「短編」
短編(いろいろ)

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「翔君さぁ……いつからだっけ?」

「……何が?」

ドクンと波打つ心臓の音を智君に悟られないよう、俺は平静を装って答える。

「……俺の周りぃ……管理しだしたの。」

「……スケジュール管理は……マネージャーがやってるでしょ。

 俺はそれを聞いて把握するだけ。」

智君がクスッと笑う。

「違う違う。」

軽く顔を横に振る。

「俺の……プラベの管理。」

ニコッと笑う智君に、ギクッと肩が上がる。

「そんなのするわけ……。」

「してるじゃん。」

智君の半分閉じた目がキラリと光る。

「周りに寄って来る女の子……次々、声掛けてるでしょ?」

「そんなこと……。」

俺は智君から顔を背け、起こした肩から手を離す。

智君に背を向けながら、息を大きく吐く。

「俺に寄って来る女なんてそんなにいないけど、今度会おうって約束すると、

 大抵、ごめんって連絡が来る。二人っきりは確実に。二人っきりじゃなくても……。」

「…………。」

席に戻り、ゆっくり焼酎を飲む。

ドクドク言う心臓は、さらに音を上げる。

「そりゃそうだよね。俺と関わると面倒も一緒にしょい込む。

 だから仕方ないかって、最初は思ってた。」

智君は体を横にしながら、グラスを揺らす。

「でも、女の子だけじゃないんだよ。芸人さんでも、俳優さんでも……。

 大道具さんでも。」

チラッと俺を見て、グラスを口へ運ぶ。

「俺と約束すると、ほとんど反故になる。

 どうしてなんだろうね?」

智君の赤い舌が、唇をペロッと舐める。

「……みんな、忙しいんだよ……。

 それに……智君が言うように、俺らに関わると面倒もしょい込む。

 それを考えると……みんな躊躇するんじゃないかな?」

俺もグラスを口に付け、目だけで智君を見る。

智君は、んふふと笑って、グラスをテーブルに置く。

半分隠れる智君の顔。

「そうだよね……俺らに関わるとろくなことがない……。」

智君はうつ伏せになって、上半身だけ起こす。

そうだよ。智君。

俺らは俺らで身を守る。

周りだって同じ。

みんな自分が可愛い。

気があるのかないのかわからない智君より、

グイグイ攻めてくる俺を、断る女なんてそうそういない。

そんな女ばっかり相手にするからだよ。

男だって、もっといい相手をあてがってやれば、みんなそっちにホイホイ行く。

「今日、最初に約束した女の子……。

 翔君と一緒にいるとこ見たんだ。」

「え?……誰のことだろ……。」

俺は考えるふりをする。

それで智君をごまかせるなんて思ってない。

けど、それ以外にリアクションできない。

「その次の後輩。翔君と仲の良い後輩から誘われたって。

 後輩からしたら、先輩だからね。俺に無理に来てもらうより、

 誘ってくれる先輩を立てるよね?」

そりゃそうだよ。全く下心のない人間なんていない。

先輩とは仲良くするに越したことはない。

智君が忙しそうなら、無理をさせるのも悪い……。

「ね……いつからやってんの?」

いつからなんて……覚えてない。

最初はただのヤキモチ……。

俺はマネージャーと一緒じゃなきゃ、智君と一緒にいられない。

なのに、こいつらはって。

そのうち、義務感も生まれてくる。

俺が智君を守ってる。

智君は無防備だから……。

ほら、今だって……。

しどけなく、横たわって腕を枕にする智君。

緩んだTシャツの襟元、捲れたTシャツの裾……。

「なんでやってんの?」

智君の目が、意味深に歪む。

なんでかなんて……。

わかってるであろう智君はクスクスと笑い出す。

お酒のせいか、俺のしてることをあざ笑ってるのか……。

笑われたって構うもんか。

俺が智君を守らなきゃ、誰が守る?

女でも、先輩でも、後輩でも、使える物はなんでも使う。

時には仕事だって……。

「翔君はぁ……俺をどうしたいの?」

「どうって……、このまま何事もなく、一緒に仕事を続けられれば……。」

「違うでしょ……?」

智君の目が……誘ってるようで……。

俺は生唾を飲む。

「智君……。」

違う。

智君は誘ってるわけじゃない。

ただ酔ってるだけ……。

だから、俺は心配で……。

こんな智君に会って、何も感じない人間なんているわけないから……。

「俺達なら……翔君のする、いろんな心配が必要ないんじゃない……?」

「それ……どういう……。」

智君が俺を見つめる。

俺の中がグルグルと回り始める。

ぐちゃぐちゃになって、いっぱいいっぱいで……。

俺も酔ってる?

今、俺が動けば……智君は応えてくれる?

手を伸ばせば……。

間にあるテーブルが遠い。

テーブルの向こう側、ほら、俺を見つめる智君の方へ……。

今……。

ダメだ……。ダメだ。

俺は智君を守ろうと思ってるのに、その俺が……。

俺は伸ばしかけた手をぎゅっと握り込む。

「イチャイチャ……したくないの?」

智君が、んふふっと笑う。

笑う顔が……俺を捉えて……。

「今は……まだダメ?」

智君が上唇をペロッと舐める。

俺はうなずいて……握り込んだ手にグラスを握らせる。

「翔君……それじゃ、100年後も1000年後もダメのままだよ?」

クスクス笑う智君が、指で唇を撫でる。

「メンバーのままがいい?それとも……。」

俺は……囁くような智君の声に……。



腕の中で微睡む智君。

温かな……気持ちよさ……。

「しょ…ぉくん……。」

智君が顔を上げる。

「スケジュール管理……これからもする?」

「……するよ。これからは当然……。」

俺は智君の頬に唇を当てる。

「んふふ、でもさ、天候まで管理するって、相当だよね?」

「え?」

「今日の時化も……翔君でしょ?

 んふふ。翔君に任せておけば間違いないね。」

……んなわけないっ!

俺を見て、安心したように笑う智君……。

さっきのも……やっぱり誘ってなかった?

酔ってただけ?

俺の中は、これからもグルグルしっぱなし……ってこと?

智君が、ペロッと上唇を舐めて、俺の頬を撫でた。

やっぱり今はまだ……。

触れ合う智君の肌に顔を埋め……その肌を……。

今は、もう……。










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