「大人の童話」
MONSTER(やま)

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その頃、サトシの家では弟たちが頭を寄せ合っていました。

「サトシ兄ちゃん……大丈夫かな……?」

心配そうに城の方に目をやるジュンの肩を、マサキが叩きます。

「大丈夫だよ。サトシ兄ちゃんだよ?いざとなったら野獣を蹴り飛ばして逃げてくるよ!」

元気づけようと、声を上げて笑いますが、マサキの声は空滑りするばかり。

「オレのせいでサトシ兄ちゃんが……。」

ジュンは泣きそうな顔でマサキを見上げます。

「そうですね……これ以上は待てません。」

カズナリは意を決したように立ち上がります。

続いてジュンも立ち上がります。

「オレも!待ってられない!」

「俺だって本当は……。」

マサキも立ち上がって二人を見ます。

三人はうなずき合って、玄関へ急ぎます。

手に手に武器になりそうな物を持って、玄関から駆け出します。

「半日くらいで着くかな?」

「半日もあれば着くでしょ?」

「サトシ兄ちゃん、元気でいてくれるかな。まさか……。」

最悪の状態を考えて、ジュンの顔が青くなります。

「大丈夫。ああ見えて、サトシ兄ちゃんが一番強いんだから!」

「そうだよ、そうだよ!町一番の強者だって、

 サトシ兄ちゃんに投げられちゃったんだから。」

「あれは、サトシ兄ちゃんにチュ~を迫ったりしたから!」

「でも、相手は野獣だよ?人間より強いよ?」

ジュンが心配そうに二人の兄を見ます。

二人の兄は声を揃えていいます。

「大丈夫。サトシ兄ちゃんを本気で殴れるやつなんていないから!」

ジュンが首を傾げます。

「なんで?」

二人の兄は顔を見合わせます。

「なんでって……可愛いから?」

「……色っぽいから?」

「……野獣でも……?」

二人の兄は顔を見合わせ、足を早めます。

「野獣にサトシ兄ちゃんの良さがわかるかな?」

「わかるでしょ?サトシ兄ちゃんの可愛さは万国共通!」

「野獣界でも?」

「野獣界でも!」

そう言いながら、二人の兄の歩は早まります。

二人とも自信はないのです。

サトシの優しさが、野獣にも通じるかどうか。



その日、日課になっている庭の散歩にサトシは出て来ませんでした。

野獣の眉間に皺が寄り、眉が上がり、リスに八つ当たりします。

「お前のせいで、サトシが出て来なくなっただろ!」

「それは……患っているからですよ。」

リスがしたり顔でうなずきます。

「なんだと?やはり病気か?お前のせいで!」

野獣の手がリスに伸びます。

リスはヒラリとその手をかわし、野獣の腕を上って行きます。

肩で立ち止まり、耳元で囁きます。

「王子様も経験したでしょ?恋の病。

 恋煩いでございます。」

野獣が首を傾げる。

「恋煩い……?サトシがか?」

「そうでございます。」

「……誰に?まさか……お前にか!」

王子は肩の上のリスに手を伸ばします。

「ここまで勘が悪いってどうなんでしょうね?

 王子に決まってるじゃないですか!

 サトシは王子に恋してるんです!」

「まさか!あるわけない!」

「どうして?」

リスが首を傾げます。

「私のこの姿を見て、恋などするわけがない!」

「そんなことないでしょ?

 サトシは見た目で相手を選ぶと思いますか?」

リスが小さな前足を組んで、野獣を見つめます。

「いや……。」

自分の食事シーンを見ても、態度を変えなかったサトシを思い出し、

野獣は首を振ります。

「だからと言って……。」

「本当の王子を見てくれてるんです。

 きっと、運命の相手でございますよ!」

「運命……?」

「そうです。離されても離されても、絶対に結ばれる相手!」

リスはクルッと回ってニコッと笑います。

「運命の相手でございます!」

「そ、それは……相手は女じゃなかったのか!?」

「誰が女だって言いました?」

「いや、誰も言ってはいないが……普通そうだろ?」

リスが小さな指を立て、チッチと横に振ります。

「そういう固定観念が森の王を怒らすんですよ。

 だいたいね、諸国の噂では運動神経バツグンとか言われてましたけど、

 狩りに出て、獲物が取れたこと、ありました?」

野獣はフンッと鼻を鳴らします。

「数打ちゃ当たる方式で、たくさん飛ばすから、危なくて動物たちは怖かったでしょうけど、

 実際仕留めたことなんか、一度もなかったじゃないですか。」

「う、うるさいっ!私が噂を流したわけじゃない!

 噂は勝手に流れるものだ!」

「そうですよねぇ。王子の見た目にみんな騙されてるんですよ。

 カッコいい人が運動神経悪いなんて!」

リスは顔の前で手を横に振ります。

「ありえません!」

「そこまで言うな!私だって、運動神経がそんなに悪いわけじゃない!」

「わかってます……。動物に手をかけたかったわけじゃないんですよね。

 自分の中のわけのわからぬ苛立ちを……静めたかっただけ……。」

リスは大きな瞳で野獣を見上げます。

「だから、じっと待っていてくださいませ。

 きっと、サトシには、王子の優しさも、真心も伝わってますから……。」

リスの言葉に、扉の向こうのサトシを想像し、ふぅと小さく息を吐いた。










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