「短編」
短編(いろいろ)

To be free ⑦

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俺と課長がびっくりしていると、長瀬さんは相手に向き直り、

高らかに宣言する。

「俺はあなたを愛してます。

 付き合ってください!」

そう言って、右手を差し出す。

差し出した相手は……。

「「店長!!」」

俺と課長、同時に叫んだ。

「え、なになに?どういうこと?これ、なに?」

店長は理由(わけ)がわからず、キョロキョロと俺らを見回す。

そんな店長の両肩に、長瀬さんの大きな手が乗る。

「俺は、あなた……茂さんを愛してます。

 付き合ってください!」

これ以上ないってくらい楽しそうな顔で笑う。

「ちょ……、え?お…れ……?」

長瀬さんが大きくうなずく。

「付き合ってくれますか?」

店長はやっと事態が飲み込めたのか、急に頬を赤らめて下を向く。

「ほんまに……?」

長瀬さんが笑顔でうなずく。

「あなたがいいんです。」

「俺は……。」

店長が困ったように課長を見つめる。

課長は楽しさを堪えきれないという顔で、大きくうなずく。

課長……二人の気持ち……。

店長は意を決したのか、長瀬さんを見上げる。

「俺も……ずっと長瀬君が好きでした……。」

店長が消え入りそうな声で言う。

でも、俺達にははっきり聞こえて……。

言い終わると同時に長瀬さんが店長を抱きしめて、持ち上げた。

「う、うわっ!ちょっ!待ってぇ!」

店長が慌てて長瀬さんにしがみ付く。

「もう、離さないから!」

大きな長瀬さんに抱きあげられた店長は、メリーゴーランドみたいにグルグル回された。

「課長……知ってたんですか?」

課長が、嬉しそうに焼酎の中の梅を潰し始める。

「あの頃はな?でも二人とも、一歩前に進めなくてさ。

 ま、男同士だし、そんなもんだろと思ってたけど……。

 そうかぁ、二人とも忘れられなかったんだな。」

潰した梅を掻きまわし、焼酎を口にすると、ニヤッと笑う。

「長瀬!ひどいじゃないか!何度もチューした仲なのに!」

課長の声が、長瀬さん達の動きを止める。

「え?チュー?」

智が驚いて課長と長瀬さんを交互に見る。

「酔った勢いのおふざけでしょ。これが本当のキスです。」

長瀬さんが、ガバッと店長を抱きかかえてキスをする。

突然のことすぎて、店長は全く動けない。

でも、みるみる顔が赤くなっていく。

あ~あ、耳まで真っ赤……。

茫然と二人を見ていると、課長が俺に向かって囁く。

「で……お前もなの?」

俺は隣の智に目配せしてうなずく。

智の頬も……ほんのり染まる。

「俺の周りはそういう奴ばっかりなのか?

 俺も仲間に入れろ!」

「何言ってるんですか。課長には素敵な奥さんがいるでしょ?」

「いるけど……、なんか羨ましいぞ!」

課長が面白くなさそうに俺に向かっておしぼりを投げる。

「お前ら、二人とも、今までみたいに自由に女遊びできないからな!」

「してませんから!」

俺が叫ぶと、智が俺の腕を引く。

「翔君、女遊びしてたの?」

「してないって。」

「ほんと?」

「ほんと!」

智はじっと俺を見て……クスクス笑い出す。

笑い出して、俺の腕をグッと引く。

「んふふふふ。もう、翔君も自由にはできないからね?」

「え?智、北海道行っちゃうのに?」

「え?おいらがいない間、自由を満喫しようと思ってた?」

「そ、そんなわけないじゃん。」

「あ、今、どもった!」

智も俺に向かっておしぼりを投げる。

見ていた課長が面白がって、長瀬さんのおしぼりまで投げ出す。

もう、その後は……。

店長も交えて、飲んで、投げて、飲んで……。

楽しすぎて、家に帰ったのは12時を回っていた。



「幸せそうだったね。」

智が俺の隣で笑う。

酔っているのか、クスクス笑いが止まらない。

ソファーに並んで座って、俺が持ってきたミネラルウォーターをゴクゴクと飲む。

「んふふ……可愛かったぁ、店長。」

確かに可愛かったよ?

とても40を越えたおっさんとは思えないくらい……。

でも……。

「智の方が可愛いよ……。」

智のこめかみにキスすると、智がクスクス笑いながら俺を見上げる。

「人は……恋をすると鎖に繋がれる……。」

智の唇が近づいてくる。

「自由だったはずの心ががんじがらめ……。」

俺の唇の端を掠め、ゆっくり開いた唇が、俺の唇を挟む。

「一人ではなくなるけど、代わりに空飛ぶ羽を失う……。」

柔らかい甘噛みが、熱を持ったキスに変わる。

緩慢な舌の動きは、智をエロくする。

味わうように舌を絡めるのは、酔っているから……?

唇を離した智が、ほぅ、と小さく息をつく。

「長瀬さんも店長も……。

おいらだけじゃなく……翔君も。

 翔君も……おいらの鎖に繋がれる……。」

「……俺は……喜んで両手両足差し出すよ。」

「ぅふふ。引っ張ったら飛んでくる?」

「引っ張られたら……行くしかないでしょ?」

今度は俺が智の唇に喰らいつく。

「んふふふふ……翔君……。おいら……すぐ引っ張っちゃうかも……。」

智の腕が俺の首筋を撫でる。

俺は、智をソファーに倒しながら考える。

俺の有給……何日残ってたっけ?

引っ張られたら、行かずにはいられない……。

北海道だろうが、どこだろうが。

「自由じゃないのに……おいら今……すっごく自由……。」

智が小さな吐息を漏らして、体をしならせる。

自由に……俺の腕の中を泳ぐ智……。

俺が……大きくなればいい。

智が籠を感じないくらい大きく……。

風のような智が、飛び回れる空のように……。

「んっ……ぁんっ……しょ…く……。」

「……ん?」

智の首筋を撫でる唇を、一瞬止める。

「遊んでも……いぃけど……あ、んっ!」

智が俺の指に反応する。

「本気は……ダメだよ……。」

智の指が俺のを掴む。

「うっ……。」

俺の体がくの字に曲がる。

「溜まっちゃうもんね……。」

えぇ?浮気してもいいの?

そういうこと?

「本気は……おいらだけで……。」

俺のをギュッと掴んでニコッと笑う。

ええ~っ?

「しょ……愛して…る……。」

智は妖艶に笑って、両腕を広げる。

智の籠は、まるで大きな宇宙……。

一番端まで辿り着くのに、どれくらいかかるだろう?

俺は……智ほど、大きくなれる自信が……ない……。

「おいら……自由を手放して……自由になった……。」

智がクスクス笑いながら、その腕で俺を抱きしめる。

仕方ない。

俺の鎖は軽くて長くしてやろう。

智がどこへでも行けるように……。










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