「大人の童話」
MONSTER(やま)

MONSTER ⑬

 ←MONSTER ⑫ →ティータイム 1


一人になったサトシはベッドに腰かけ、野獣の出て行った扉を見つめます。

「あれ……告白……でいいのかな?」

村の何人かの女性から告白されたことはありますが、男性からの告白は初めてです。

まして、相手は皆が恐れる野獣……。

「ショウ君がいい人なのはわかってる……。」

人ではないですけど。

「本当は優しくて……。」

優しさの示し方は不器用ですが……。

「一緒にいて、安心できるし……。」

それは心を開いてると言うことでしょうか?

「もちろん、さっきはびっくりしたし、カッとしちゃったけど……。」

サトシは右手を左手で包み、その手を見つめます。

「嫌なわけじゃ……。」

いつの間にかベッドの上でサトシを見ていたリスが、首を傾げます。

「あ、あれだって、動物の本能なわけで……。」

リスは、ふ……ん?と片方の口の端を上げます。

「好きだから……だよね?」

サトシも首を傾げます。

すると、リスがツツ……とサトシの膝に乗って来ます。

「あれ?どこから来たの?」

リスが尻尾を揺らします。

「あ……昨日の?また出られなくなっちゃうよ?」

リスがニコッと笑います。

「人懐っこい子だね……。」

サトシはリスの背中を撫でます。

「ねぇ、リスさんはどう思う?

 おいら、どうしたらいい……?

 ……弟たちは大好きだよ。ショウ君のことも大好き。

 でも、弟たちはあんなことしないし……。」

リスがサトシの指を甘噛みします。

「あはは、くすぐったいよ~。」

サトシはリスから指を離すと、その指で唇をなぞります。

「おいらだって、ここが意外と居心地よくて……。

 ショウ君との生活も楽しくて……。

 出て行く気なんか全然ないけど……。

 でも、さっきみたいなショウ君も受け入れないと……、

 ここにいちゃいけないのかな?」

サトシは、ん~と考えます。

考えても……なかなか結論はでそうにありません。

リスはどうしたものかと首を捻りました。



自分の部屋に戻った野獣は、大きな溜め息をつきました。

「私は言った!言えることは全部言った!

 思い残すことは……。」

ない、と言い切れない自分に歯噛みします。

「何が足りなかった?」

野獣は顎を擦ります。

「言葉では……あれが精一杯だった。

 私の誠意は伝わったはずだ!」

ウロウロと部屋の中を行き来します。

落ち着いて座ることなんかできません。

「花でも持って行けばよかったか?

 それとも、サトシの好きな果物……。」

野獣は小さく首を振ります。

「いや、サトシは女じゃない。

 そんなことをしても無駄だ。

 じゃ、何をすればいい?」

野獣は、ハッと目を開きます。

「そうだ!手紙を書こう。この気持ちを手紙に託せば……。」

野獣は机に座ると、紙とペンを取り出します。

サラサラと書き始めますが、しばらく書くと、

眉間に皺を寄せ、ん~とペンの背で額を掻きます。

「まことに、愛するサトシよ。君こそ私の半身であり……違う!

 ……二人きりでいつまでもいつまでも話していたい気がします。

 そうしてkissしてもいいでしょう。嫌ならよします……これも違う!

 こんなどこかで聞いたことあるような文じゃダメだ!」

野獣はペンと紙を壁に投げつけます。

「あ~あ、それじゃいつまで経っても返事なんかもらえないでしょう?」

振り返ると、リスが扉の前に立っています。

「う、うるさい!」

「サトシ様は悩んでますよ。

 ここにいたいけど、王子の想いを受け入れないといられないのかって。」

「そ、それは、私の気持ちは受け入れられないと……そう言うことか?」

「違うでしょう。初めてのことでわからないのはサトシ様も一緒ってことです。

 ここは……意識させてみるのがいいんじゃないでしょうか?」

「意識……?」

「そうです。腰を擦りつけるなんて直接的なやつじゃなく……例えば……。」

リスは野獣の体を駆け上ると、耳元でコショコショと話します。

「そんなので上手くいくのか?」

「やってみなければわからないでしょう?

 とりあえず、手当たりしだいにやってみるんです!」

リスは腰に手を当て、顎を上げます。

「お前……リスになってからの方が、態度が大きくないか?」

「そうですか?体は小さくなりましたけど。」

リスは笑って、ベッドから飛び降ります。

「善は急げ!準備して来ますから、王子も用意してください!」

「……急いては事を仕損じる……とも言うぞ?」

「それは王子のしたことです!」

「う、うるさい!準備なんて魔法でやってしまえばすぐだろ!」

「私の魔力もそんなに強くはありませんから……。

 肉体労働です!」

リスは扉の前まで走り振り返ります。

「ちゃんと準備しておいてくださいよ?」

リスは心配そうに野獣を見ると、扉をすり抜けて出て行きました。

残された野獣もじっと扉を見つめ、クルッと踵を返しました。

さぁ、上手くいくのでしょうか?










関連記事
スポンサーサイト



 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png a Day in Our Life
総もくじ 3kaku_s_L.png Kissからはじめよう
総もくじ 3kaku_s_L.png Step and Go
総もくじ 3kaku_s_L.png 果てない空
総もくじ 3kaku_s_L.png タイムカプセル
総もくじ 3kaku_s_L.png Hello Goodbye
総もくじ 3kaku_s_L.png season
総もくじ 3kaku_s_L.png 夏の名前
総もくじ 3kaku_s_L.png Welcome to our party
総もくじ 3kaku_s_L.png Deepな冒険
総もくじ 3kaku_s_L.png 三日月
総もくじ 3kaku_s_L.png WONDER-LOVE
総もくじ 3kaku_s_L.png みんなと作ったお話
総もくじ 3kaku_s_L.png 大人の童話
総もくじ  3kaku_s_L.png a Day in Our Life
総もくじ  3kaku_s_L.png Kissからはじめよう
総もくじ  3kaku_s_L.png Step and Go
総もくじ  3kaku_s_L.png 果てない空
総もくじ  3kaku_s_L.png タイムカプセル
総もくじ  3kaku_s_L.png Hello Goodbye
総もくじ  3kaku_s_L.png season
もくじ  3kaku_s_L.png 五里霧中(5人)
総もくじ  3kaku_s_L.png 夏の名前
もくじ  3kaku_s_L.png Troublemaker(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png Crazy Moon(5人)
総もくじ  3kaku_s_L.png Welcome to our party
総もくじ  3kaku_s_L.png Deepな冒険
もくじ  3kaku_s_L.png 花火(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png miyabi-night(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png ZERO-G
もくじ  3kaku_s_L.png 復活LOVE(やま)
総もくじ  3kaku_s_L.png 三日月
総もくじ  3kaku_s_L.png WONDER-LOVE
総もくじ  3kaku_s_L.png みんなと作ったお話
もくじ  3kaku_s_L.png Believe
もくじ  3kaku_s_L.png コスモス
総もくじ  3kaku_s_L.png 大人の童話
もくじ  3kaku_s_L.png 智君BD
もくじ  3kaku_s_L.png ブログ
もくじ  3kaku_s_L.png ティータイム
【MONSTER ⑫】へ  【ティータイム 1】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit
  • 【MONSTER ⑫】へ
  • 【ティータイム 1】へ