「短編」
短編(いろいろ)

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収録が終わって、智君に寄って行く。

「こんな時間からは、やっぱり止めた方がよくない?」

「うん……。遅いようなら今日は止めようって連絡があった。」

「そっか……。」

俺はホッと息をつく。

「それでも行った方がよかったかなぁ……。」

「どうして?」

「次に……いつ行けるかわかんないし。」

チラッと俺を見上げる智君。

「そんなことないよ。作れば時間なんていつでもできる。」

俺がそう言うと、智君がクスクス笑う。

「作っても……。」

俺を見ながら、意味深に笑う智君。

……何?何か言いたいことがある?

「翔君さぁ、このまま帰るの?」

「ん~?……そのつもりだけど……?」

「少し時間ある?飲みに行こうと思ってたから……、お腹空いちゃって。」

智君がお腹を撫でて困ったような顔をする。

「いいけど……明日の釣りは大丈夫?」

「明日は風が強そうだから……、ダメだろうって船長からメール来た。」

携帯を見て、面白くなさそうに小さな声で言う。

「そっか……。いいよ。ご飯くらい付き合うよ。」

智君がちょっと嬉しそうに笑う。

俺も笑う。

まさか、智君とご飯を食べに行くことになるとは思ってもなかった。

何年ぶりだろう。

智君と二人でご飯なんて。

「二人でご飯も久しぶりだね……。」

「うん……。」

何とも言えない、複雑そうな顔をする。

俺が悪いと文句を言いたげな、でも、ちょっと嬉しそうでもあるその顔は、

俺の中にも複雑な想いをチラつかせる。

お互い忙しくなっちゃったし、歳も取ったし……。

同じグループとは言え、一緒の仕事も減って来た……。

取りあえず、智君と一緒なら……この時間で個室が用意できるとこ……。

俺は携帯を開いて、画面をスクロールする。



二人一緒にマネージャーの車を降りる。

都心から少し離れた旅館の離れ。

深夜だから、少し車を走らせただけで、結構緑の多い静かな旅館。

できるなら、昼間の庭を見せてあげたかったけど……。

「旅館……?」

「近場で飲んでもよかったけど、二人だと周りを気にしなくちゃいけないから……。」

「そうだね……それも、昔とは違うね?」

智君が寂しそうに笑う。

そうだよ。

俺らはそう簡単に飲みになんかいけない。

どこで誰が見てるか、何を言われるかわからないんだから。

だから……。

遠のいた足。

辿らなくなった二人の時間。

それは仕方がないんだよ。

でもね……。

「でも、俺らだったら、何言われても大丈夫じゃね?」

智君が笑いながら、離れに向かって歩いてく。

俺が取った離れは、玄関に灯りが灯り、俺達を導いてくれる。

「そうだけど……念には念をね?」

智君がクスクスと笑う。

「翔君らしい。」

そう、念には念を。

俺の心にも、念には念を……。

でも、たまには……、久しぶりなら……。

ドクドクと音を上げ始めた心臓を、ひた隠しにして、智君の斜め後ろを歩く。

ここからの景色。

いつも見ている智君のうなじと頬の輪郭。

好きなだけ見ていい角度……。



部屋はこじんまりとして、二人で飲むにはちょうどいい。

「わぁ~、すごい!」

古民家のような造りの、小さな部屋が二つ。

一部屋にはもうすでに料理と飲み物が用意してある。

智君がツツーっと奥まで進み、襖を開ける。

眠たくなったら寝れるように、奥に布団も用意してもらった。

さすがに、智君を担いでは帰れない。

「なんか、時代劇みたいじゃね?」

「蒲団は赤くないけどね?」

風情のある行灯風の灯りが、二つ並べられた蒲団を映し出す。

「俺ら、布団並べて寝んの?」

「ちょっと離す?」

俺が腰を屈めて、蒲団を引っ張ろうとすると、智君がその蒲団の上に立つ。

見上げると、楽しそうに笑う智君。

「俺、ここであ~れ~って回ろっか?」

「回って回って。」

俺が笑いながら、テーブルに戻ると、智君がクルクル回る。

「あ~れ~。」

「はははは。智君、テンション高っ!」

クルクル回るのを止めた智君が、俺の顔を見て、ふわりと笑う。

「翔君と一緒だから。」

そういうことを平気で言う。

だから心配なんだよ……。

気のない奴でも、その気にさせる……。

本人は全くわかってないから……。

俺が料理の前に腰かけると、智君も俺の向いで胡坐をかいて、

俺達は久しぶりに一緒に飲み始めた。

焼酎を水割りで……。

飲み進む内に、懐かしい話に華が咲く。

「あの時の翔君、可愛かったなぁ。」

「もう、昔のことだから!」

恥ずかしくなって赤面する俺を、楽しそうに見つめる智君の目はトロンとして、

俺の心拍数が上がる。

「智君は……カッコ良くて、綺麗だった……。」

「だったかぁ。過去形ってことは今は大したことないってことだ?」

「そんなことないよ。リスペクトしてるんだから。」

「ほんとかぁ?」

智君のふにゃり笑いに磨きがかかる。

染まった頬と、潤んだ瞳。

それが俺だけに向かってる。

刺身を迎える舌と、潤った赤い唇。

だらんとし出す体……。

「……今日は……予定が次々変わったけど、よかったかも。」

うふふと笑う智君。

「眠かったら寝ていいよ。その為の蒲団だから。」

「ん~……、翔君こそ寝ないと。仕事できなくなるよ?

 もうお互いいい歳なんだから。」

智君がクスクス笑い出す。

笑いながら、徐々に体が横になって行く。

「ほら、寝るなら蒲団。風邪引いたら仕事に穴が空く。」

「大丈夫……明日はオフだし……。」

そう言いながら、目は半分閉じ、口は半分開き……。

「ほら、智君……。」

智君の隣に回って、智君の肩を起こす。

ふにゃりと見上げる顔。

ドクンドクンと……鼓動が早くなって……。










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