Your Eyes(やま)

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動けないおいらの顔をじっと見て、櫻井君の大きな瞳がクルクル回る。

「大丈夫そうですね?じゃ、シャワー、浴びてきてください。」

「シャ、シャワー!?」

おいらが身の危険を感じで飛び退くと、櫻井君がクスクス笑う。

「だから、取って喰いやしないって言ったのに。」

櫻井君は立ち上がると、箪笥を開ける。

「これ、新品のパンツです。バスタオルは脱衣所にあるの、使ってください。」

「さ、櫻井君……?」

おいらはベッドの端で、小さくなったまま、櫻井君を目で追う。

「ほら、さっぱりしてきてください。

 飲んでるし、吐いたし、気持ち悪いでしょ?

 シャワー浴びれば、酔いもさめるだろうし。」

櫻井君が楽しそうに、おいらの腕を引っ張る。

確かに……。

シャワー浴びて、酔いがさめたら、少しはちゃんと考えられるか?

おいらは引っ張られるまま、ベッドから下り、立ち上がる。

両足はしゃんとしてる。

だいぶ酔いもさめてきたか?

櫻井君はおいらにグレーのパンツを押し付けて、クルッとおいらの体を回すと、

バスルームに押しやる。

「さ、櫻井君!」

「ちゃんと酔いをさましてくださいよ?

 酔ってたから……なんて言い訳、聞きたくありませんから!」

ポンとおいらの背を押し、脱衣所のドアを閉める。

一人にされて、どうしようかと考えたが、

考えてもこの状況がどうにかなるとも思えなくて……。

取りあえず、シャワーを浴びることにした。

そうだ。熱いシャワーを浴びて、冷静に考えよう。

冷静に……。

手触りのいいパジャマを脱いで、勢いよくバスルームに入った。



シャワーを浴びて酔いが覚めてくると、いろいろと見えてくる。

まずは櫻井君だが、おいらを好きだなんて、勘違いも甚だしい。

初めての仕事に面白さを感じ、取引先の担当であるおいらのことを考える内に、

大勘違いをしてしまったと言うのが、本当のところではなかろうか。

第一、常識的に考えて、男同士、15の歳の差は恋愛対象とは考えにくい。

櫻井君がどう見てもモテない、どうしょうもない男ならまだしも、

誰が見てもイケメンのピッチピチの若者だ。

100歳のばあさんだって、うちの曾孫の婿に、とか、

私が後80歳若ければ、などと言って、にこにこ笑って寄ってくるに違いない。

それを、何を好んでこんなうだつの上がらないおいらなんか……。

おいらが綺麗だって?

そりゃ、たまには鏡を見て、

おっ!この角度、結構男前じゃないか?

などと考えることもあるが、おいらをイケメンだと言ってくれるのは、

小さい頃から面倒見てくれてる実家の隣のおばちゃんと、母ちゃんくらいのもんだ。

彼女がいたことも、もちろんあったが、高校時代の彼女には、

「何か違う。」

と言われ、

大学時代の彼女には、趣味に没頭するあまり、呆れられ、

社会人になってできた彼女には、釣りに行って、丸二日連絡が取れないのを最後に、

二度と会うことがなくなった。

しかたがないだろ?

船の上じゃ携帯は繋がらないし、まさか、丸一日釣り続けるなんて、

おいらだって思ってなかったんだから。

もちろん、下船してから、死んだように眠って……。

起きて、彼女からの十数回の着信を見て、急いで電話したけど……。

すでに着信拒否されていたようで……。

そんなおいらが、キラッキラの櫻井君に惚れられるわけがない。

まして、男だ!

ありえない!

そうだ、きっと勘違いだ!

そうに決まってる。

おいらは何度もそう繰り返し、さっぱりした頭で、パジャマに着替える。

そうとわかれば、どう櫻井君にわかってもらうかが問題だが……。

あの目で見つめられると、考えられなくなるからな……。

目を見ないようにして、慎重に話をしよう。

おいらは一人うなずき、脱衣所のドアを開ける。

「あ、もう出たんですか?さっぱりしました?」

櫻井君はソファーに座って寛いでいる。

上下紺のラフな部屋着に着替えた櫻井君は、いつも以上にさわやかだ。

「ああ、おかげでさっぱりしたよ。ありがとう。」

パスタオルで髪を拭き、床に胡坐を掻く。

おいらを見つめる櫻井君は、クシャッと顔を崩して笑う。

「前髪の落ちた大野さん、可愛いですね。」

か、可愛いだと~?

一気に恥ずかしさが込み上げてくる。

髪を拭きながら、下を向き、赤くなった顔を隠す。

何を振り回されているんだ。

おいらの方が15も先輩だぞ!

し、失礼じゃないかと、ここは怒るところだ!

「そうやって、赤くなるのを隠すのも……可愛い。」

櫻井君の声が近づいて、低い声が耳元から聞こえ、ギクッとする。

「さ、櫻井君!」

慌てて耳を隠し振り返ると、櫻井君がクスッと笑う。

しまった!

顔を見ちゃいけなかったのに……。

目の前で、大きな瞳がおいらを捉え、赤い唇がおいらを呼ぶ。

「大野さん……。」

黒い瞳がおいらを見つめる。

真っ直ぐで、キラキラした目が、おいらに近づき……。

後、3センチのところで止まった。










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