!」

遠巻きに見ていた山賊達が一歩前に出る。

それを男が一瞥すると、ビクッと体を引く。

「なに、殺してはいない。動いたから、精気をもらわなくてはいかんしな。」

男は櫻井に向かって目配せする。

櫻井も仕方なさそうに首を振り、胸の前で封印解除の印を結ぶ。

「ノウマクサンマンダ……。」

櫻井の声と呼応するように、男の足の勾玉がシャラッと揺れる。

男は片手を上げ、手を広げる。

大男はよろよろと立ち上がり、男に向かって歩き出す。

「頭(かしら)!」

「御頭!」

「そっちは~!」

山賊達が口々に大男を呼ぶ。

だが、大男は歩く足を止めることができない。

「我が足元に跪(ひさまず)け。」

男の言葉に、大男の大きな体が小さく跪く。

「汝(うぬ)はわしに刃(やいば)を向けた。

 えさになる覚悟あってのことだな?」

「う、うう……。」

大男は何も言えず、ただ男を見上げる。

こめかみに、タラリと汗が伝う。

男の妖力に、なぜ気づかなかったのか。

これほどの妖力なら気付いて当たり前のはずなのに……。

自分の思い通りにならない体を、無理やり動かそうとする。

若干、肩がピクッと上がる。

だが、それ以上、動かすことのできない自分に、唇を噛みしめる。

「ふむ……少しはできる男のようだが、わしにかかれば赤子も同然……。」

男が大男の顎に指を掛ける。

「後悔しても、もう遅いわ。」

男がゆっくりと顔を近づけて行く。

白く肌理(きめ)の細やかな肌はなだらかで、こんな状況下にありながら、

思わず動かぬ腕で、触れてみたくなるほどだ。

赤い唇は三日月のように歪み、笑みを絶やさない。

通った鼻梁が作る影は、男の美しさを際立たせる。

光を放つ目を除けば、こんなに綺麗な男もいない。

「ちゃんと見ていろ。お前もいずれこうなる。」

男は櫻井に向かってそう言うと、大男のいびつな唇に唇を合わせる。

大男の半分もない小さな唇を、さらに小さく尖らせると、

大男のかさついた肌が、さらに乾く。

見る間に髪には白い物が増え、顔や手に皺が浮き出る。

見ていた山賊達は、息を吸ったまま声も出ない。

次第に男の鼻が伸びて行く。

白い肌は毛で覆われ、ピンと立った耳が現れる。

「きつ…ね……。」

「噂の白狐(びゃっこ)か……。」

山賊達の間から小さな声が漏れる。

櫻井は黙ってその姿を見つめる。

体はそのままに、顔だけ狐のように変わった男は、その妖力を増していく。

大男の盛り上がっていた筋肉が、半分ほどの大きさになると、男は大男から唇を離す。

「あまり好みの味ではないな。」

ペロっと上唇を舐め、櫻井の方を向く。

「お前は旨そうなんだが。」

「そうですねぇ。確かに私は美味しそうです。」

印を解いた櫻井が、そう言ってニコッと笑った。










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