Your Eyes(やま)

Your Eyes ①

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おいらを見つめる視線にドキッとする。

純粋で、ひたむきな……意思の強そうな視線。

「今回から、僕が担当になりました。櫻井です。

 よろしくお願いします。」

名刺を差し出し、受け取ると、丁寧に下げる頭。

「あ、はい……。」

おいらも同じく頭を下げる。

一緒に来ていた今までの担当が、苦笑いしながら頭を掻く。

取引先の担当が新人……。

長い付き合いだから、心配はしてないけど、

ウチは結構大きな取引相手のはず。

きっと、この新人も期待されてる子なんだろうな。

上げた瞳に、未知の期待が膨らんで、キラキラしてる。

「いやぁ、ウチの期待の新人です。よろしくお願いしますよ。」

「はぁ……。」

おいらも頭を掻いて新人を見る。

「ではまず御社の……。」

テキパキと説明を始める櫻井君。

でも、まずはおいらにも挨拶させてよ。

キラキラした瞳の櫻井君は、おいらに挨拶をさせてはくれず、

資料を開いて、真っ直ぐな瞳でおいらを見つめた。

キラキラが眩しくて……。

おいらがそっと視線を外したことに、櫻井君は気づかず、説明を続ける。



それから、三日と空けず、櫻井君はやってきた。

大学卒業したての新人?

ピッチピチの櫻井君は、真面目で誠実で、話し方も頭が良さそう。

「じゃ……、それでお願いします。」

「こちらでいいですか?私的には、こっちも捨てがたいんですが……。」

櫻井君は持っていた別の資料を指さす。

「そうだねぇ。それもいいよねぇ。

 でも、今回のターゲットが40代の独身女性だからねぇ。

 きっとこっちの方がしっくりくるよ。」

おいらは笑って、最初の資料を手に取った。

「はぁ……なるほど。勉強になります。」

櫻井君は真摯に頭を下げる。

おいらより……20は若いか?

「櫻井君は……新卒?」

「はい。今年の新卒ですが……。」

櫻井君の顔が曇る。

「やはり、私では不安でしょうか?」

「そんなことはないよ。ウチの新卒より、ずっと頼りがいがある。」

おいらは資料を置いて、櫻井君に目を向ける。

整った顔立ち。

頭の良さそうな額。

でも、どこか子供っぽさの残る頬。

「どうしたんですか?……私の顔に何か付いてますか?」

櫻井君が、自分の頬を撫でる。

「いや、おいら……僕より、20は若いなぁと思って。」

ふふっと笑うと、櫻井君も笑みを返す。

「そんなに違いますか?大野さんは、そんな歳には見えません。」

「へぇ~、幾つ位に見えてるの?」

「……30位ですか?」

取引先だから、サバを読んで答えてくれてるんだろうけど、

それはサバの読み過ぎだろ?

「ははは。そんなに若く見える?

 あんまりベテラン感がないのかな?

 もうすぐあらふぉーのおじさんだよ。」

本当にびっくりした顔の櫻井君に、おいらもちょっと気分が良くなる。

「あ、そういう意味では……。本当にびっくりしてるんです。

 ウチの会社には、大野さんみたいな40歳はいません。」

「ふふふ。きっとみんなできる人なんだね。

 僕は……パキパキこなすのは苦手だから……。」

「そんなことはありません。大野さんにはいろいろ教えてもらってます。」

「そう?あんまり教えることもないけど。櫻井君、勉強熱心だから。」

「いえ、本当に、勉強させてもらってます……。もっと……。」

櫻井君が言いよどんで、おいらから視線を外す。

あれ?

櫻井君から視線を外すのは……初めてかも?

「どうしたの?」

「いえ……なんでもないです。」

「言ってよ。気になるじゃない。」

いつも、視線を外すのはおいらだから、

ちょっと上手に出れたみたいで、楽しくなる。

「…………。」

やっぱり躊躇する櫻井君。

何だろう?

何が言いたい?

「もっと……いろいろ……話してみたい……思っ……す……。」

珍しく、語尾が段々小さくなる。

話してみたい?

おいらと?

このキラキラの目の青年が?

「僕みたいなおじさんとしゃべっても、身になることは何もないよ?

 それ以上に、話もうまくないし、しゃべんないし……。」

「でも……興味……あ、いえ、悪い意味じゃなくて……あります……。」

つぶらな瞳がおいらを見据える。

真っ直ぐで、迷いがないその瞳が、おいらを捉えて離さない。

ゴクッと唾を飲む。

なぜだろう。

目が逸らせない。

逸らせないどころか……引き込まれる。

大きな瞳に……。

「じゃ……飲みにでも……行ってみる?」

逸らせないまま、そんなことを口走る。

まずい……。

なぜかそう思って、慌てて首を振る。

「ああ、ごめんね。今のは忘れて。僕じゃ、君と一緒に行っても大した話はできないし。」

「いえ、そんなことは……。ぜひ、ご一緒させてください。

 もちろん、プライベートです。接待とかではなく……。

 それでもいいですか?」

つぶらな瞳は、逸らすことを拒否する。

「いいけど……おいらの立場じゃ、櫻井君の喜ぶような話はできないよ。」

「だから言ってるじゃないですか。プライベートでお願いしますって。」

櫻井君の顔から、笑顔が零れる。

細くなる視線の先は、やっぱりおいらの顔で……。

おいらは仕方なく頷いて、言われるままにスケジュール帳に日付を書き込む。










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