「ふたりのカタチ」
ふたりのカタチ(やま)【141~ 】

ふたりのカタチ (145)

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その日、帰って来たショウ君の上着を脱がせながら、それとなく聞いてみる。

「ショウ君、今日は外回り?」

「え?ああ、そうだね。今日は外も回ったから疲れた……。」

ネクタイを緩め、一番上のボタンを外す。

おいらはその仕草が大好き。

ついでに言えば、時計を外すのも……。

男の色気って感じがして、ゾクゾクする。

「どの辺回ったの?」

「今日?今日は……新宿の方かな?目黒も行ったか。」

ほら、ショウ君が時計を外しにかかる。

内側の手首をカチャとやって、ちょと振る仕草……。

背筋がゾクッとする。

あの指が……手が……。

イケナイこと考えてるわけじゃないんだよ?

ないんだけど……。

「……他は?」

「他?……行ってないと思うけど……。」

時計をいつものケースにしまって、ドサッとソファーに腰かける。

おいらは、上着をハンガーに掛けて、できるだけ自然に……聞いてみる。

「今日さ……汐留の方には行かなかった?」

「汐留……?」

ショウ君の表情が一瞬変わる。

え?何?何か思い出した?

「いや……行ってないよ……。」

ショウ君は、おいらから視線を逸らしてテレビを点ける。

完全に、確実に……ショウ君……嘘、ついてるよね?

汐留、行ってるよね?

誰かと……会ってたよね?

仲良さげに腕組んで!

いや、組んではいなかったか……でも、そんな雰囲気だった!

「行って……ない?」

「ああ、行ってないよ……。」

ショウ君はそのまま、新聞を広げて、読み始める。

テレビ点けたくせに。

おいらは乱暴にテレビのリモコンでオフにする。

その動作が大きかったせいか、びっくりしたショウ君がおいらを見上げる。

「見ないんなら、テレビ、消してもいいよね?」

「う、うん……。」

ショウ君は、おいらが怒ってるのがわかったのか、情けない顔になる。

「おいら、仕事があるから……夕飯は適当に食べて。」

「え?あれ?サトシ……?」

おいらはアトリエに入って、後ろ手でドアを閉めると、ドアにもたれ掛かって溜め息をつく。

わかってるよ。

きっと大したことはないって。

でも……大したことないなら……言って欲しかったな……。

それがちょっと寂しく感じて、ショウ君に当たっちゃってる。

いくら一緒にいるからって、全てが全て報告しなきゃいけないわけじゃない。

現においらだって、今日は仕事で出るって言ったけど、

そこに類さんもいるなんて、言ってない。

ここんとこ、類さんが一緒の仕事が増えてるから、

前みたいに言うとなると、仕事の度になるし……。

仕事って言えば、ショウ君ならわかるかなって思ってるとこもある……。

もちろん、聞かれたら答えるよ。

今週は3回も類さんと会いました、なんて、わざわざ言う必要ないかなと思って……。

プ、プライベートで会うことになったら、もちろん言うよ。

ショウ君がいいよって言ってくれなきゃ行かないし……。

ショウ君が……何よりも、一番で……。

ショウ君……おいらも、今日は類さんと一緒って言った方がいい?

ショウ君も、そう考えて、言わないでいてくれてるのかな?

だとしたら……ちょっと……子供っぽかった……?

おいらはアトリエのドアを開ける。

「ショウ君……。」

開けたとたんに目が合ってドキッとする。

「おいらが出てくるの……待ってたの?」

ソファーに膝を付いて、背もたれに両肘を掛けて、こっちを見てるショウ君。

「なんか……怒らせちゃったみたいだったから……。」

ショウ君が、困ったように後頭部を撫でる。

「何か……しちゃった?ごめん……俺、自分じゃわかんなくて……。」

「し、しちゃってるよ。」

おいらは自分のしたことが恥ずかしくなってきて、素直になれなず、怒り気味の声で言う。

「何しちゃった?教えて……くれる?」

まだ、弱気な様子でおいらを見つめるショウ君。

「……ネクタイ緩めて……一番上のボタン、片手で外すとか……。」

「え……、それ、いつもやってる……。」

「時計外す仕草が……色っぽいとか……。」

「それも……いつもと……違ってた?」

弱気な顔のショウ君が、さらに困った顔で、おいらを見つめる。

「だから……ショウ君がカッコいいのが悪い!」

おいらも困ってそう言うと、ショウ君から顔を背ける。

「サトシ……。」

「だ、だから……なんでもないの!」

おいらがそのまま、ドアの前で下を向くと、ソファーからショウ君がやってくる。

「ほんとに……?」

「……ん。」

「何かあるなら……ちゃんと言って。」

「ほんとに!何でもないから!」

ショウ君を見上げると、やっとホッとした顔で、おいらの頬に手を添える。

「俺……サトシに嫌われたら……生きていけないから……。」

「ば、ばかっ。」

おいらは頬に添えられたショウ君の手に自分の手を重ねる。

「嫌いになんか……なるわけ……。」

「でも……。」

まだ心配そうなショウ君が、おいらの顔を覗き込む。

「あんな風に怒るサトシなんて……滅多にないから。」

……そうかも。

おいらはあんまり怒んない。

悲しくなることはあっても、怒ったりはしない……。

きっと、相手がショウ君だから……。

ショウ君だから……あんな小さなことで、ムッとしたりする。

「だから……ショウ君がカッコいいから!」

ショウ君の唇に唇を当てて、触れるだけのキスをする。

「もう、それ以上カッコ良くならないで。」

「え……それは……。」

ショウ君は眉尻を下げて、泣きそうなほど、困った顔になった。










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