「テ・アゲロ」
テ・アゲロ the twins (5人)

テ・アゲロ  the twins ⑧ -23-

 ←テ・アゲロ  the twins ⑧ -22- →ふたりのカタチ (182)

「あなたも……やけに詳しいよね?」

「そぉか?俺のも一般常識の範疇だ。」

大野がニヤッと笑う。

「と言いたいとこだが……俺は昔、花屋でバイトしてたことがあんだよ。」

大野はゆっくり元来た道を戻り始める。

「だから、少し詳しいだけ。お前とはちげぇよ。」

櫻井を見て、意味深に笑う大野に、櫻井も含みを持たせた笑顔で返す。

「花屋でねぇ?」

櫻井がくすくすと笑う。

「ほんと、喰えねぇやつだよな?」

「ははは。いつも喰ってる方だからね?」

「お前に喰われる世の御婦人方は大変だ!」

「なら、世の御婦人方の為にも……会う回数、増やしますか?」

櫻井がニッと笑う。

「ほんと、お前は喰えない!」

大野に睨まれ、はははと声に出して笑う櫻井が、一瞬、真剣な顔になる。

「で、次はどこに行くの?」

「そうだな。せっかくだから、情報収集するか。」

「情報収集?」

「これは本来、ニノの役目なんだが、止むを得ん。ここじゃ携帯、使えないし。」

言われて、思い出したように櫻井も自分の携帯を取り出す。

携帯には圏外の文字。

「今時、あるんだねぇ。こんなとこが。」

「ま、仕方ねぇわな?」

大野は軽い調子でそう言うと、下り坂をゆっくり下りて行く。

青い空をバサバサっと大きな鳥が飛んでいく。

「あれ、とんびかな?」

「どうでしょう。」

櫻井もそらを見上げる。

照りつける太陽は眩しく、二人は目を細めて、飛んでいく鳥を見つめた。



「これはこれは。イケメンだねぇ。お梅さん。」

「イケメンですねぇ、お竹さん。」

「お二人の方こそ、綺麗な方でびっくりしました。」

櫻井が両手を広げて称賛する。

「お、おいっ。言い過ぎだろ?」

大野は口を手で隠し、小声で櫻井に言う。

「今でもこんなに美しいんです。若いころの美しさは想像を絶します。」

櫻井は大野の言葉を無視し、称賛し続ける。

「ほほほほ。」

「ほほほほ。」

大野と櫻井の前に並んで座るお竹とお梅は、仲良く一緒に茶を啜る。

こじんまりと座布団に座る二人は、年取った今でもそっくりだ。

体形も顔も瓜二つで、唯一違うのは、左右の口元にあるホクロのみ。

「で?イケメンさんが揃って何ですかねぇ?」

「なんですかねぇ。」

丸まった背中と大きすぎる座布団が、より二人を小さく見せる。

「この村に伝わる祭りについて、お伺いしたいのですが。」

櫻井は、にっこり笑って、単刀直入に聞く。

お竹とお梅は顔を見合わせ、ニッと笑う。

「祭りなら、明日だったよねぇ、お竹さん。」

「ええ、ええ、明日ですとも、お梅さん。」

二人は同じタイミングで湯呑を置く。

「昔は双子の一人を生贄に捧げていたとか。」

櫻井が二人を交互に見ると、お竹とお梅は、ほぅと息を吐く。

「生贄ではありません。神様の花嫁さんになるのです。」

「花嫁さんじゃ。」

「これは失礼しました。」

櫻井は小さく咳をして、言い直す。

「神様の花嫁になる儀式に……お二人は参加されたことがあるんでしょうか?」

「あると言えばあるし。」

「ないと言えばない。」

「どっちなんだよ!」

大野が叫ぶと、お竹とお梅がクスッと笑う。

「隠れて見ていたことならある。」

「ある。」

二人は同時に大野を見る。

「あるのかっ?」

大野が身を乗り出して、二人を見つめる。

二人は、また顔を見合わせ、ほっほっほと笑う。

「あれは、まだ子供の時分じゃったかのう?」

「そうですねぇ。見てはいけないものを見てしまいました。」

「あれは、見てはいけなかった。」

二人がニヤッと笑う。

大野は櫻井と顔を見合わせ、質問を続ける。

「花嫁は……どうやって花嫁になる?」

お竹が少し首を傾げる。

「花嫁は……。」

お梅も同じように首を傾げる。

「一糸まとわぬ姿で……。」

「踊っておった。」

「あまりにも綺麗で。」

「妖艶で。」

「神様の気持ちがわかると」

「思ったもんじゃった。」

「一糸まとわぬ?」

櫻井が聞き返すと、お竹とお梅が静かにうなずく。

「それはそれは淫らな……あ、いや、妖艶な景色だったのでしょうね。」

お竹とお梅はうなずいて、また茶を手に取る。

「周りの大人たちは?」

大野が聞くと、茶をすすりながら答える。

「大人たちは……。」

「みんな笑っておった。」

「笑って、楽しそうに……。」

櫻井と大野は顔を見合わせる。

「祭りの……用意は誰が?」

櫻井が聞くと、二人が同時に答える。

