Believe

Believe -13-

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ジュンの胸で泣いて、少しすっきりした。

顔を上げてジュンを見ると、ジュンが天使の笑顔で笑ってくれる。

「さ、男の子です。いつまでも泣いていては恥ずかしい。

 涙を拭いてお行きなさい。」

「うん……、ありがと。」

僕は、ジュンにお礼を言って、その場から離れた。

あいつは今頃、ガンディア公と楽しい時間を過ごしてる……。

ぎゅっと何かが胸を締め付ける。

それでも気付いてしまったものは仕方ない。

そう思って振り返ると、あいつが立っていて、ビクッとする。

じっと無表情のまま、僕を見ているその姿に、不思議と安堵の気持ちが沸いてくる。

「失礼だろう?」

あいつの声は低い。

怒っているのか?

僕がガンディア公を振り切って飛び出したから?

「わかってる……、ガンディア公に謝ってくるよ……。」

僕があいつの脇を通り過ぎようとした時、あいつが僕の腕を掴む。

振り返ってあいつを見上げると、無表情が一瞬揺らぐ。

「そうだ……、わかっているならいい……。」

「わかってる……子供じみたことをしたって……。」

僕は小さくつぶやく。

子供じみたこと……。

早く大人になりたいのに、どんなに勉強しても、僕はまだまだ子供で……。

「なぜ、お前は……。」

あいつが何か言い掛けて口をつぐむ。

僕が首を傾げると、あいつはゆっくり首を振る。

「何でもない。早く行け。」

あいつが僕の腕を離す。

僕はあいつに背を向け、早足で歩きだす。

廊下を曲がった所で、あいつに掴まれた腕に触れる。

あいつの体温、力強さがまだ残ってるようで……。

僕はその腕をぎゅっと掴んで親指で撫でる。

あいつの優しさを、その腕から探すように……。



僕が謝ると、ガンディア公は優しい笑顔で、気にしなくていいと言ってくれた。

僕にはその優しさですら、素直に受け入れられず、小さく会釈してその場を離れようとした。

すると、ガンディア公が、夕食を一緒にと言い出した。

僕は、あいつと一緒にご飯を食べたことはない。

食事はいつもジュンやメイドのみんなと一緒だ。

でも、そんなことはお構いなしに、ガンディア公は嬉しそうに僕を誘う。

「ね?いいよね?ショウ君ともっと仲良くなりたい。

 帰ったら、いつ会えるかわからないんだから。」

ガンディア公の言葉に、あいつもうなずいて僕を見る。

「ショウ、今日は一緒に……。」

仕方なく、一緒に食事をすることに同意した。

僕は、あいつが優しく微笑む顔を、食事の間中、見続けなければならなくなった。



夕食の時間。

ガンディア公は陽気に話す。

あいつとガンディア公が小さかった頃の話。

一緒に鬼ごっこしていて、そのまま寝ちゃった話を懐かしそうに話す。

近くの川で水浴びした話や、食堂からこっそりおやつを盗んだ話。

ガンディア公は楽しそうに僕に語り掛ける。

あいつは、そんなガンディア公を見て、やっぱり柔らかい顔で微笑んで……。

僕は、無理やり料理を口に押し込む。

胸がいっぱいで、なかなか入って行かない。

「どうしたの?ショウ君、具合でも悪い?」

「え……そんなこと、ありません……。」

僕は水で口の中の物を流し込む。

「具合が悪いなら、無理して食べるな。部屋へ戻れ。」

あいつが無表情で僕に言う。

僕を見るあいつの目は……いつでも無表情で……。

何も映し出さない、綺麗なグレーの瞳。

ガンディア公と同じ瞳……。

「大丈夫。食べられる……。」

僕はパンを契って口に頬張る。

すると、カズがやってきて、あいつに何か耳打ちする。

あいつは立ち上がてガンディア公を見る。

「すまない。ちょっと席を外すが……、欲しい物があったらメイドに言ってくれ。

 ジュンに言ってくれても構わない。」

「じゃ、ワインをもう少しもらおうかな。もう、僕もお腹いっぱい。」

ガンディア公がにっこり笑うと、メイドがグラスにワインを注ぐ。

あいつはガンディア公の肩を叩き、食堂を出て行く。

口の中でパサパサするパンを、水でまた流し込む。

「無理しなくていいから。……ごめんね……。」

ガンディア公が、すまなそうに眉を垂れる。

「どうして……?」

僕には謝ってる意味がわからない。

食事に誘ったことを謝ってる?

「どうして……?そうだね……羨ましかったのかな?」

ガンディア公がワインを口にする。

赤いワインが、形のいい唇を湿らせる。

「兄さんとずっと一緒にいられる君が……。」

「ガンディア公……。」

僕は驚いて言葉が続かない。

羨ましい?僕が?

「ああ、マサキでいいよ。僕もショウ君って呼んでるし。」

ガンディア公は、ワインのせいか、少し頬を染めて笑う。

「僕と兄さんが一緒に暮らしてたのは、ほんの少し。

 僕にとっても自慢の兄さんでね……、僕の憧れ……、

 ううん、僕がこの世で一番大事に想う人。」

ガンディア公は目を伏せて、ワインを置く。

睫毛の作る影が……あいつを思わせる。










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