「みんなと作ったお話」
Waiting for you

Waiting for you ③

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「なぜ、僕の前に現れる?そこはどこだ?」

それは俺のセリフ!

なぜ、サトシは俺の前に現れる?

それこそ、ずっと俺の小さな頃から。

現れては消える。

何度も何度も。

「サトシこそ!

 ……あなたは何者?どこにいる?」

蜃気楼の中のサトシが、ゆっくり腕を上げる。

手首についた、ジャラジャラした物が揺れて、踊るように手の平を俺に見せる。

「僕が何者なのか……、その質問に答えるのは難しいね。

 翔は自分が何者なのか答えられる?」

「お、俺は……。」

……何者……なんだろう?

日本に住んでる26歳のサラリーマン。

そこそこの大学を出て、そこそこの会社で働いてる。

未婚。子なし。

彼女なし。

これが答え?

それが俺?

サトシがクックと笑う。

「なぜ、そんな顔をする?」

「え?」

「困ったの?僕と同じだ。僕だってそんな質問されても困る。」

サトシはサッと手を下す。

「僕の世界に翔の世界のような光はない。

 その代わり、T.E.P.O.がある。

 T.E.P.O.は必要なだけ光と水をもたらす。

 僕はここで暮らす普通の人間。

 それ以上でもそれ以下でもない。

 だが、T.E.P.O.が僕に翔を合わせる。」

サトシの世界?

T.E.P.O.?

「なんで俺?」

俺は一歩蜃気楼に近づく。

近づけば蜃気楼は遠のき、すぐに消えちゃうのは実証済みだ。

なのに、気が急いて仕方ない。

サトシのことが知りたい。

どこにいるのか。

何をしているのか。

どうして俺にだけ見えるのか。

どうやったら……直接会うことができるのか。

「それは僕が聞きたい。

 なぜ、現れるのが翔なのか……。

 宿題だ!次に会う時までに考えておけ。」

サトシの口角が弓なりに上がる。

空気が揺らめき出す。

「ま、待って!じゃ、サトシも!

 どうやったら直接会えるのか!教えて!」

サトシは、ふむ?と首を傾げ、大きくうなずく。

「わかった。僕も調べておこう。次に会う……。」

サトシの言葉の途中で、蜃気楼は消えていった。

サトシの澄んだ声が、余韻のように残ってる。

サトシはきっと実在する。

この世界のどこかに。

サトシと会うのがなぜ俺なのか。

ただ見えるだけだったサトシに、どうしてこれほど惹きつけられるのか。

美しい姿だけではない。

澄んだ声でもない。

サトシの存在に……何かに……引き寄せられる……。



「そりゃ、恋じゃないの?」

「こ、恋?」

ニノがチラッと俺を見て、すぐに携帯ゲームに視線を戻す。

俺はゴミ置き場から部屋に帰って、速攻でニノにメールした。

すると、ニノには珍しく、すぐに返事が返ってきて、

駅前のファミレスで飯食ってるわけなんだけど……。

「まさか……。」

「なんでまさかなの?」

「だ、だって、あの人、自分の事、僕って言ってたし、

 サトシって……男の名前で……。」

「恋は盲目。」

ニノがまたチラッと俺を見る。

「っていうじゃない?

 好きになったら相手が男だったなんて、ありがちありがち。」

ニノは面白そうに笑いながら、携帯の画面を縦横無尽に撫でまくる。

「ありがちか?」

俺は真面目に聞いてくれないニノに少々苛ついてくる。

こんな話、できるような相手、ニノしかいないのに。

「いいじゃない。幻だと思ってた相手の声が聞けて、

 実在するかもしれないんだから。」

「……蜃気楼の中だけどな?」

「宿題出すような、先生みたいな恋の相手!」

ニノがまたクスクス笑い出す。

色白のニノはどこかサトシに似てる。

光がないって言ってたから、ニノみたいに部屋にばっかり籠ってるのか。

「で、いつ会うんですか?」

ニノが眉間に皺を寄せ、指の動きがゆっくりになる。

「わかるか。突然なんだから。」

「突然?」

「そうだよ。蜃気楼の中にしか現れないんだから。」

「蜃気楼の中……じゃ、会うのは炎天下の太陽の下?」

「ま、そうだね、それが多いかな……。

 でも、何度か曇りの日でもあったような……。」

「ふぅ……ん。」

ニノは興味があるのかないのか、携帯の手は緩めずに話を続ける。

「太陽が関係してるのかと思ったけど、そうじゃないのか……。」

俺はコーヒーを啜ってニノの言葉を待つ。

「やっぱり……恋じゃないですか?

 恋のパワーが呼び寄せてるんですよ。」

ニノ……めんどくさくなったな?

俺はコーヒーをテーブルに戻して窓の外を見る。

陽ざしの中、道路は渋滞してて、車が一向に進まない。

その、白い車の辺りで空気が揺らめく。

俺はバッと立ち上がって、入口に走る。

ニノがチラッと顔を上げたのがわかったけど、

とりあえず、サトシに会うのが先決!

ドアを開け、蜃気楼が見える位置に立ち止まった。

光の中で、サトシが俺を見つめる。

俺もサトシを見つめる。

目が合って、ドキッとして……。

そんな俺にサトシが笑いかける。

「宿題は……できたか?」

俺は唾を飲んで、口を開く。

「恋……じゃないかと思う。」

「恋?」

サトシが首を傾げる。

俺は自分の言ったことが恥ずかしくて、すぐに言葉を続ける。

「サトシの方こそ、どうなんだよ?

 どうやったら直接会えるのか、わかったのか?」

サトシはクスッと笑う。

「ああ、わかったよ。」

サトシは踊るように両手を大きく開いて、胸の前で円を作る。

「わかったのか?どうやって……?」

サトシが口を開く。

「………………。」










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