「ふたりのカタチ」
ふたりのカタチ(やま)【121~140】

ふたりのカタチ (138)

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おいら達は奥さんに促され、類さんちにお邪魔する。

前のおいら達の部屋とは左右対称の類さんち。

なんか、ちょっと変な感じ。

「座って。すぐにお茶淹れるから。」

奥さんがキッチンに向かう。

「あ、お気遣いなく。すぐにお暇(いとま)しますから……。」

ショウ君がソファーの手前で奥さんに声を掛ける。

奥さんはちょっと振り返って、にっこり笑うと、そのままキッチンへ。

「手伝うね。」

おいらは類さんとショウ君の前を通って、奥さんを追う。

あの二人を二人っきりにしても大丈夫か、ちょっと気になったけど、

それよりもおいらは奥さんの方が気になって……。

さっきの様子だと、おいらのことも知ってる?

知らないなら、何も言わない方がいいと思ったけど、知ってるなら……。

ちゃんと謝らないと……。

「あ、紅茶でいい?コーヒーの方がいいかな?」

奥さんが、ティーカップを出しながら、おいらに聞く。

「どっちでも……。」

自分ちのキッチンじゃないから、何をしていいかわかんなくて、

奥さんの隣に並ぶ。

「座ってて。」

「おいらも久しぶりに奥さんとお話したいから。」

おいらが笑うと、奥さんも照れたように笑う。

「じゃ、この紅茶、淹れてくれる?」

「うん。」

奥さんは相変わらず気さくな感じで、ティーカップにお湯を注いでいく。

おいらも手渡されたスプーンで紅茶の葉を掬っていく。

「仕事が一緒なんだって?びっくりした。」

「おいらも。」

ティーポットに紅茶の葉を入れ、葉の缶を閉める。

「いろいろ……類さんに迷惑かけちゃって……ごめんなさい。」

「迷惑かけたのはこっちでしょ?

 ……ウチのはああいう人だから……。」

奥さんがリビングの類さんに目をやる。

「家でもやたら大野さんの話をするから……気になってはいたの。」

「…………。」

おいらは紅茶の缶を握り締める。

「でもまさか、男の人にまでなんて……。」

奥さんがおいらに向き直る。

「本当にごめんなさい。」

おいらを見上げる奥さんは本当に申し訳なさそうで……。

「あ、謝るのはおいらの方で……。

 奥さんがいるのに、おいら……。」

奥さんは優しく笑っておいらを見上げる。

「あの人ね、好きになったら一途って言うか、一直線で。

 自分の気持ちを隠したり、ごまかしたりしないから……。」

おいらはどんな顔していいかわからない。

「自分にも自信がある。自然体で、やりたいことだけやってきたから……。」

奥さんがクスッと笑う。

「そんなところも魅力的でしょ?」

おいらはうなずいて、リビングの類さんを見る。

たぶん、大抵の女の人は類さんを好きになる。

それくらい魅力的。

見た目も、物腰の柔らかさも、大人な知的さも、純粋な子供っぽさも。

「付き合ってる時も、それが原因で何度も別れた。

 別れても……、私が一番好きなのはやっぱり類で……。

 どうすればいいのかジレンマで……。

 ケンカして別れて、よりを戻して……。

 それを繰り返してた。」

「奥さん……。」

おいらは申し訳なさで胸がギュッとする。

「でも、やっぱり私には類だなって思うの。

 なら、そんな類を受け入れないと一緒にいられないじゃない?

 そう思って……、結婚したの。

 あいつと結婚できるのなんて、私くらいしかいないし。」

奥さんがふざけた調子でそう言って、ティーポットにお湯を注ぐ。

「だから、ウチはいいんだけど……、大野さんには迷惑かけちゃったでしょ?

 ごめんね。」

おいらは大きく首を振る。

「謝るのはおいらの方だから……。

 おいらがもっとちゃんと……考えてれば……。」

「それをさせないのも……あいつの上手いとこなの。」

奥さんがからかうように笑う。

奥さんの広い心に涙が出る。

こんないい人が奥さんで……。

「そんな顔しないで。大野さんが魅力的なのを誰にも止められないでしょ?

 あいつが好きになるのもしょうがない……。

 私だって、大野さん、好きだもん。」

「奥さん……。」

「それに……。」

奥さんはティーポットを手にして、トレイに乗ったカップに紅茶を注いでいく。

「あいつは絶対私のところに戻って来るから。」

奥さんの自信に満ちた顔にドキリとする。

「あいつを一番知ってるのも、一番好きなのも、私だから。」

紅茶の入ったトレイを持って、ニコッと笑う。

「大野さんだってそうでしょ?櫻井さんを一番知ってて、一番大好き。」

おいらは深くうなずいて、リビングのショウ君を見る。

「それがわかってれば大丈夫。櫻井さんだって同じでしょ?」

「おいらも……、奥さんみたいになれるかな?」

奥さんが声を上げて笑う。

「そんな必要ないでしょ?だって、櫻井さん、大野さん一筋じゃない!」

奥さんもショウ君を見つめる。

「見てるだけで、好きが溢れてるの、わかるもん。」

「奥さん……。」

おいらはちょっと恥ずかしくなって、ショウ君から目を逸らす。

「だから、悪いことしちゃったなって思う。

 これが、どうしようもない女だったら、私だって、こんな態度じゃないのよ?」

「奥さんは……本当に素敵です。」

おいらは心の底からそう思って、奥さんを見つめる。

「ぃやん。そんな顔で見つめられたら、私が浮気したくなっちゃう!」

「お、奥さん……。」

奥さんはケラケラと笑って、おいらの背を押す。

「ほら、行こ?あの二人が大人しく話してるとは思えない。

 バチバチしてるかもしれないから!」

奥さんに促されて、ミルクとお砂糖を持ってリビングに向かう。

「ごめんね。レモン、切らしてて。」

「大丈夫。おいらもショウ君もレモン入れないから。」

二人並んでリビングに行くと、ショウ君と類さんが笑いながら話してたけど……。

……やっぱり空気はピリピリしてて……。










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