「神主様が。3日間籠って用意される。」

ズズッと茶を啜る音が響いて、二人は顔を伏せる。

「それ以上はわからぬ。」

「わからぬ。」

お竹が茶を置くと、お梅も同じように茶を置く。

「疲れましたねぇ、お梅さん。」

「そうですねぇ、お竹さん。」

「それは失礼いたしました。ご婦人方を疲れさせるつもりはなかったのですが……。」

櫻井が言い訳するようにそう言うと、お竹が笑う。

「少し横になりたいですねぇ、お梅さん。」

「眠くなりましたねぇ、お竹さん。」

櫻井は、ハッとして、少し後ろに下がる。

「もう、十分、お話を聞かせて頂きました。お休みください。」

イケメンが、ニコッと笑う。

「疲れてしまって……歩けませんねぇ、お梅さん。」

「歩けませんねぇ、お竹さん。」

櫻井と大野は顔を見合わせると、立ち上がって、お竹とお梅を抱きあげる。

「どちらまで?」

櫻井が微笑みながら聞くと、お竹はポッと頬を染め、自分の寝室を指さす。

お梅も、大野の腕の中で、指を上げる。

「お連れしましょう。」

二人は見た目通り軽いご婦人に、にこやかに笑いかけた。










関連記事
スポンサーサイト



 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png a Day in Our Life
総もくじ 3kaku_s_L.png Kissからはじめよう
総もくじ 3kaku_s_L.png Step and Go
総もくじ 3kaku_s_L.png 果てない空
総もくじ 3kaku_s_L.png タイムカプセル
総もくじ 3kaku_s_L.png Hello Goodbye
総もくじ 3kaku_s_L.png season
総もくじ 3kaku_s_L.png 夏の名前
総もくじ 3kaku_s_L.png Welcome to our party
総もくじ 3kaku_s_L.png Deepな冒険
総もくじ 3kaku_s_L.png 三日月
総もくじ 3kaku_s_L.png WONDER-LOVE
総もくじ 3kaku_s_L.png みんなと作ったお話
総もくじ 3kaku_s_L.png 大人の童話
総もくじ  3kaku_s_L.png a Day in Our Life
総もくじ  3kaku_s_L.png Kissからはじめよう
総もくじ  3kaku_s_L.png Step and Go
総もくじ  3kaku_s_L.png 果てない空
総もくじ  3kaku_s_L.png タイムカプセル
総もくじ  3kaku_s_L.png Hello Goodbye
総もくじ  3kaku_s_L.png season
もくじ  3kaku_s_L.png 五里霧中(5人)
総もくじ  3kaku_s_L.png 夏の名前
もくじ  3kaku_s_L.png Troublemaker(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png Crazy Moon(5人)
総もくじ  3kaku_s_L.png Welcome to our party
総もくじ  3kaku_s_L.png Deepな冒険
もくじ  3kaku_s_L.png 花火(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png miyabi-night(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png ZERO-G
もくじ  3kaku_s_L.png 復活LOVE(やま)
総もくじ  3kaku_s_L.png 三日月
総もくじ  3kaku_s_L.png WONDER-LOVE
総もくじ  3kaku_s_L.png みんなと作ったお話
もくじ  3kaku_s_L.png Believe
もくじ  3kaku_s_L.png コスモス
もくじ  3kaku_s_L.png つなぐ
総もくじ  3kaku_s_L.png 大人の童話
もくじ  3kaku_s_L.png 智君BD
もくじ  3kaku_s_L.png ブログ
もくじ  3kaku_s_L.png ティータイム
【テ・アゲロ  the twins ⑧ -22-】へ  【ふたりのカタチ (182)】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit
  • 【テ・アゲロ  the twins ⑧ -22-】へ
  • 【ふたりのカタチ (182)】へ