「みんなと作ったお話」
Waiting for you

Waiting for you ⑤

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「僕の住む世界が壊れようとしているらしい……。」

笑いながらそう言うサトシに違和感を覚える。

サトシは壊れてもいいと思っているのか?

「壊れる?」

「そうだ。壊れて、表に飲み込まれる。

 数千年前と反対の現象だ。」

「反対?」

「僕達の世界も、以前は表面にあった。」

サトシの表情が固くなる。

「それが、大きな地震と火山の噴火により、地底へと埋没し、

 今の形を作ったと歴史の授業で習った。」

どっかで聞いたことがあるような気がする。

太平洋?大西洋?に浮かぶ島が、一晩にして忽然と姿を消したというような話。

誰に聞いたんだっけ……。

「けれど、それには多くの人の命が奪われる可能性がある。

 僕達はT.E.P.O.が作り出した光しか知らない。

 翔の世界の光に当たって、生きていけるかどうかわからないから。

 そして、表の世界の人々と僕達が上手く共存していけるかどうかも……。」

サトシの言葉に、驚いて言葉が出ない。

「だから、T.E.P.O.は僕を翔に会わせたんだ。」

「どうして……?僕?」

サトシは笑って首を振る。

「それはわからない。T.E.P.O.が僕と翔を選んだ。

 それだけだ。」

サトシの手首の飾りが揺れる。

「だから、僕達は、もっとお互いを知らないといけない。

 お互いを知って、理解し合えるかどうかを見極める。」

「T.E.P.O.が?」

「そうだ。」

サトシがうなずいて、俺に向かって手を差し出す。

釣られて俺も手を出す。

どんなに手を伸ばしても届くわけの無い蜃気楼に向かって。

「お互いの中間地…点……。」

サトシの青い衣装がずれる。

空気が揺れ出したんだ。

「サトシ!」

中間地点ってどこだ?

俺はどこに行けばいい?

「サト……。」

俺の声を掻き消すように、蜃気楼が消えて行く。

大事なとこだったのに!

中間地点?

表と内の?

それはどこだ?

俺はどこに行けばいい?

何をすればいい?

どうすればサトシに会える?

疑問ばかりが沸き起こって、一向に何をすればいいのかわからない。

お腹が空いてたはずなのに、旨いうどん屋を素通りして、

携帯の画面をタップする。

地底に消えた都市の話……確か、相葉に聞いたんじゃなかったか?

あいつも今は仕事中のはず。

手早くメールを打って送信する。

時計を見て、次の営業先に向かう。

少し早いけど、とにかく仕事を終わらせようと思った。

早く終わらせて、相葉に会わないと。

あいつなら何かわかるかもしれない。



「久しぶりだね~。翔ちゃん、全然連絡くれないんだもん。」

相葉が美味しそうにビールを煽る。

「ぷはぁ~!やっぱり仕事終わりのビールは最高!」

ドンとジョッキを置いて、口の周りの泡を舐める。

俺もビールを飲んで、ふぅと息を着く。

「で、どうしたの?突然。」

相葉は、枝豆を口で弾きながら俺を見る。

「いや、大したことじゃないんだけど、お前のこと思い出したから。」

相葉が、何を?って顔で首を傾げる。

「急で悪い。」

「いつでも声掛けてって言ってるじゃん。」

指でピッと弾いた枝豆を口で受け止め、相葉が笑う。

「ひゃひゃひゃひゃひゃ。俺、上手くない?」

楽しそうにもう一度枝豆を弾く。

今度は唇に当たって、テーブルの上に落ちる。

「でな……。」

「ん?」

テーブルの上の枝豆を拾って口に押し込んだ相葉は、お手拭きで手を拭って、箸を持つ。

「大学時代、お前、一晩で海に沈んだ町の話、してなかったか?」

相葉は目を見開いたまま首を傾げる。

「そんな話、したっけ?」

「してたじゃん。一時期、ずっとその話ばっかりしてた時があって……。」

眉間に皺を寄せ、思い出そうとする相葉。

早く思い出せ!

そこにヒントがあるかもしれないんだから!

思い出したのか、相葉が何度も首を縦に振る

「あ~あ~、あったね。一晩で海に沈んだ島。」

「思い出した?」

「思い出した、思い出した!なんてったっけ?

 名前は思い出せないけど、火山の噴火で沈んじゃったやつでしょ?」

「そうそう、それ!」

俺は前のめりになって、相葉の言葉に耳を傾ける。

「結構大きな島なのに、火山の噴火で数時間で沈んじゃって、

 その後、地底で国を作るんだよ。」

「地底で?」

「そうそう。科学が進歩した国だったから、すぐに光と水の開発が進んで。」

「開発?」

「地下だからさ、太陽の光は届かないじゃん?

 火じゃ、大した灯りにならない。暖もさほど取れない。

 朝も夜もない生活は人々の心を蝕んでいくから。」

「それで?」

「科学者が総力を結集して人口知能を作るのよ。

光と水を自ら作り出してコントロールできるやつ。」

「すごいね。」

「で、なんとか国として復活していくっていうんじゃなかったっけ?」

「そうだよ。そんな話だった!」

相葉は冷ややっこを摘まんで口に放り込む。

「懐かしいね~。そんな話、してたしてた!」

口をもぐもぐさせながら、相葉が笑う。

「やっぱり相葉だったか。」

「よく覚えてたね?」

俺はビールを飲んで一息つく。

これからが大事なとこ。

俺とサトシの中間地点……。

「でさ。」

俺はじっと相葉を見つめる。

「ん?」

相葉はジョッキ越しに俺を見る。

「そこに行くにはどうすればいいわけ?」

「行く?」

「そう、その地下国家に。」

相葉が、ひゃひゃひゃと笑い出す。

「そんなことできるわけないじゃん。」

「できないの?」

「できないよ~、だって、これ、ゲームの話だもん。」

「……ゲーム?」

「そうだよ。地下国家を作って行くゲーム。」

ゲーム……。

まさか……。

「あ、でも、主人公は自分だから……。

 どうやって地下に行くんだったかな……。」

主人公は地下に行くのか?

行くところから始まるゲーム?

「ああ、思い出した!

 ……………………。」










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