「みんなと作ったお話」
Waiting for you

Waiting for you ④

 ←Waiting for you ③ →Waiting for you ⑤


「答えはここにある。」

「ここ?」

「そうだ。」

サトシは手で作った円を胸に押し当てる。

シャラシャラと音がしそうな袖の飾りが、サトシの動きを優美に飾る。

「ここにあると……T.E.P.O.が教えてくれた。」

「それは……どういう意味?」

「それがどういう意味かは……自分で考えるんだね。」

「自分で!?」

サトシがクスッと笑う。

「それくらい、お前でも考えられるだろ?」

「なんだよ、その上から目線!」

「僕は別に見下して言ってるわけじゃない。」

「見下してるじゃん、その態度!」

俺が向きになると、サトシの目が冷ややかに光る。

「翔と僕では済む世界が違うんだよ。」

「住む世界……?」

サトシが考えるように体を斜めにする。

頭から垂れた布がサラリと揺れる。

「もう一つ……T.E.P.O.が教えてくれた。」

俺は、じっとサトシを見つめる。

綺麗にそろえられた指の先が、大きな円を描き、おいでというように広がっていく。

「翔のいる世界は表。僕のいる世界は内。」

サトシは開いた手を返して手の甲を見せる。

「……内?」

「そう、T.E.P.O.が言っていた。

 僕と翔は、表と内で初めてコンタクトを取った人類だと。」

「それは……異世界ってこと?」

「異世界?」

サトシが首を傾げる。

それと同時にサトシの体が歪む。

空気が揺れ始めたんだ。

「異世界がどんなものだかわからないけど、僕と翔が直接会う為には、

 大きな力がひつ…よ……。」

サトシの声も歪む。

「大きな力って!?」

サトシの体が消えて行く。

「サトシ!」

追いかけても、サトシがそこにいるわけもなく、

目の前には黒いワゴン車が見えるだけ。

がっかりして道路に視線を合わせると、

さっき見た白い車は、ようやく20mほど進んでいた。



ニノのところに戻って、サトシと会った話をする。

ちょっと興味を持ったのか、携帯から顔を上げるニノ。

「異世界?ゲームの中とか?」

「サトシは内って言ってたけど……。」

「ゲームの内って……言わないよなぁ。」

ニノが唇を歪めで首を傾げる。

「異次元の内?鏡の内?……内……外側と内側?」

「内って言うんだから、そうじゃない?

 サトシは表と内って言ってたけど。」

「なんの?」

「それを俺が聞いてるんだろ!?」

俺が声を荒げると、ニノがクスクス笑う。

「翔ちゃんにわかんないのに、俺にわかるわけないじゃん。」

「だから!一緒に考えて欲しいんじゃん。」

ニノはクスクス笑いながら、コーラを飲む。

「内側の世界ねぇ、それ、サトシは何の内側かわかってるの?」

俺はゆっくり首を振る。

サトシにはわかってるのか?

T.E.P.O.が教えてくれた?

「で、宿題はどうなりました?」

俺は、ふんっと鼻を鳴らして足を組む。

「言ってみたけど、わかんないって感じだったよ。」

「あはははは、言ってみたんですか?」

「言ってみたよ。……それしか思いつかなかったし……。」

ニノが面白そうに笑う。

「本当に……恋してるんじゃないですか?」

「まさか!」

そりゃ、綺麗だし、気になるし、すぐに会いたくなるし……。

けど……。

サトシは男だ。

男が男を好きになるなんて、あるか!

「恋はね、全ての価値観を変えるんですよ。」

ニノが知った風なことを言う。

「今まで正しかったことが正しくなくなり、

 間違ったことが正しくなっちゃったりするんですよ。」

「内が外になっちゃったり?」

「外が内になっちゃったり!」

ニノが楽しそうに笑う。

「あ……、普通、内だったら外、ですよね?」

俺は冷えたコーヒーを口にしてニノを上目遣いで見る。

「そうだね。普通は。」

「サトシは……内と表って言ったんでしょ?」

俺はサトシの言葉を思い出す。

そうだ。

確かにサトシは内と表と言った。

「何かの内側と表面?」

内側と表面……。

俺がいるのが表面?

