「ふたりのカタチ」
ふたりのカタチ(やま)【161~180】

ふたりのカタチ (176)

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「サトシ、俺、来週の月曜、有給取るわ。」

ショウ君の顔が、仕事モード。

キリッとしててカッコいいんだけど……このタイミングで?

「……ショウ君とこにも来た?メール。」

「SHOさんから直々に。マネージャーからじゃなく。

 サトシのマネージャーの櫻井さんに。」

ショウ君がニヤッと笑う。

うっ……。

対戦モードだ。

「ん~、……仕事内容部分は省略してもいいね?

 田村さんからも来たんでしょ?メール。」

「うん。」

ショウ君は携帯を朗々と読み上げ始める。

「櫻井様、大野さんにお伝えください。

 こちらこそ、今日はありがとうございました。

 仕事に対する真摯な姿勢、大胆な発想力、おおらかな感受性、

 全てに感銘を受けました。

 前々から大野さんの絵のファンでありましたので、

 ご本人にお会いし、お話をさせて頂く機会を得ましたこと、心より感謝しております。

 今日も少しお話させて頂きましたが、美術館での企画、

 大野さんと一緒に進めてみたいと思い、ご連絡させて頂きました。

 僕は芸術においては全く知識がありません。

 そこを大野さんに助けて頂きながら、

 知識のない者でも、絵って面白いんだ

 と思ってもらえるような企画にしたいと考えております。

 大野さんの大胆な発想力を、僕に貸してはくれませんか?

 大野さんのおおらかさで、この仕事を受けてくれることを期待しております。

 お忙しいとは思いますが、ご検討、よろしくお願いいたします。

 今日の出会いが、次に繋がりますことを、願っております。」

「ほぉ~。」

おいらが大きく溜め息をつくと、ショウ君が面白くなさそうにおいらを見る。

「素敵だねぇ。アイドルってもっとなぁなぁな感じなのかと思ってたけど、

 ちゃんとしてるんだねぇ。」

「これくらい、仕事なら当たり前だろ?」

「そうかもしれないけど……。

 見た目通り、真面目な人なんだねぇ。」

おいらが感心していると、ショウ君がフンと鼻を鳴らす。

「真面目?俺を牽制してるのがよくわかるこの文章で?

 要は、すっごくサトシが気に入ったから、次も会いたいぜって言ってるだけだろ?」

「え?違うでしょ?企画にぴったりな人見つけたからってことじゃないの?」

ショウ君は大きな溜め息をつく。

「サトシ……。」

ショウ君の手がおいらの両肩を掴む。

「なんでもいい方向で受け取るのは、サトシのいい所でもあるんだけどね……。

 この文章からは、喰えるもんなら喰っちゃいたい、SHOの想いが溢れているよ。」

「え?そんなこと、どこに書いてあった?」

「いいかい?まずね、真摯、大胆、おおらかさと並べてるだろ?」

「うん……。」

おいらはショウ君の携帯を覗き込む。

「これを男心で訳すと……。

 『真面目なのはわかっているけど、たまには大胆になろうぜ。

 俺のことをそのおおらかさで受け止めてよ』となる。」

「うっそ。」

おいらがびっくりしてショウ君を見ると、ショウ君はいたって大真面目に話し続ける。

「そうなんだよ。続いて『前々からファンだった』はね、

 『前々から狙ってた』だからね?わかる?」

「そ、そうかなぁ……。」

「そうなの。『ご本人にお会いし~』からは、

 『会ってみたら、やっぱり好みのタイプ。これはゲットしないとね!』」

「ショウ君……。」

どう考えても違訳に見えるけど……。

「『今日も少し~』からは、『昼に撒いた種は育ってるだろ?

 キミの心の中で、俺に会えるかもという期待の種が育っているはず。

 俺は、巻いた種は刈り取るぜ。』」

ショウ君……。

「『僕は~』は、『キミには俺に会う資格がある。

 さぁ、遠慮せず、二人きりで会おうじゃないか。

 多少忙しくても、俺の為ならなんとかなるだろ?』」

「ショウ君、それは考えすぎ……。第一、二人っきりなんてどこにもないじゃん。」

「書いてなくても行間から読める。」

よ、読める?

読めるの?普通?

おいらはもう一度メールを最初から読んでみたけど……。

どう読んでも、ショウ君の言ったようには読めなくて……。

「だから、サトシには俺みたいなマネージャーが必要なんだよ。

 今まで無事だったのが不思議なくらいだ。」

おいらには……ショウ君のが考えすぎなような気がするけど……。

SHOさんはそんな感じじゃなかったよ?

SHOさん、聞きたいことがあるって言ってたし。

そうだ、聞きたいことがあるって言ってた!

……何が聞きたかったんだろ?

「どうした?」

ショウ君がおいらの顔を覗き込む。

「現実を知って、ちょっとは怖くなってくれた?

 世の中、オオカミだからけだからね?」

ショウ君……。

おいらは苦笑いでショウ君に言う。

「それは、よくわからないけど……、

 SHOさん、おいらに聞きたいことがあるって言ってた。」

「聞きたい……?」

「うん。」

「サトシの……夜の声か?」

「え、それは絶対違うと思うけど……。」

ショウ君はおいらを抱きしめると、きっぱり言い切る。

「この仕事はやっぱり断ろう!」

「え?色んな人に絵の楽しさを伝えるいいチャンスじゃない?」

「サトシを狙うオオカミの群れの中で、サトシに仕事なんかさせられない!」

……ショウ君……、オオカミじゃないし、群れでもないし……。

おいらが呆れ気味にショウ君を見ていると、ショウ君がおいらのバスタオルを剥ぎ取った。

「サトシが他なんか目に入らないくらい……満足させてあげるから。」

ショウ君の目が光って、おいらはソファーに押し倒された。

……どう考えても、一番のオオカミはショウ君だよね?

でも、なんか……今日の膨張率はすごそうかも……。










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