Believe

Believe -7-

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それから2年が経った。

僕はさらに医学と気象学を学び、ピアノも……少しは弾けるようになった。

あいつは枢機卿になり、変わらず、寝所を供にした。

時折繰り返されるキスは続いていたけど、やはりそれ以上にはならず……。

僕は多感な14歳になっていた。

「ショウ様、お戻りくださいませ!」

ジュンが叫びながら追いかけてくる。

太陽の光を受けて、ジュンの巻き毛がキラキラしてる。

「戻ったら、神学の先生、変えてくれる?」

僕は走りながら振り返る。

「我が儘をおっしゃらないでください。何人目だとお思いですか?」

「知るか!僕が望んだわけじゃない。」

「でしたら……、素直に授業をお受けになってくださいっ!」

ジュンの足が止まり、はぁはぁと手を膝につく。

「ジュン!もう終わり?体力ないなぁ。」

「私は……ショウ様ほど若くはございません。」

「ジュンだって十分若いよ。もっと体を動かさないと!」

僕がにこっと笑うと、ジュンが困ったように肩を竦める。

「ああ、言い忘れておりました。今日の午後のピアノのレッスンは変更でございます。」

「……教皇様が見えるの?」

「はい。」

ジュンは無表情で答える。

僕とジュンの間には5m以上、距離がある。

「……あいつは?」

僕が怒鳴ると、ジュンが眉間に皺を寄せる。

「そんな言い方……。」

「あいつは?」

「……政務室でございます。」

「行って来る!」

僕はあいつの所へ走り出す。

「ショウ様!」

ジュンの声を背中で感じながら、僕は屋敷の裏に回る。

初めてここへ来た時、行ってはいけないと言われたあいつの仕事場。

信仰の対象ともなるだろうこの場所より、父さんの鍛冶場の方がよほど神聖に見える。

裏から屋敷に入り、あいつの仕事場のドアをノックする。

「なんだ?」

中から声がして、僕は勢いよく扉を開ける。

あいつはチラッと僕を見て、そのまま何か書き続ける。

「今の、神学の先生を変えて欲しい。」

「そんなことはジュンに言え。」

「もうこれ以上、神学は勉強する必要がない。そんな時間があるなら、

 天文学と……ピアノのレッスンを増やしたい。」

あいつは書き終えたのか、ペンを置き、僕を見据える。

「どうして?」

「僕に信仰は必要ない。」

あいつは、フンッと鼻を鳴らし、頬杖をつく。

「必要か必要ないかは私が決める。」

「なら、もう少しまともな先生を連れて来てよ。」

「まともじゃないと……?」

あいつの目が光る。

「ああ、みんなまともじゃないね。クソみたいなのばっかだ!」

「ショウ!口を慎め。」

「とにかく、神学は勉強しない。」

僕は言い捨てて、政務室の扉を開ける。

「午後も……ピアノのレッスン、するから。」

「ショウ!」

あいつが起ち上がる。

「今日は父上が来る。」

「だから?」

「…………。」

「僕の存在を……隠したい?」

「……そうだ。子供を拾ってきたなどと、父上に知られるわけにはいかない。」

「なぜ?孤児を拾って育てるなんて、いい話じゃない?」

僕はせせら笑うように、顎を上げる。

「そうだ。いい話だ。だが、そう取らない奴もいる。」

「御父上は教皇様なのに?神に一番近い人なんでしょう?

 なのに、ふしだらな……妄想をするって言うの?」

「ショウ!」

あいつが机を周って、僕の後ろにつき、扉を閉める。

「父上のことはもういい。」

「逆らえばいい!父親なんだろ?」

「そうだ。父親だからだ。」

「どうしてそんなに気を遣う?」

あいつは視線を逸らし、机に戻ろうと体の向きを変える。

「この話は終わりだ。」

「神に一番近い人が、妻以外の女を孕ませる。」

「ショウっ!」

あいつの手の平が飛ぶ。

次いで、頬に痛みが走り、顔が熱くなる。

僕は頬を押さえ、あいつを見上げる。

目に涙が溜まってくる。

驚いたせいなのか、痛さのせいなのか……、

自分でもなぜ泣いているのかわからない。

「部屋に戻れ。今日は部屋で自習だ。」

あいつが、メイドを呼ぼうとするのを、両手で遮る。

「僕は……あんたを可哀想だなんて思わない。」

あいつは無表情なまま僕を見下ろす。

「私が可哀想などと、なぜ思う?」

「思ってない!」

「私は恵まれている。この歳で枢機卿だ。

 妬(ねた)まれこそすれ、同情されるなど……あり得ない。」

あいつの表情が崩れないのが悔しくて、大声を上げる。

「じゃあ!なんで僕にキスする?

 教皇様が来た時に限って、僕にキスするのはなんで?」

あいつの表情がガラリと変わる。

眉間に皺を寄せ、厳しい目つきで僕を見る。

僕の両手首を掴み、無理やり唇を合わせる。

「んっ!」

僕は激しく首を振る。

あいつの唇を振り切り、両手にも力を入れる。

でも、まだあいつの力には敵わなくて……。

そのままソファーに投げ飛ばされた。

ドンッと背をソファーにぶつけ、一瞬怯んだ隙に、あいつが圧し掛かって来る。

「や、やめろ!」

手足をバタつかせ、抵抗しても、あいつは僕を押さえつけ、唇を奪う。

僕の両手を交差させ、片手で掴むと、ブラウスのボタンに手を掛ける。










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