サトシがいるのが内側?

「翔ちゃん、地球空洞説って知ってる?」

「地球空洞説?」

「地球の中は空洞になっていて、そこにも世界があるって話。」

「地球の内側……?」

ニノがニヤッと笑う。

「俺らがいるのが表面ね?」

想像してみる。

地球の中が空洞で、そこに人が生活する世界がある……。

地殻の内側に立つのか?

家も?人も?

「物理的に無理だろ?中の重力はどうなる?無重力?」

ニノが声を上げて笑う。

「だから、そういう話があるって話。」

ニノはコーラを飲みながら笑い続ける。

「でも、内と表なら、そんな話もあるかなって。」

笑っているのに、ニノの目はちょっとだけ真剣で、

俺の中に引っ掛かりを作る。

地球の……内。



午前中の営業を終え、昼飯を食べようと線路沿いを歩く。

この近くに旨いうどん屋がある。

前に取引先の営業と行ったんだけど、まじ激うま。

昼時だったから、結構人通りも多くて、

俺は汗を拭きながら、線路の方に目をやる。

銀色に緑ラインの電車が走って行く。

早くクーラーの利いてる店に入りたい。

そう思った時、人通りの先の定食屋の辺りが揺らめいた。

俺は走って近くに行く。

ここからじゃ、人が邪魔してサトシに会えない。

「サトシ!」

光の中にサトシが現れ、俺に向かって笑いかける。

「サトシ!」

サトシがゆっくり口を開く。

「………………。」










関連記事
スポンサーサイト



 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png a Day in Our Life
総もくじ 3kaku_s_L.png Kissからはじめよう
総もくじ 3kaku_s_L.png Step and Go
総もくじ 3kaku_s_L.png 果てない空
総もくじ 3kaku_s_L.png タイムカプセル
総もくじ 3kaku_s_L.png Hello Goodbye
総もくじ 3kaku_s_L.png season
総もくじ 3kaku_s_L.png 夏の名前
総もくじ 3kaku_s_L.png Welcome to our party
総もくじ 3kaku_s_L.png Deepな冒険
総もくじ 3kaku_s_L.png 三日月
総もくじ 3kaku_s_L.png WONDER-LOVE
総もくじ 3kaku_s_L.png みんなと作ったお話
総もくじ 3kaku_s_L.png 大人の童話
総もくじ  3kaku_s_L.png a Day in Our Life
総もくじ  3kaku_s_L.png Kissからはじめよう
総もくじ  3kaku_s_L.png Step and Go
総もくじ  3kaku_s_L.png 果てない空
総もくじ  3kaku_s_L.png タイムカプセル
総もくじ  3kaku_s_L.png Hello Goodbye
総もくじ  3kaku_s_L.png season
もくじ  3kaku_s_L.png 五里霧中(5人)
総もくじ  3kaku_s_L.png 夏の名前
もくじ  3kaku_s_L.png Troublemaker(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png Crazy Moon(5人)
総もくじ  3kaku_s_L.png Welcome to our party
総もくじ  3kaku_s_L.png Deepな冒険
もくじ  3kaku_s_L.png 花火(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png miyabi-night(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png ZERO-G
もくじ  3kaku_s_L.png 復活LOVE(やま)
総もくじ  3kaku_s_L.png 三日月
総もくじ  3kaku_s_L.png WONDER-LOVE
総もくじ  3kaku_s_L.png みんなと作ったお話
もくじ  3kaku_s_L.png Believe
もくじ  3kaku_s_L.png コスモス
もくじ  3kaku_s_L.png つなぐ
総もくじ  3kaku_s_L.png 大人の童話
もくじ  3kaku_s_L.png 智君BD
もくじ  3kaku_s_L.png ブログ
もくじ  3kaku_s_L.png ティータイム
【Waiting for you ③】へ  【Waiting for you ⑤】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit
  • 【Waiting for you ③】へ
  • 【Waiting for you ⑤】へ