「テ・アゲロ」
テ・アゲロ the twins (5人)

テ・アゲロ  the twins ⑧ -10-

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大野は欠伸を噛み殺しながら事務所のドアを開ける。

「はよ~。」

噛み殺しても噛み殺しても、欠伸は次々やってくる。

朝はいつものホテルからここへ直行だ。

自分のデスクにつき、ドサッと椅子の背に体重を預ける。

若干、腰がだるい。

二宮は、そんな大野に挨拶もせず、パソコンに目を向けたまま言う。

「……今日は午後から出張です。」

「……出張?」

大野は眠気眼で二宮を見る。

「そうです。」

「どこへ?」

「……山梨へ。」

「……山梨?あの叔父さん探しの?」

「そうです。今、チケットも取りました。有岡と一緒です。」

「……有岡?おいおい、いくら何でも客を呼び捨ては……。」

「いいんです!」

喰い気味にそう言う二宮の目は冷たい。

「なんか……あったのか?」

遠慮がちに大野が聞く。

「別に……。」

「……あったんだな?」

二宮は答えず、プリンターに手を伸ばす。

大野はニヤリとほくそ笑む。

「何があったのかなぁ?ニノちゃん。」

「キモいから。」

二宮は吐き捨てるようにそう言って、大野にプリントした紙を手渡す。

「新幹線の時間と目的地。駅からはバスですね。

 有岡が一緒だから迷うことはないでしょう。」

「ニノちゃんは行かないの~?有岡が喜びそうじゃん。」

二宮は大野の言葉を無視して、パソコンに視線を向ける。

「ははぁ~、迫られちゃった?チューとか……されちゃったか?」

面白そうにしゃべり続ける大野に向かって、二宮のボールペンが飛ぶ。

サッとかわした大野は、ニヤニヤが止まらない。

「されちゃったのかぁ。じゃ、告(こく)られた?

 告られたんなら、ニノが行った方がいいんじゃないの~?

 二人して実家帰って、ついでに継いじゃって……。」

大野の言葉を遮るように、2本目のボールペンが飛ぶ。

それも右にかわし、大野が二宮を見ると、二宮は下目遣いで大野を見下す。

「いいんですか?私がこの事務所、辞めても?

 私がいなくなったら、あっという間につぶれますからね。

 あなたは露頭に迷うことになる!

 それに、キスなんてされてませんから!

 私がそんな隙を見せるはずないでしょ!」

二宮が一気に捲し立てると、ニヤニヤ笑っていた大野が、フッと真剣な顔になる。

「いいぜ。ここ辞めても。ニノが幸せになるんだったら。」

「大野さん……。」

二宮の顔が、びっくりしたように固まる。

「相葉ちゃん達は俺が見てるから。なぁに、俺一人でもなんとかやっていけるさ。

 そうだなぁ、可愛くて素直で優しい事務を雇っちゃおうかな。

 そしたら俺のやる気も違ってくるし。」

大野はふざけたようにそう言って、二宮を見つめる。

「ニノは十分苦しんだ。そろそろ……幸せになってもいいんじゃねぇか?」

二宮も真剣な表情で大野を見つめる。

「あなた……本当にばかだね。他人(ひと)の幸せより、自分の幸せ考えろよ。

 あなたこそいいんですか?私に付き合って、こんな事務所まで開いて……。」

「俺は結構、この生活を楽しんでるさ。依頼もいろいろあっておもしろい。

 まぁ……面倒なのもあるけどな?」

「私だって……結構、この生活が気に入ってるんです。」

「この貧乏事務所の生活が?」

「そうですねぇ、大野さんが、もうちょっと稼いでくれるといいんですけど……。」

「バカ言え。俺は十分働いてるわ!」

「その稼いだ金を使っちゃうのも大野さんですけどね?」

「た、大したことねぇぞ?」

大野の声が引き気味になる。

「ラジコン……釣り道具……絵の具……。」

「や、役に立つこともあるんじゃね?」

「そうですねぇ。ありましたねぇ。そうんなことも。」

「だろ?」

「でも……足りません!さっさと出張の準備してください!」

二宮は人差し指を立て、ピッとドアを指さす。

「ニノ~!」

大野は叫ぶと同時に不満そうに口を尖らす。

「毎日朝と夜の8時に定時、いれてくださいね。

 遊んでばっかじゃダメですからね!」

「てかさ、なんで山梨行くの?叔父さん見つかったのに。」

ぶつくさ言う大野を、二宮は横目で見ながらパソコンを叩く。

「お母さんに連れ戻されそうなんですって。

 それをなんとか阻止して欲しいと……。これも依頼です。」

「だからさ、付き合ってる奴、連れてくのが一番なんじゃね?」

「そいつを連れてけないから、あなたが行くんですよ。」

「なんで?」

「相手……歌手志望で、まぁ……ヒモです。」

「ヒモ!?」

「そんなやつ連れていけないでしょ?別れて田舎に戻れって言われても仕方ない。

 だから、大野さんが彼氏のふりして上手くごまかしてきてください。」

大野は、またかと言うように、天井を仰ぎ見る。

「ほら、急がないと新幹線に間に合わなくなりますよ。

 有岡とはホームで待ち合わせです。急いで!」

二宮に一瞥され、大野は仕方なく立ち上がる。

「わかったよ。行ってくるよぉ。」

のろのろと出入り口に向かう大野を、二宮が呼び留める。

「ああ、そうそう……迫られないように気を付けて。」

ニコッと笑う二宮はそれを期待しているようで、大野は、ケッと小さくつぶやく。

「迫られてもいいんですけど……、櫻井さんに怒られちゃうからなぁ。」

二宮が面白そうにクスクス笑う。

「関係ねぇだろ?」

「だから、大野さんも……自分の幸せ考えてくださいってことです。」

「ばか。」

大野は二宮の頭を軽く小突く。

「変な気を回すな。行って来る。」

「いってらっしゃい。」

二宮は、目を細めて見送った。










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