「大人の童話」
MONSTER(やま)

MONSTER ⑭

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コンコン。

野獣がサトシの部屋の扉を叩きます。

いつもよりも豪華な服を着ています。

「サトシ……ちょっと出てくれないか?」

しばらくすると、サトシが顔を出します。

「一人にしてくれと言われたのに……すまない。」

サトシは申し訳なさそうな野獣を見て、クスッと笑います。

野獣がどうしようか悩みながら扉を叩いたのがわかったからです。

「大丈夫。どうしたの?」

「来て欲しいんだ……。」

「来て……?」

サトシが部屋を出ると、野獣の手がサトシの手を掴みます。

サトシは首を傾げながらついて行きます。

階段を下り、大広間の扉の前に立つと、野獣が大きく深呼吸をします。

一度、サトシを見つめ、ゆっくりと扉を開きます。

両側に放たれた扉の奥には……。

何もなかった大広間が、煌びやかに飾られています。

いたるところに、サトシが大好きな薔薇が置かれ、煌々と灯るシャンデリア。

野獣がサトシの前に傅(かしず)きます

「一曲、踊ってくださいますか?」

「え?おいらと?」

サトシがびっくりしていると、野獣はサトシの手を取って、広間の中央まで進んでいきます。

タイミングよく流れる音楽。

気付けば、サトシも豪奢な燕尾服を着ています。

「え?あれ?いつの間に……?」

自分の恰好にびっくりして、後ろだの足だのを見ているサトシの腕を、

野獣がグッと引き寄せます。

「あっ……。」

野獣の胸の中に引き込まれ、サトシがドキッとします。

すかさず、野獣がサトシの腰をホールドします。

「で、でもおいら、こういうの踊れないよ?」

「大丈夫。私がリードするから……。」

野獣は自信ありげにニコリと笑って、クルッとサトシごと回ります。

燕尾服の裾が靡き、サトシの体がふわりと浮きます。

「ショウ君……。」

サトシが恥ずかしそうに野獣を見上げます。

野獣は、俺に着いて来い的な笑みを浮かべますが、

本当はあまり自信がありません。

なにせ、もう数十年も踊っていないのです。

案の定、すぐに野獣のぎこちない足が、サトシの足にぶつかります。

出る足が、サトシと逆に進みます。

面目なさそうにサトシを見つめる野獣に、サトシがクスッと笑います。

「大丈夫。音楽に体を乗せて……。」

繋いでいた手はそのままに、腰のホールドを解き、サトシの体がリズムに乗せて揺れます。

野獣も見よう見まねでサトシに合わせます。

「そうそう、上手い、上手い!」

向い合っていたのを隣に並び、サトシの足運びを野獣が真似ます。

二人並んでのダンス。

サトシが奥に向かって飛べば、野獣は手前に向かって飛びます。

サトシが軽やかに飛ぶのに対して、野獣の体は大きくてダイナミック。

二人のダンスが音楽に合わせて重なって行きます。

野獣もどんどん楽しくなっていきました。

そんな野獣を見て、サトシもさらに楽しくなります。

いつの間にか、小鳥たちもやって来て、楽しそうな二人を見ています。

もちろん、リスもいます。

離れてはくっつき、くっついては離れて、好きなように体を動かしていくと、

サトシは繋いだ手から、野獣の温かさ、優しさ、可愛らしさを感じます。

ほんの少しの頼りがいも。

最後に、野獣の腕の中で、サトシがフィニッシュのポーズを取ります。

野獣も合わせてポーズを取ると……。

音楽が鳴り止み、小鳥たちが次々にやってきます。

口には森に咲く色とりどりの花や木の実。

それをサトシの上に降り注ぎます。

「ぅわぁ~、小鳥さん、ありがとう!」

野獣もそれを手にして小鳥たちを見上げます。

いつもと違った優しい表情に、小鳥たちが野獣の肩や頭の上に止まります。

「んふふ。ショウ君、小鳥さんが似合う!」

「え……そうか……?」

なるべく動かないようにして肩の小鳥を見ると、野獣が微笑みます。

その顔を見て、サトシはドキッとしました。

なぜだかわかりませんが、心臓がドキドキと鳴り始めたのです。

すぐに視線を逸らし、自分の胸に手を当てます。

間違いなく、心臓は早鐘を打つように鳴り続けています。

「サトシ……?」

野獣が心配そうにサトシを覗き込みます。

その手が肩にかかると、サトシの体がビクッと跳ねます。

恐る恐る野獣を見上げると……、

サトシの心臓はこれ以上ないほど大きく跳ね上がります。

どうしたのか、何が起こっているのか、サトシにもわかりません。

「気分が悪くなったのか?」

野獣がさらに心配そうに顔を近づけます。

サトシの顔がカァーッと赤くなります。

動悸に続いて、眩暈までしそうです。

このままでは、サトシの体が持ちません。

「ご、ごめん……。すっごく楽しかった!

 でも、おいらちょっと……。」

サトシはその場から走り出します。

「サトシ!」

走る背に向かって野獣が叫びます。

小鳥たちもリスも、サトシの背を見つめます。

サトシが行ってしまうと、野獣がリスに向かって怒ります。

「お前のせいでサトシの具合が悪くなったぞ!大失敗だ!どうしてくれる!!」

野獣の声と同時に小鳥たちが飛び立ちます。

「失敗?大成功でございますよ。王子!」

リスは野獣の体を駆け上がると、耳元で囁きます。

「恋の……始まりでございます。」

リスが唇の端を上げて笑います。

「……始まりだと……?」

野獣にはリスの言っていることがわかりません。

遠巻きに見ている小鳥たちも一斉に首を傾げました。










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