「大人の童話」
MONSTER(やま)

MONSTER ①

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むか~し、むかし、あるところに、とてもイケメンな王子様が住んでおりました。

王子様はイケメンなだけでなく、頭脳明晰、運動神経バツグンでいらしたので、

王子様が現れると、近隣諸国の姫君達はキャーキャー奇声を発します。

イケメン王子様の噂が、ラクダや馬車に乗って、世界各国で囁かれるようになるのに、

さほど時間はかかりませんでした。

王子様が適齢期になると、各国の姫君達はこぞって王子様の元にやって参ります。

王子様はそんな姫君達に辟易しておりました。

姫君達は、見かけは綺麗に着飾っておりましたが、

長いスカートの下では足の踏み合い、

化粧室では罵詈雑言、

笑顔の裏では睨み合い……。

そんな姿に、女性に対する賛美や敬意というものが自ずと薄れていきました。

そんな王子様の気持ちに比例するように、

王子様の姫君達に対する対応が粗雑になっていきます。

腰の細さが自慢の姫君が、王子様の手を取って、自分の腰に当てます。

「王子様、わたくしとダンスを……。」

「これはこれは。こんなに細い腰では一緒に食事をしても楽しくなさそうだ。

 僕はよく食べる娘が好きなんでね。」

目が綺麗だと評判の姫君は、潤んだ瞳で王子様を見上げます。

「王子様、わたくしとテラスへ……。」

「ああ、君、テラスよりも医者に行くことをお勧めするよ。

 いつでも涙が溜まるくらい情緒不安定では、この先、生きて行くのが大変だよ?」

胸元の開いた、大胆なドレスの姫君がさらに両腕で胸を寄せ、王子様に寄り添います。

「王子様、ぜひわたくしを妃に……。」

「君に似合いなのは世界一のスイマーじゃないのかな?

 君の胸の谷間を泳ぐには、相当、息を止めていないといけないからね。

 僕じゃ、窒息してしまうよ。」

これを見ていた心優しい魔女が、王子様に忠言します。

「王子様、この世には、どんなに引き離そうとしても離すことのできない、

 運命の相手と言うのがいるものでございます。

 このままでは王子様は、そんな相手を見逃してしまうか……、

 逆に嫌われておしまいになる……。

 もう少し、熟慮くださるよう、お願い申し上げます。」

「ああ、いい!私に運命の相手などおらん!必要もない!

 見てみろ。あの女どもを!

 あれの中に運命の相手がいると?

 本当にそう思うか!」

王子様は右手でバサッとマントを跳ね上げると、玉座から下りて行きます。

「王子!運命の相手は必ずいらっしゃいます!」

魔女が叫びます。

「私に運命の相手がいるだと?」

王子は振り返って魔女を見上げます。

「いるわけがないだろう。」

王子様はそう吐き捨て、供を連れて狩りに出かけます。

その後ろ姿を見送り、魔女が深い溜め息をつきました。



王子様の行動はさらにエスカレートしていきます。

王子様に会いに来た姫君達には目もくれず、供と共に狩り三昧の日々。

そんな王子様に腹を立てたのは、姫君達だけではありませんでした。

森の……王が怒ったのです。

自分の苛立ちを発散させる為の狩りに、森の王の怒号が飛びます。

「なぜ、私の森を荒らす!」

「荒らしてなどいない!これは貴族のたしなみだ!」

「たしなみだと?ふざけるな!

 お前のせいで、小鳥たちは鳴くのを止め、

 動物たちは震えて暮らしておる……。

 樹々はひっそりと佇み、お前に動物たちが射抜かれないのを願っている。」

「知るか!そんなこと!」

「お前にはわからないのか、森の嘆きが。」

「そんなもの、わかるものか!」

王子様の叫びと共に、青かった空が渦を描いて暗くなっていきます。

「口で言って分からぬ者には、身をもって体験してもらおうか!」

森の王の声が響き渡ります。

どす黒い雲が空を埋め尽くし、一筋の雷が、王子様の上に振りかかります。

「うわぁっ~!」

王子様の肌は燃えるように熱くなり、体は割れんばかりに痛みます。

「な、なにを……。」

王子様の姿はみるみる形を変え……。

「お前も獣の気持ちを知るがいい!」

森の王の声が王子様に突き刺さります。

そこへ、誰かが叫びます。

「王子様!」

王子様は軋む体を捻って、振り返ります。

「運命の相手に巡り合い、愛し合えたなら、この呪いは解ける!」

叫んだ声の主は心優しい魔女でした。

魔女の持った杖から、細い一筋の光が、王子に向かって伸びて行きます。

その光が王子様に届くと、また、森の王の声が響きます。

「この者に、その相手がわかるものか。」

「わかります!本当は、心優しい人なのです!」

「ならば、見せてみろ。あの姿で、誰があの者を愛してくれると言う?」

魔女は王子様の前に行き、そっと王子様の毛むくじゃらの手を取ります。

「王子様……本当の愛、運命の相手は……きっとやってきます。」

王子様は自分の手を見つめると、グッと握り込みました。

自分が……どんな姿になっているのか、想像するだけで身震いします。

「王子様は、見た目の美しさで姫君達を判断しませんでした。

 そんな王子様に相応しい相手が……いつかきっとやってきてくれます……。」

王子様は魔女を見つめ、ついで、城を見上げます。

森の王の力によって、城は茨に埋め尽くされ、とても元の城とは思えません。

「私の魔力も、今の力で使い切ってしまったようです。

 私は戻らねばなりません。王子様が運命の相手に巡り合えたなら、その時に……。」

魔女の姿はスッと消え、黒かった空が青空に戻っていきます。

王子は自分の手足を見つめ、本当に自分の体なのか、確認するようにゆっくりと動かします。

毛むくじゃらな体。

伸びた爪。

きっと顔も……。

王子様は空に向かって叫びます。

その声は、オオカミの遠吠えのように、国中に響き渡りました。










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