「大人の童話」
Wonderful(やま)

Wonderful ①

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むか~し、むかし、あるところに、とても心の清い男がおりました。

まるで天使のように清らかだったため、誰も彼に声が掛けられません。

その笑顔があまりに眩しすぎて、まともに顔を見ることもできなかったのです。

そんな彼は、美しい心のままに、とても美しい花を咲かせます。

その日も、白い綺麗な……菊の花が、大きな花を咲かせます。

「あぁ、真っ直ぐ、大きく咲いてくれた!」

男は手を叩いて喜びました。

すると、花の中心部に、見たことのない、何かがいます。

虫でしょうか?

いえいえ、虫ではありません。

蝶でしょうか?

いえいえ、大きな羽など着いてはいません。

それではいったい何でしょう?

男は恐る恐る近づきます。

どうも、うずくまった形の人形のようです。

そっと、花の真ん中に指を差し出してみました。

するとどうでしょう。

人形が動き出したのです。

小さくうずくまっていた人形が、立ち上がり、男を見上げます。

「誰?」

小さな人形が叫びます。

「僕?僕はサトシ。君は?」

……サトシは、屈むようにして花に顔を近づけます。

「僕は……名前なんてないよ。生まれたばっかりだもの。」

「そ、そうだね……じゃ、僕が付けてもいい?」

「いいよ。名前がないと不便だものね。」

人形が偉そうに腕を組みます。

「じゃあ……ジャッキー!ジャッキーなんてどう?」

男は大好きなアクション俳優の名を口にします。

人形は大きく首を振って答えます。

「それじゃ、ナイフを持って追いかけまわしそうじゃない?」

「それはチャッキーだけど……、じゃあいいよ、違うのにする。」

サトシは、う~んと悩みます。

ハッと閃いたのか、人差し指を立てて、人形を見つめます。

「ジョーは?ジョーならカッコよくない?」

人形はブンブン首を振ります。

「それじゃ、サイボーグかボクサーみたいだよ。そんなに僕を戦わせたい?」

人形は両手を広げ、首を竦めます。

「そうかぁ。いい名前だと思ったんだけどなぁ。」

サトシはちょっとボォーっとした良い子なので、

そんな人形の物言いにも文句を言いません。

「じゃ、ショーは?ショー君!」

サトシはニコッと笑います。

呼びやすくていい名前だと思ったからです。

人形は、腕を組み、フム……と考え、うなずきます。

「まぁ、そんなもんかな?」

人形からOKが出たので、サトシはホッとして、花の方に手を出します。

「よかったぁ。じゃ、ショー君、よろしくね?」

サトシが人形の腰の辺りを摘まみます。

人形を持ち上げてびっくりしました。

中指ほどの大きさしかありません。

腰を持たれてくすぐったいのか、人形が、体を捩って抵抗します。

「止めろよ!俺のことは手の平に乗せろ!」

人形……改め、ショーは、偉そうに頬を膨らませます。

そんな顏も、可愛いと思ったサトシは、言われるままに手の平の上に乗せます。

「よろしくね、ショー君。」

サトシがふにゃりと笑います。

みんなが眩しくて近寄れない笑顔です。

「お、おぅ。」

サトシの笑顔にポッと頬を染めたショーが、ぶっきらぼうにうなずきます。

どうやら、ショーにはサトシが大きすぎて、全部が目に入らないせいか、

みんなほどは眩しくないようです。

「ショー君……小さいね。」

「うるさいな。すぐに大きくなるから!」

「……大きくなるの?」

「生まれたばっかりなんだぞ。これから大きくなるよ!」

「……そうだね。きっと大きくなるね。」

サトシは、一生懸命大きくなると言うショーが、可愛くてしかたありません。

手の平を顔の前に持って行き、チュッとショーの顔に唇を当てます。

「う、うわっ!な、なんだよ、これ?」

「ん~?可愛いなぁと思って。」

「お、思って何した!」

ショーは真っ赤になる顔を両手の甲で拭いながら、サトシを見上げます。

「チュ~だよ。知らないの?」

「そんなの知らねぇよ。」

ショーの言葉遣いが、だんだんぞんざいになってきます。

でも、小さいので、何をしても可愛くしか見えません。

そして、サトシも気付きます。

ショーがサトシを眩しがらないことに。

これは初めてのことです。

こんなに近づいても、相手が逃げて行かないのも初めてです。

サトシは嬉しくなって、またショーの顔にキスします。

ショーの顔がこれ以上ないくらいに赤くなり、プゥ~と頬が膨らみます。

「勝手にチューすんなよな!」

「ごめんごめん。でもね、おいら、初めてのチューなんだよ?」

「はじめて……?」

「うん。ふぁーすとキス。」

サトシがクスクスと嬉しそうに笑います。

ショーもまんざらではなさそうです。

「とりあえず、ウチに行こうか?そのままじゃ、ショー君が風邪引いちゃう。」

そうです。

当たり前です。

ショーは生まれたままの姿……なのですから、

衣類などと言う物を身に着けているわけがありません。

「風邪?俺はそんなに弱くねぇよ。」

偉そうに腕を組む度、真ん中に着いた、楊枝の先のようなものが、ピコンと跳ねます。

「でも……ショー君、可愛すぎるから……。」

サトシはそんなショーを胸の前で抱えて、家に向かいました。

ショーに着せられる物があるかどうか、頭の中で考えますが、いい物が浮かびません。

「ずっと裸って言うのも……ねぇ?」

当然サトシの視線の先は……ピコンと跳ねる楊枝の先です。










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