「大人の童話」
MONSTER(やま)

MONSTER ⑪

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頭を抱え、項垂れる野獣の前に、リスがやってきます。

リスを見つけた野獣は、イライラをぶつけるように怒鳴り散らします。

「ええい!あっちへ行け!今すぐ出て行かないと喰ってしまうぞ!」

リスはびっくりする様子もなく、首を傾げます。

苛立っている野獣は、フンッとばかりにリスを手で払い退けます。

けれど不思議なことに、払い退けたはずのリスがベッドの上にまだいるのです。

今度は反対の手で払い退けます。

しかし何度払ってもリスは一向に飛ばされて行きません。

「イライラするのもわかりますが、今はやることがあるでしょう?」

誰もいないのに、声が聞こえます。

「だ、誰だ!」

「はぁ……、私の声も忘れてしまいましたか……。」

野獣は部屋中を探し回ります。

ですが、この部屋にいるのは先ほどのリスと野獣だけです。

「まさか……。」

野獣はリスを見つめます。

「お前も……魔法で……?」

野獣はベッドの上に胡坐を掻くと、リスに手を差し出します。

リスは、ツツーッと野獣の手を駆け上ると、肩の上で立ち止まります。

「私です。魔女です!確かに久しぶりですけど……。

 思い付きもしないなんて、ひどい!

 やっと魔力が回復してきたから来てみれば……。」

リスがチラッと野獣を見上げます。

「まさか、襲い掛かろうとして蹴られてるなんて……。」

「う、うるさいっ!」

野獣は自分の肩に向かって吼えます。

「威嚇しても無駄です。ほら、さっさといってらっしゃい!」

「い、行くって……。」

「決まってるでしょう?サトシのところですよ。」

「お、お前が呼び捨てにするな!」

リスは深い溜め息をつきます。

「私にそんなことを言ってる時間があったら、さっさと行って謝ってしまいなさい!」

リスの目が少々吊り上がります。

「謝るって……。」

「素直に自分の気持ちを話せばいいんです。」

「ど、どうやって……。」

リスの目がさらに吊り上がります。

「そんなこと自分でお考えください!仲直りしたいんでしょ!」

「そうだけど……。」

「だったら、さっさと行く!考える前に行動!」

野獣は泣きそうな声で言います。

「考える前に体が勝手に動いて……それでサトシを怒らせたんだぞ!」

「それは、本能で動いたからです!」

リスは腕を伝ってベッドに下ります。

「心で動いてごらんなさい。そうすれば、きっと伝わります。

 あなたの本当の姿を見ても、ちゃんと正面から見てくれた方です。

 大丈夫。サトシ様はわかってくれます。」

それでもまだ渋る野獣に、リスが頬を膨らませ、小首を傾げます。

「このままでいいんですか?」

野獣は大きく首を振ります。

ブンブン、ブンブン振ります。

「だったらほら行って!」

リスが野獣のお尻に噛みつきます。

野獣にとっては、蚊が刺したほどにしか感じません。

「行け~~~っ!」

リスが一生懸命、前足で野獣のお尻を押します。

野獣はそんなリスをチラッと見て、短く息を着きます。

「わかった、行って来る。」

このままこうしていても、何も進展しません。

野獣は立ち上がると、振り返ってリスを見ます。

「そうです!勇気を出して!」

「う、うむ……。」

野獣は意を決して部屋を出ます。

サトシの部屋は廊下を真っすぐ行った反対側です。

おずおずと足を踏み出します。

この廊下が、こんなに長いと思ったのは初めてです。

サトシの部屋が近づくにつれ、また心臓がドクドクと唸り始めます。

何て言おう。

何と話せばわかってもらえるか。

野獣は頭をフル回転させて考えます。

本来、頭はいいのです。

ですが、どんなに考えても、いい言葉が浮かびません。

本能のままに行動してしまったのは事実。

けれど、そんな行動に出たのも、これが初めてだったのです。

野獣になってからも、何人もの人間がこの城を訪れました。

若い娘もいれば、屈強な男もいました。

皆、野獣を見ると恐れ慄き、逃げ惑う……もしくは、動けないほど硬直してしまうのです。

サトシと出会ってから、初めてなことばかりです。

とうとう、サトシの部屋の前まで来てしまいました。

野獣は大きく息を吐き、大きく息を吸いこみます。

グッと手を握り、サトシの部屋の扉を叩きます。

ドンドン。

…………。

中から音はしません。

サトシはいないのでしょうか?

もう一度、扉を叩きます。

ドンドン。

やはり、シーンと静まったままです。

まさか、サトシは出て行ってしまったのか……。

そう思うと、野獣の胸がギュッと締め付けられます。

痛くて苦しくて、どうにかなってしまいそうです。

その場に崩れ落ちそうになります。

それを、グッと胸を掴んで耐えました。

すると、扉がカチャッと音をさせます。

細く開いた扉の隙間に、サトシが見えます。

「サトシ……。」

野獣はサトシを見つめます。

「話がある……。」

サトシは何も言ってくれません。

「入っても……、いいか……?」

サトシは何も言わず、扉から離れます。

開いたままの扉に、野獣は思い切って踏み込みました。

サトシは、ベッドに腰かけ、こちらを見ています。

恐る恐る近づく野獣を、サトシは身動ぎせず、見つめています。

野獣はサトシの前まで来ると、跪きました。










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