「テ・アゲロ」
テ・アゲロ the twins (5人)

テ・アゲロ  the twins ⑧ -22-

 ←コイゴコロ 下 →テ・アゲロ  the twins ⑧ -23-


目の前に広がる一面の赤。

風にそよぐ花弁は力強くもあり儚くもある。

「これはすごいね。」

櫻井は花畑を見回し、波打つ赤に視線を流す。

「すげぇだろ?」

壮絶な赤の波。

葉も茎も隠し、赤い花びらだけが宙に浮いているように揺れる。

櫻井はしゃがみ込んで女花の葉を撫でる。

葉柄のない質感はすべすべしていて、波打つ葉先の浅い切れ込みが薬草を思わせる。

「……OpiumPoppy。」

櫻井がネイティブ並みの発音でつぶやく。

「お前もそう思う?」

櫻井の隣に大野もしゃがみ込み、一本の茎を自分に向ける。

「見たことないけど……亜種か?」

「たぶん……。色はともかく、こんなに派手なのは見たことねぇよな?」

大野が見ている花びらが、風になびいて、一枚一枚が形を表す。

「1、2、……全部で8枚。」

櫻井がゆっくり数える。

「豪華だねぇ。」

「でも、まさかね?ソムニフェルム種は日本では栽培が禁止されてる。」

大野は花を戻して立ち上がる。

「だから、たぶん、違うんだろ?匂いもねぇしな。」

大野は目を細めて花畑を見る。

芥子の花なら悪臭がする。

この花畑に、そんな匂いはしない。

「これは、芥子じゃねぇんだよ。」

櫻井は、花の中に腕を突っ込み、花びらを落とした果実を探す。

少し奥に小さな物が一つ見つかると、それを手前に引き、大野に見せる。

球形のその果実に爪先で傷をつけ、しばらくすると、

トロリとした黄色い液体がブツブツと沸きだしてくる。

「観賞用に改良したのかな?」

「ここに咲く花は、原種らしい。野生のまま。」

大野は両手を頭の後ろで合わせ、そよぐ風に身を任す。

「手入れをしてるわけではないと……。」

櫻井は、風になびく大野の髪を、眩しそうに見上げる。

「らしいね。だからどんどん減って、今はこれだけだって話だ。」

「誰に聞いた?」

「あいつ、有岡。」

「村の者なら誰でも知ってるの?」

「どうだろ?あいつ、ああ見えて、神主の息子だからな。」

「へぇ~、見えないね?」

「だろ?」

大野は櫻井に背を向けて道沿いを歩き始める。

「どこ行くの?」

「これだけじゃねぇんだよ。」

櫻井は、手にした実を離し、大野を追う。

「これだけじゃないって……?」

「奥に……青いのもあんだよ。」

「青……確か、ソムニフェルム種に青はないはず……。」

「そうだ。青はない。でも、ここにはある。

 やっぱ、鑑賞用か?」

「ボスニア種には紫があるって話だけど……。」

櫻井は歩いていた足を止める。

目の前に広がる青い洪水。

一本一本が、大きく威厳のある男花。

そそり立つメシベは男根を思わせる。

「これ……?」

「立派だろ?」

大野はメシベの一つをピンと指先ではじく。

弾かれたメシベはブルッと震えて直立不動の体勢に戻る。

「まぁ、男は大きさだけじゃないからね。

 形と……テクニック。」

ニッと笑う櫻井に、大野が、はっはと声を上げて笑う。

指についたヌメヌメとした液を、指先で擦って伸ばすと、自分の服に擦りつける。

「自信ねぇの?」

「自信はあるけどね。」

櫻井の手が大野の腰に回る。

「あなたをイカせる自信なら。」

大野の首筋をペロッと舐める。

「今度は、俺がイカせてやろっか?俺のがでけぇし!」

笑い続ける大野の中心に、櫻井の手が伸びる。

「そんなこと言ってると、やっちゃうよ?」

「やめろや。有岡が来んぞ?」

「来たら、見せつけるだけだから。」

大野は手の甲で櫻井の顔と手を弾いて、青い花の前にしゃがみ込む。

櫻井も並んで大野の手先を覗き込む。

櫻井が女花にしたように、小さな果実を探して爪先で傷を入れると、

ジワッと溢れる白い液体。

「やっぱ、芥子だよなぁ?」

「そうみたいだね。でも、この広さで栽培は……。」

いったいいくらになるのか。本物ならば。

口に出さずに飲み込んで、櫻井は実から溢れる液体を見つめる。

「今、ニノに調べてもらってる。お前、その結果聞いてきたんじゃねぇの?」

「いや、俺が聞いたのは、ここにhoneyがいるってことだけ。」

「それにしちゃ、詳しいな?」

大野が片眉を上げる。

「そうでもないよ。一般常識の範囲内……。」

「……そうかぁ?」

「ああ。」

櫻井は立ち上がり、花畑を見回す。

