「テ・アゲロ」
テ・アゲロ the twins (5人)

テ・アゲロ  the twins ⑧ -19-

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「ねぇ、大野さん、どうして父さんは誠叔父さんの人形なんて持ってたんでしょう?」

「さぁな。それはお前の父ちゃんに聞くしかあんめぇ?」

「聞けるものなら聞いてますよ!!」

有岡は宝物庫の出入り口を跨いで、眩しそうに目を細める。

和彦は掃除用具を取りに、先に母屋に戻っていった。

大野も続いて外に出る。

青い空はそれだけで空気を清浄化してくれるようで、

大野は空に向かって大きく両手を広げ、息を吸いこむ。

埃臭い空気が、一気に綺麗になっていく感触は気持ちいい。

大野のそんな姿が可愛らしく見え、微笑む有岡を、

気づいた大野が、不遜な顔で睨むと、有岡の手が大野の腕に絡まる。

「大野さん、可愛いっ!」

「ばかっ、くっつくな!あちぃだろ!」

「熱いのは、俺の大野さんへの気持ちっ!」

「や、やめれ!ばかっ!」

大野が有岡の腕を外そうとあくせくしていると、突然、エンジン音が響き渡る。

大きな黒い車が、勢いよく神社境内に入って来る。

この神社の駐車場は宝物庫の脇にある。

二人が動きを止め、びっくりして見ていると、スピンするように二人の前で車が止まる。

ボンネットには、三角にMが二つのエンブレム。

「こんなところで俺以外の男とイチャイチャするなんて。」

車のドアが開いて、スーツ姿の男が車の隣で立ち上がる。

「honeyはどれだけ俺を弄べば気が済むの?」

ニコッと笑う櫻井の顔を見て、大野が叫ぶ。

「な、何しに来た?」

「何しに来たって失礼な。」

櫻井はゆっくり車のドアを閉める。

「試し乗り。」

チラッと車を見ると、青い空をバックに、これ以上ないくらい爽やかに笑う。

「この車をか?」

「そうだよ?」

「おめぇ、普通こういう車は運転手が運転するもんだろうが!」

「へぇ~、そうなの?知らなかったなぁ。」

櫻井が素知らぬ顔で笑う。

「そうだよ!しかも、こんな田舎くんだりまで。」

「い、田舎だけど、他人に言われるとなんか傷つく……。」

有岡が不満そうに口を尖らす。

櫻井は笑いながら大野を見つめる。

大野の全身を、舐めるように確認する視線に、大野の方が視線を外す。

「俺が来ちゃいけなかった?」

「お前が来る必要はねぇ。」

「それは……honeyがおイタしてるからなのかな?」

「ばか。するかそんなこと。」

「あれ?じゃ、おイタされそうになってるのかな?」

櫻井が下目遣いで有岡を見る。

有岡はビクッと体を震わせ、笑顔なのに冷たい櫻井の視線から逃れようと、

大野の後ろに隠れる。

大野はそれをチラッと見て、有岡を後ろに隠したまま、櫻井を睨みつける。

「それもねぇから安心しろ!俺は仕事中だ!帰れ帰れ!」

「相変わらず、つれないね?」

櫻井は大野と有岡の前までやってくると、大野の腕を握る有岡の手首を掴む。

「悪いね。これ、俺のだから。」

ニッと笑って有岡の手を離す。

「誰がいつお前のもんになった?」

「え?誰がって……、honeyはぁ、初めて会った時からぁ、……俺のもん……でしょ?」

櫻井が快活に笑って、大野の肩を抱く。

「ふざけんなっ!女子高生みたいな話し方しやがって!」

大野は肩に回った手を払い退ける。

「honeyに会うと、いつでも恋する乙女になるんだよ。

 知らなかった?」

「知るかっ!」

「マジありえな~い。」

櫻井が頬をプゥッと膨らませる。

「キモッ!」

顔を背ける大野の肩に、笑いながら櫻井の腕が乗る。

「ひどいなぁ、honeyは。」

大野が櫻井の方に顔を向けると、思いの外近い距離感にドキッとする。

「久しぶりに会ったのに、再会のキスもなし?」

櫻井がアイドル並みの笑顔で大野を見つめる。

「するか、そんなもん!」

「あ……やっぱり大野さん、こっちの人?」

有岡が大野と櫻井を交互に見る。

「ちげぇよ。本気にすんな。」

大野が有岡に向かって顎を上げる。

「違うことないでしょ?俺とhoneyは付き合ってるんだから。」

「お前が勝手に言ってるだけだろ?」

「honeyだってわかってるくせに。」

櫻井がクスクスと笑う。

「わかりたくもないわ。お前の数いる恋人の一人になるなんてごめんだね。」

大野がふっと顔を背けると、櫻井が大野の顎に手を掛け、自分の方に向かせる。

「一人なら……恋人になってくれるの?」

櫻井の顔から笑みが消える。

大野は戸惑うような表情のまま、櫻井の手を振り払う。

「なんねぇよ。お前の恋人なんて、死んでもなるか。」

宙に浮いた指を見て、櫻井がクスッと笑う。

「やっぱり……つれないねぇ。honeyは。」

二人を見ていた有岡が、二人の間に入り、キョロキョロと見比べる。

「大野さんは……じゃ、フリーってことですよね?」

二人とも何も言えず、有岡を見つめる。

「じゃ、俺にもチャンスはある!」

ニコッと笑って大野の腕に絡みつくと、大野を見上げる。

「俺、大野さんが好きですぅ~!」

「ば、ばかっ!やめれって!お前には決まった相手がいんだろうが!」

「でも、最近冷たくて……。いつも一人でどっか行っちゃうし……。

 大野さんに乗り換えます!」

「乗り換えんな!」

櫻井は笑いながら腕を組む。

「ほらほら、honeyは俺の恋人になった方がいいんだよ。

 でないとこういう奴らが次々やってくるよ?」

「大野さ~ん!」

有岡がギュッと大野に抱き着くと、大野の手が有岡の顔を引き離す。

「俺は誰とも付き合わねぇ!」

高らかに笑う櫻井の顔を、忌々しそうに大野が睨みつけた。










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