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「ふたりのカタチ」
ふたりのカタチ(やま)【141~160】

ふたりのカタチ (157)

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おいらはびっくりして、ショウ君をまじまじと見つめる。

「え……あれ?サトシ……聞いてないの?」

「うん……。」

「田村さんはなんて言ってた……?」

ショウ君も驚いた様子で、伺うようにおいらを見る。

「男の子と……抱き合ってたって……。」

「抱き合う……?」

「……うん。」

田村さん、おいらの為にオブラートに包んでくれたんだ……。

でも、余計に衝撃が大きいよ、田村さん!

おいらはハンバーグのタネを掴むと、両手の間でパシパシ放る。

パン、パンと、大きな音が響いて、ショウ君が一歩退く。

「サ、サトシ?」

「空気……ハンバーグの空気抜いてるだけ……。」

何度も何度もタネを放る。

その度に、パン、パンと音がして、ショウ君が、怯えた顔でおいらを見つめる。

「で……なんでキスなんかされたの?」

「それは……。」

ショウ君が言いよどむ。

おいらは手の中のタネをフライパンの中に投げ込む。

ジュッと音がして、パチパチと油の弾ける音がして……。

それを見て、さらにビビったのか、ショウ君がまた一歩退いた。

「なんで?」

おいらはフライパンを見つめたまま聞く。

おいらの中の感情は複雑で……。

悲しいのか、悔しいのか、イライラしてるのか、怒ってるのか、よくわからない。

でも、できるだけ冷静に……。

ただそう思って、もう一つ、タネを手にする。

「……そ、相談に乗ってて……。」

「相談?」

パン、パンとまた肉の音が響く。

「仕事のことと……恋愛のこと……。」

「恋愛……?」

パンッ!と一際大きな音を立てて、そのまま、さっきのハンバーグの隣に放り込む。

ジュッと言う音と、油の音に掻き消されそうなほど、小さな声でショウ君が言う。

「……好きな人がいて……どうアプローチしていいかわからないから、

 相談に乗って欲しいって言われて……。」

「……相談に乗ってあげてたら……相手は自分だったと?」

「まぁ……そういうこと……なんだけど……。」

「で、どうして……キス?」

おいらはフライパンを持ち上げて、フライ返しでハンバーグをひっくり返す。

また、ジュゥッと音が響いて、肉の焼ける匂いが広がっていく。

「……突然、告白されて……。」

ショウ君の声は、やっぱり小さい。

後ろのショウ君に集中しないと、聞こえないくらい小さい。

「ちゃんとサトシの話して断って……。」

フライ返しでハンバーグを裏返して、フライパンに蓋をする。

音が籠って小さくなる。

「そしたら、気持ちだけでも受け取ってくれって言われて……。

 気づいたら……。」

キスされてたってこと?

おいらは振り返ってショウ君を見る。

ショウ君は、食器棚に寄りかかるように立っていて、

なぜか、それが無性にムカついて……。

食器棚を開けるついでに、ちょっと乱暴にショウ君を退かした。

「あ、ごめん……。」

ショウ君はキッチンの端の方で俯いて……。

そんなショウ君を見ていたら、今度は申し訳なくなってきて……。

台の上にスープ皿を置いて、ショウ君の方へ行く。

ショウ君が悪いわけじゃない。

ショウ君から口説いたわけじゃないし、キスしたわけでもない。

でもね……。

おいら、自信がないんだ……。

こんなカッコいいショウ君が、ずっとおいらを好きでいてくれる自信……。

人の心なんて変わるもの。

みんなそう言う。

ドラマだってそう。

好きで結婚したのに、不倫したり、

恋人がいても、他の人好きになったり……。

おいらの気持ちが変わらない自信はある。

類さんの時によくわかったから。

おいらにはショウ君しかいない。

でも、ショウ君は?

おいらよりずっと素敵な人が現れても、ショウ君、おいらを好きでいてくれる?

もっともっと魅力のある人間にならないと、

ショウ君を繋ぎ止めておけないような気がして……。

「ショウ君……。」

おいらはショウ君の前でショウ君を見上げる。

「ショウ君に……気持ちはなかった?」

「もちろんだよ。気持ちなんてあるわけない!」

「なら……いいよ。もう、いい。」

おいらはショウ君の左手を両手で握る。

「わかってるから。ショウ君は悪くない。

 されちゃったんだもん……。

 逃げられなかったんだよね。」

「サトシ……。」

ショウ君が、怒ってるような、悲しんでるような、変な顔をする。

「おいらは大丈夫。大丈夫だから……この話は、これで終わりにしよう。」

握っていた手を見つめて、そっと手を離す。

手までカッコいいショウ君……。

「本当に……?気にしてない……?」

「うん……。気にしてない。」

フライパンの中の音がちょっと小さくなる。

ハンバーグがだいぶ焼けて来たんだ。

向きを変え、フライ返しを持ってコンロの前に立つと、蓋を取る。

ジュウッと美味しそうな音と匂いが、湯気と一緒においらを包む。

片手に蓋、片手にフライ返しを持って、ハンバーグをひっくり返そうとしたら、

後ろからショウ君の声が聞こえた。

「サトシ?」

「……なに?」

おいらはハンバーグを持ち上げてひっくり返す。

「本当に気にしてないの?」

なぜだろう。

ショウ君の声が、低く、冷たく聞こえるのは……おいらの気のせい?










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