「じゃ、どうしてここに来た?」

櫻井は、しゃがんだままの大野を見下し、ニコッと笑う。

「honeyに会いに。」

「ばかか?仕事は?」

「久しぶりに有給取ったから、……田舎の村でゆっくりってのもオツじゃない?」

「はっ!」

大野は何度も首を振って立ち上がる。

「やだねぇ。大手にお勤めのセレブは!」

櫻井は立ち上がった大野の背中に手を添え、フフッと笑う。

「すべてはhoneyの為だから。」

大野を引き込み、真正面で見据える。

「やだやだ。セレブは口も達者で!」

櫻井は、大野の腰を引き寄せると、強引に唇を合わせる。

慣れた舌先は、あっという間に大野の意識を飲み込んでいく。

「ん、んんっ……。」

絡めた舌先が、お互いの唾液を交わらせる。

一頻りキスを堪能すると、櫻井の唇がゆっくりと離れる。

「うるさい唇を閉じさせるには、これが一番だからね。」

グラビア並みの笑顔で大野を見つめると、大野は口を尖らせた。










関連記事
スポンサーサイト



 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png a Day in Our Life
総もくじ 3kaku_s_L.png Kissからはじめよう
総もくじ 3kaku_s_L.png Step and Go
総もくじ 3kaku_s_L.png 果てない空
総もくじ 3kaku_s_L.png タイムカプセル
総もくじ 3kaku_s_L.png Hello Goodbye
総もくじ 3kaku_s_L.png season
総もくじ 3kaku_s_L.png 夏の名前
総もくじ 3kaku_s_L.png Welcome to our party
総もくじ 3kaku_s_L.png Deepな冒険
総もくじ 3kaku_s_L.png 三日月
総もくじ 3kaku_s_L.png WONDER-LOVE
総もくじ 3kaku_s_L.png みんなと作ったお話
総もくじ 3kaku_s_L.png 大人の童話
総もくじ  3kaku_s_L.png a Day in Our Life
総もくじ  3kaku_s_L.png Kissからはじめよう
総もくじ  3kaku_s_L.png Step and Go
総もくじ  3kaku_s_L.png 果てない空
総もくじ  3kaku_s_L.png タイムカプセル
総もくじ  3kaku_s_L.png Hello Goodbye
総もくじ  3kaku_s_L.png season
もくじ  3kaku_s_L.png 五里霧中(5人)
総もくじ  3kaku_s_L.png 夏の名前
もくじ  3kaku_s_L.png Troublemaker(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png Crazy Moon(5人)
総もくじ  3kaku_s_L.png Welcome to our party
総もくじ  3kaku_s_L.png Deepな冒険
もくじ  3kaku_s_L.png 花火(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png miyabi-night(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png ZERO-G
もくじ  3kaku_s_L.png 復活LOVE(やま)
総もくじ  3kaku_s_L.png 三日月
総もくじ  3kaku_s_L.png WONDER-LOVE
総もくじ  3kaku_s_L.png みんなと作ったお話
もくじ  3kaku_s_L.png Believe
もくじ  3kaku_s_L.png コスモス
もくじ  3kaku_s_L.png つなぐ
総もくじ  3kaku_s_L.png 大人の童話
もくじ  3kaku_s_L.png 智君BD
もくじ  3kaku_s_L.png ブログ
もくじ  3kaku_s_L.png ティータイム
【コイゴコロ 下】へ  【テ・アゲロ  the twins ⑧ -23-】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit
  • 【コイゴコロ 下】へ
  • 【テ・アゲロ  the twins ⑧ -23-】へ