「ふたりのカタチ」
ふたりのカタチ(やま)【141~160】
ふたりのカタチ (156)
2017.06.25 *Edit
「な、なんでもない……。」
やっぱり……聞けないよ……。
ショウ君はちょっと困った顔をして、おいらをソファーに座るよう促す。
おいらも、素直にソファーに座る。
隣に座ったショウ君が、おいらの手を優しく握る。
「今日は……家で仕事?」
「うん……そう……。」
家で仕事してたけど……。
「でも……田村さんに会った。」
ショウ君、田村さんのこと、気にしてたのって……。
ショウ君をチラッと見る。
ちょっとショウ君がギクッとした。
ギクッと?
やっぱり……ショウ君……。
「ショウ君……。」
涙目で見上げると、ショウ君が顔を背けた。
「ショウ君……。」
おいらはショウ君に抱き着いて、その胸に顔を押し付ける。
嫌だ!
絶対嫌だ!
ショウ君と別れるなんて……絶対できない!
なら、このまま何も言わず、黙って過ぎ去った方がいいのかな……。
そうすれば、別れるなんて言われなくてすむ?
「ご、誤解だ。誤解なんだ。」
ショウ君が、おいらの頭を両手で挟む。
おいらを引き離し、観念したようにおいらを見つめる。
「誤解……?」
「だから……田村さんに見られたのは……。」
「でも……。」
抱き合ってたんでしょ?
若い男の子と抱き合ってたって……。
「あ、あれは、突然で……避けることもできなくて……。」
本当に……誤解?
何もないの?
「ショウ君……ほんと?」
「本当だよ。俺がサトシ以外にあんなこと、するわけないだろ?」
「でも……おいらも見たんだ……。汐留で……仲良く歩いてるとこ……。」
「だから……。」
ショウ君はおいらの顔をギュッと握って、顔を近づける。
「全部誤解。あれは、可愛がってる後輩。
大学の後輩で、俺を慕ってうちの会社に入って来たんだよ。
だから、相談なんかに乗ってて……。
それだけ。それだけだから!」
「ほんと……?」
「当たり前だろ。」
「本当に……?」
「信じてくれないの?」
ショウ君がちょっと不満そうに口を尖らせる。
良かった……。
なんでもないんだ……。
本当になんでも……。
ホッとしたら、涙が溢れてくる。
「サ、サトシ……。誤解なんだよ?わかってる?」
「うん……わかってる……わかってるけど……。」
溢れる涙にショウ君がオロオロしだして……。
良かった……。
本当に……。
泣きながら笑ったら、ショウ君がおいらの涙を親指で拭ってくれた。
「心配……したの?」
ショウ君の声が、ちょっと上がる。
「うん……。他の人、好きになったのかと思って……。」
「ばかだね……そんなこと、あるわけないでしょ。」
ショウ君の手が優しくおいらの髪を撫で上げる。
「若くて……可愛い子だったし……。」
「サトシ以上に可愛い子なんていないよ。」
「仲良さそうで……。」
「……確かに仲はいいけど……。」
ショウ君の顔がグッと目の前まで近づく。
イケメンが嬉しそうに笑ってる。
「後輩としてね?こういうことしたいのは、サトシだけだよ……。」
ショウ君の唇が近づいてきて……。
おいらの唇に優しく重なる。
重なって、すぐに舌が差し込まれる。
舌先を絡めて、吸い付くようなキスを交わす。
優しいのに、肉感的なキス。
舌の根元をくすぐられて、ゾクゾクっとして……。
いつの間にか、おいらの腕もショウ君の首に絡みついてた。
「ショウ……く……。」
クチュクチュと唾液の音が響いて、心の中の心配の泡も一緒に弾けて行く。
「サトシ……信じてくれる?」
「う……うんっ……。」
キスが続いて……。
下腹部が疼いたけど……。
グ~。
おいらの腹の虫が鳴った。
「ショ……ご飯……食べ…よ?」
恥ずかしくて、視線を下げながら言う。
「あはは、いいよ。俺も腹空いてるし。」
ショウ君の声が楽しそう。
余計恥ずかしくなって、ショウ君に背を向けてキッチンに向かう。
今日は……たくさんのみじん切りを入れたハンバーグとスープ。
「すぐ焼けるから……待ってて。」
おいらはフライパンと鍋に火を入れて、冷蔵庫からタネを取り出す。
ショウ君が後ろから近づいてきて、おいらを抱きしめる。
「ショウ君……。」
首だけで振り返ると、イケメンが、イケメた顔で笑ってる。
「俺も手伝う……。」
「いいから……シャワー、浴びてきちゃえば?」
「シャワーは……後でサトシと一緒に浴びる……。」
ショウ君の唇が、おいらの耳を甘噛みする。
「やんっ……。それじゃ、手伝いにならないから!」
むしろ邪魔してる?
「うそうそ。」
ショウ君は笑っておいらから離れると、隣で食器棚からお皿を取り出す。
お皿を台の上において、ほら、お手伝いだろ?って顔でおいらを見つめる。
「んふふ。ショウ君は……。」
ショウ君がニコニコ笑って、皿の縁を弄る。
「いやぁ、言えてよかった。気になってたんだ。
あんな場面を田村さんに見られちゃったし……。」
「……見られなかったら……言わないつもりだった?」
「それは……いらぬ心配させても……。」
おいらが口を尖らせると、ショウ君の手が肩に回る。
「言って欲しい……見られてなくても……。」
「……わかった。言うよ。でも……なんて言う?」
「それは……そのまま……言うしかないんじゃない?」
フライパンに油を流し込む。
油はすぐに広がって、フライパンの底がキラキラ光る。
「え……、キスされましたって、言うの?」
…………。
…………。
キス……?
ショウ君、キスされたの?
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