miyabi-night(5人)

miyabi-night 三十七話 - japonesque side story -

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「あ……あ、んっ……。」

屏風に映る影が細かく揺れる。

「ここかい?」

首を振る影に、満足そうなもう一方の影。

「じゃぁ……こっちだ。」

「ぁあっ!」

震える影が腰を揺らす。

「あぁ……はぁ……さと……。」

「ああ、おいらはここにいるよ。

 翔さんの中に、ちゃあんといる。」

「ああっ……やぁ……。」

「嫌なのかい?ここはこんなに喜んでるのに。」

「ぁあああ、あっ、……さと……さと……もっ……。」

行灯の灯りが揺れて、微かな風に消える。

暗闇の中で木霊する声が重なり……匂いが満ちる。



「剛が……。」

春画を見つめる智の隣で、だらりとした櫻井が、智の声に合わせて視線だけを上げる。

「最近、おいらの描く女が特に色っぽいって……。

 そりゃあそうだよなぁ?」

智は枕元に春画を置き、櫻井の額にかかる髪を撫でつける。

「こんな色っぽい翔さんを見て、いい絵にならねぇわけがねぇ。」

ふわりと笑う智に、櫻井が体を寄せる。

「色っぽいのは……智…殿の方じゃ……。」

智は櫻井の唇に指を当てる。

「いけねぇなぁ。“殿”はいらねぇよ?」

「さ、さと……智……。」

智はにこりと笑う。

「なんだい?」

「智が……そんな目で見るから……。」

「おいらが?どんな目で見てる?

 おっこちきった目で見てるかい?」

くすくす笑う智の胸を櫻井の手が、とんと叩く。

「……意地悪だ……。」

「意地悪もしたくならぁね。そんなに可愛らしい顔されたんじゃ。」

智は笑いながら、親指で櫻井の頬を撫でる。

その指使いが優しくて、恥ずかしくなった櫻井は、話を逸らす。

「ひ、羊屋さんのお嬢さん、縁談が決まったそうで……。」

「ああ、のりちゃんかい?和が頑張ったかいがあったね。

 来月祝言だって、和も喜んでたよ。」

「智千代さんは……。」

「智千代は、今頃、いい人の腕の中さ。

 老中には可哀想なことをしたけどな?」

智がくすっと笑う。

「そのうち、錦絵でも描いてやるか?

 そんなことしたら、毎日眺めて、翔さん達のお勤めに響くか?」

智はその姿を想像して、くっくと笑う。

「智は……智千代さんには……その気にならなかった?」

「どうして?」

「東山様も、成田屋も……みんな……気に入ってたみたいだから……。」

櫻井は言いにくそうに言葉を濁す。

「そうだねぇ……抱いてみたいとは思ったが……。」

抱いて、と言う言葉にびくっとする。

そんな櫻井を横目に、智が悪戯っぽく目を細める。

「おいらにゃ、お前さんがいるからね?」

櫻井の顔がかぁーっと赤くなる。

「お前さん以外、抱いちゃいけねぇんだろ?」

「……そうだ……智は……私以外……抱いてはいけない……。」

櫻井は顔を染めたまま、智を見上げる。

「ちゃあんと約束は守ってるよ。」

智が櫻井のこめかみに唇を当てる。

「暁も、お前さんから離れられないからね……。」

智は刷り上がったばかりの春画を、櫻井の枕元から持ち上げ、二人の前に翳す。

春画には、身を捩って男を誘う女と、喜び勇んで目を輝かせる男の姿。

「私は……こんな顔で誘っているのか?」

「ああ、そうだよ。これよりもっと色っぽい。」

智はくっくといやらしく笑う。

「こ、今回の話も和殿が書いたのか?」

「ああ、今回の話は女に騙される、男の話だが……。

 次の話は幸せな話になりそうだよなぁ?」

智が指で絵の中の女を撫でる。

「ん、うん……。」

智が絵の中の女を撫でるだけで、胸の中がぎゅっと締め付けられる。

しかも、この女は自分を描いたと言うのに。

自分に嫉妬するなんて……。

おっこちきってるのは私の方だ……。

櫻井は居たたまれなくなって、智に背中を向ける。

智は絵を枕元に戻し、後ろから櫻井を抱きしめる。

「どうした?具合でも悪いのかい?」

「…………しぃ……。」

「ん?」

「抱いて……欲しぃ……。」

櫻井が顔を上げると、潤んだ瞳が切なげに智を捉える。

「翔さんは……ずりぃなぁ?」

櫻井がわずかに首を傾げる。

「そんな顏で見られたら、どんな男もいちころだ。」

智の唇が櫻井の唇を挟む。

「体だけじゃなく、心まで持ってかれちまう。」

「智……。」

櫻井の両腕が智の背に回る。

「私はとっくに……。」

唇を合わせたまま、智の目が細くなる。

ふわりと笑って、その唇から覗き出た舌先が、櫻井の頬をなぞる。

ぞくっとする感触が、首筋まで下って行くと、櫻井の奥が疼く。

「あ……。」

「いいよ……何度だって抱いてやる。

 お前さんのいい顔は、おいらだけの楽しみだからな?」

「さと……、あっ。」

智の唇が櫻井の胸を摘まむ。

「もっと気持ちよくなりな。

 もっともっと……極上の、欲にまみれた顔を……見せておくれ?」

「あ……だめ……。」

まだ、だるさの残る体が、小刻みに震える。

その様子を見つめ、得も言われぬ快感を感じた智が、櫻井の中に入って行く。

「あ……ぁあっ……。」

櫻井の声が夜空に木霊する。

今宵の空は朧月夜。

春の月が、宵闇に霞む。

二人の秘め事も、江戸の町の喧騒に、朧に霞む。










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