Your Eyes(やま)

Your Eyes ③

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櫻井君は、話上手で会話も巧み。

おじさんのおいらでも、楽しく会話を進めてくれる。

営業にはもってこい。

真摯な視線も、真面目そうな話し方も、誰からも好感を持たれる好青年。

言葉少なに返事するおいらに、目尻を下げて笑うイケメンは、笑い方も大きくて、

15歳も歳の差があると言うことを、忘れるほどに会話が弾む。

くったくない笑い方は清々しく、そんな若者らしさの折を縫って、

イケメンの微笑みを右頬に感じ、なす術なく焼酎をチビリチビリやるおいら。

そんなおいらを横から真っすぐ見つめる視線。

怖くて右側が見れない。

視線がぶつかったら、最初に会った時みたいに、目が離せなくなりそうで……。

おいらの焼酎は思いの外、進む。



おいらとの飲みは、それなりに楽しかったらしく、次回の予約を迫られた。

仕方なく、来週の今日、木曜日を指定する。

櫻井君は満足そうに手帳に書き込むと、手を振って帰って行く。

こんなおじさんと話して、何が楽しかったのか……。

おいらも手帳に書き込んで……。

櫻井君とは逆方向の電車のホームへ、千鳥足で向かう。

飲み過ぎたな……と思うのに、若者との会話は、おいらにとっても楽しかったらしく、

真っ直ぐ見つめる櫻井君を想い出しては、頬が緩んだ。



それから毎週木曜日は、櫻井君と飲みに行く日になった。

櫻井君も当たり前のように、木曜日にラインをくれる。

おじさんにラインは難しい。

それを櫻井君が丁寧に教えてくれた。

ダウンロードも、初期設定も、おいらでもわかるくらい丁寧に。

『今日は少し遅くなりそうです。先にやっててください。』

櫻井君からのライン。

店も、最初に行ったママの店が一軒目の定番で。

おいらのボトルは、櫻井君と行くようになってから、すでに3本目だ。

そうか、遅くなるのかぁ……。

ちょっとがっかりしている自分に苦笑する。

いつの間にか、おいらの方が楽しみにしてる?

最近の若者は彼女を作るのがめんどくさいらしいから、

おじさんの相手がちょうどいいのかもしれない。

久しぶりに、少し一人で飲むか……。

おいらはいつもの時間に店に行き、いつもの席に腰を下ろす。

ママも、慣れたもんで、おいらが席に着くと、すぐにボトルを出してくれる。

「あら、今日は坊やは一緒じゃないの?」

ママからしたら坊やか……。

それくらい、初々しくて可愛いってことだ。

おいらは笑って、自分用の焼酎を作り、チビリと舐める。

少し濃い目に作った焼酎は、キムチによく合う。

櫻井君は辛い物が苦手だから、一緒にいる時は、辛い物は控えてる……。

久しぶりの一人を満喫……と思ったが、右側がちょっと物足りない。

「なんだか、一人だと寂しそう?」

日本語の上手なママが、ふふっと笑う。

「そうか?前はずっと一人で来てなかったっけ……?」

「その頃は、片側の温もりを知らなかったでしょ?」

意味深に笑うママ。

ほんと、日本語が上手で困る。

「そんなものかぁ?」

「坊やの熱は、太陽並み。」

クスッと笑って、他の客に呼ばれて行く。

太陽みたいな熱い視線……。

まだ右側を向けないおいらは、その視線を直視できない。

直視したら……。

おいらは焼酎を口に含む。

濃い目に作ったはずが、薄く感じる。

分量を間違えたか?

それでもそのまま飲み続け、グラスが半分位になった頃、元気な声が聞こえてきた。

「遅くなりました~。」

顔を上げると、櫻井君のはちきれんばかりの笑顔。

おいらも、ふふっと笑顔になる。

「お待たせしてしまって……。」

櫻井君が隣に座り、おしぼりで手を拭く。

綺麗な手は、張りと艶で輝いてる。

いつものように、櫻井君の焼酎もおいらが作る。

おいらの手だって、まだ張りも……、艶はちょっとなくなってる?

手の甲を隠し気味に焼酎を櫻井君の前に出す。

「なんですか?その置き方?腕釣りそうですよ?」

櫻井君が笑う。

「ははは、ちょっとね……。」

櫻井君のグラスにおいらのグラスを当てて、カチンと音をさせる。

氷の解けてる焼酎はさらに薄くなってて……。

口に含んで首を傾げる。

「あれ……?」

「どうしたんですか?」

櫻井君も首を傾げる。

「いや……。」

おいらは舌で唇を舐める。

おかしい……。

さっきまで薄かった焼酎が、氷が解けたのに、濃くなってる……。

不思議に思って隣を見ると、おいらを見つめる熱視線……。

ドキッとして、慌てて視線を外す。

「なんかね、ちょっと味が変わったような……。」

どれ?と櫻井君がおいらのグラスを掴む。

おいらの焼酎をグビッと飲んで、ニコッと笑う。

え……あ……間接キス……なんて、若者は考えないか?

「大丈夫です。いつもの味です。」

上唇をペロッと舐めて、頬を染める櫻井君。

「あ……櫻井君のより濃いかも……。」

おいらが頬を見ているのがわかったのか、櫻井君が恥ずかしそうに下を向く。

「そ、そうですね。いつもよりは濃いかも……。」

すぐに視線を上げて、おいらを見つめる櫻井君に、ドキッとする。

おいらを射抜くつぶらな瞳。

ああ、右側は見ちゃいけなかったのに……。

視線を逸らせず、ドキドキしながら、焼酎のグラスを掴む。

「どうしました?もう酔っちゃいました?」

首を傾げた櫻井君の手が、おいらの頬に伸びる。

おいらは……、その手を跳ね除ける。

あの手に触れられたら、お終いだ。

そう、おいらの中の警告音が鳴り響く。

もう視線を外せなくなってる。

後はもう……。










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