Believe

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次の日、ガンディア公は笑顔を残して帰って行った。

その後ろ姿を、あいつが見つめる。

強い意志と切なさの混ざった顔。

何を考えてる?

僕があいつを覗き込もうとすると、あいつがそっと僕の手を握る。

「心配するな。私がなんとかする。」

なんとか……。

僕の心に不安がよぎる。



二度目に体を重ねた後、あいつが言った。

「もし私に万が一のことがあったら……、お前は私の共犯から解かれる。」

「解かれる?」

「そうだ。お前は私の共犯ではなくなる。

 だから、誰に何を聞かれても、私とのことは言ってはいけない。」

あいつは僕をじっと見て、念を押すようにうなずく。

「言うつもりはないけど……。」

「それでいい。そして、ここを出て、学んだことを活かして生きていけ。」

「ここを……出る?」

「後のことはジュンに言ってある。」

「……嫌だって……言ったら?」

あいつを見上げると、あいつは困ったように僕の頬を撫でる。

「……そんな顔をするな。」

「嫌だって言ったら?」

僕はあいつに詰め寄る。

「私に逆らうことは許さない。命令だ。お前はここを出ろ。」

「僕はあんたに命令なんかされない!」

僕は叫ぶように言う。

万が一、なんかあり得ない。

もし、そんなことになったとしても、僕にここを、あいつを捨てて生きていけなんて……。

「だったら、今この場でこの首を切れ。お前の仇を討て。」

あいつは首を伸ばして、僕に向ける。

「なんで、今そんなこと……。」

「私を憎いと思っているのだろう?なら、今がチャンスだ。

 私は身動き一つしない。お前にやられるなら天命だ。」

「…………。」

僕は、ゆっくりとあいつの首に手を掛ける。

あいつはじっと僕を見つめる。

グレーの瞳に揺らぎはない。

僕は指先に力を入れる。

あいつは僕を見て……幸せそうに微笑んだ。

ああ、僕が欲しかった笑顔。

やっと見ることのできた笑顔。

僕に笑いかけてくれる……。

僕は手を離し、あいつの首に抱き着く。

「どうした?やらないのか?」

あいつの首筋に、顔を擦りつけるように首を振る。

「あんたはずるい。僕にできないことがわかってて……。」

「ああ、そうだ。お前は優しい。真面目で頭もいい。

 だから、一人でも生きていける。」

「ずるい……そんなこと言うなんて……。」

あいつは首に縋りつく僕の頭を撫で、抱きしめるように腕を回す。

「私に万が一のことがあったらの話だ。」

僕は顔を上げ、あいつを見つめる。

「あんたをやるのは、僕だ。僕だけだ!」

あいつはクスッと笑う。

「そうだ……お前だけだ……。」

「だから……万が一なんてない!」

「ああ……そうだな……。」

「僕達は生涯共犯者だ……。神に背く、良心に背く……。」

あいつが僕の頭を肩に押し込む。

体中が重なるようにして抱き合う。

間に何も入り込めないように、ぎゅっと……。

そうだ。万が一なんて……。

僕は自分に言い聞かせる。

あいつの匂いに包まれて、ふと見ると、あいつの首の後ろに何かある。

そっと指を伸ばし、それを撫でる。

少しボコッとした、赤い……痣?

あいつが、ん?と首を動かす。

「これ……。」

僕がもう一度撫でると、あいつが、ああとうなずく。

「痣だろう?」

「見せて。」

あいつがちょっと背中を上げ、見せてくれる。

赤い、菱形の痣。

僕はびっくりして、腰にある痣を見せる。

「これ……。」

あいつはそれを見て、ひどく驚く。

同じ形の痣……。

「運命みたいだな。あそこでお前に出会ったのも、こうしているのも……。」

あいつが腰の痣を指先で撫でる。

僕もあいつの痣を撫でる。

運命……。

僕があいつに着いて行ったのも、共犯になることも……。



それから、僕とあいつは毎晩体を重ねた。

今まで抑えていた気持ちが堰を切ったように溢れ出し、

僕が寝所に行くと同時に抱き合い、絡まり合う。

過去を埋めるように、貪り合うお互いの体。

罪悪感や嫉妬と共に沸き上がる、苦しいくらいにあいつを求める僕の……。

どんなに蓋をしようとしても、一度切った堰は元には戻らない。

僕のこの気持ちは……。

「ああ……いいよ……ショウ……最高だ。」

そう言われれば、同じことを繰り返し、

「可愛いな……お前は本当に可愛い……。」

そう言われれば、はにかみながらあいつにキスする。

僕が感じれば、あいつが喜び、あいつが喜べば、僕の感覚が鋭くなる。

あいつが指を動かしただけで、開く僕の体。

あいつが囁いただけで上がる声。

あいつが微笑んだだけで、浮き立つ心。

敵だと言うことを忘れたように、罪だと言うことを忘れるように、

溺れ、繋がり、感じ合う。

そして、その後にやってくる心地よい疲労と穏やかな時間。

満たされる心と体。

これは何?

感じたことのない心地よさは、授業では教えてもらったことのない感覚。

村にいたころには想像もできなかった、あいつを知った後の僕。

でも、満たされながらも感じる不安。

いや、満たされるから感じる不安。

あいつが……いつかいなくなってしまうんじゃないかという不安……。

こんなにも僕の心はあいつで一杯になっていた。










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