miyabi-night(5人)

miyabi-night 三十六話 - japonesque side story -

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「智千代……、もう会えないかと思っていたよ。

 まさか男だったとは……。」

東山が智に向かう。

智と雅紀は顏を見合わせ、首を傾げる。

「何を勘違いしてるのか知らねぇが、おいらは智千代じゃあねぇよ?」

智は腕を組んで袖に通す。

「ああ、あれは世を忍ぶ仮の姿なのかな?

 昨日、踊っている姿を見て、確信した。あなたは智千代だ。間違いない。」

「すまねぇが、勘違いだよ。おいらは智千代じゃねぇ、智だ。」

「確かに似てたからねぇ。勘違いしても仕方ないと思うけど。」

雅紀も東山に同情するようにうなずく。

「智千代に会ったことがあるのか?」

東山が雅紀に食いつく。

「ああ、ここに泊まったからね?」

雅紀が智を見ると、智が静かにうなずく。

「泊まった?ここに?身内なのか?」

東山が驚いた表情で雅紀を見つめる。

「身内じゃねぇよ。まぁ、あいつが男だってとこは当たっちゃいるが……。」

智がちらっと櫻井を見る。

櫻井は何のことかと思案顔だ。

「お前さんが、小屋で見た芸者、あれが智千代だよ。」

「あの女(ひと)が……。」

櫻井がつぶやくと、また出入り口の方から声がする。

「ああ、そうだよ。智千代は智じゃない。」

みんなが一斉に振り返ると、逆光を浴びて、潤が颯爽と現れる。

「成田屋……。」

智が言うと、潤がにこりと笑う。

「似ちゃぁいるが、智千代は智じゃない。色気が違う。」

潤が言い切る。

東山はじっと智を見つめ、首を傾げて腕を組む。

「う~む、確かにそう言われると……。」

「だから、おいらじゃねぇんだって。」

智は両手を後ろについて、東山を見上げると、東山は智にずいっと近寄って来る。

「こんなに似ているのに……。生き別れになった兄弟か?」

「そうかもしれねぇな?」

智がくすりと笑う。

「智千代は、もうここにはいないのかい?」

東山が、智に近づいたまま聞く。

「ああ、あいつのけぇる場所にけぇったよ。」

「そうか……智千代には帰る場所があるのか……。」

雅紀がうなずき、智と顔を見合わせる。

「うん、いい人のとこに……。」

幸せそうな智千代の顔を思い出し、雅紀の目が潤む。

潤んだ瞳で和を見ると、和がぎゅっと雅紀の手を握り締める。

「たまに……芸者の恰好するっていうのはどうだ?」

東山が智に向かって、にこりと笑う。

「ごめんだね。おいらにゃできねぇよ。」

「そんなことはない。あれだけ見事に舞えれば……。」

「あれは舞台だからな。そうでなけりゃ、あんな芸当……。」

できねぇできねぇと、智がゆっくり顔を振る。

「そうかい、それは残念……。

 だが、今回のことで私はいろいろなことに気付いた。」

櫻井に、不吉な予感が走る。

「私が男を好きになるなどあり得ないと思っていたが……。

 好きになるのに男も女もないということもわかった。」

東山はじっと智を見つめる。

「これだけ似ているのだ。智千代を恋しく思う、私の心を慰めてはくれまいか?」

東山は智の手を取り、握り締める。

「あはは。ばか言っちゃいけねぇよ。おいらにお前さんを慰める義理はねぇだろ?」

「それはそうだが……、ええい、こうなれば職権乱用して……。」

「東山様!」

櫻井が叫び、東山と智の手を振り払う。

「お戯れはほどほどになさいませ。」

「なんだ、お前は智千代に会ったのか?」

「私は……ちらっとお見かけした程度で……。」

「なら、入ってくるな。智殿、しばらく私と懇意にしてみるというのはどうだろう?」

また智の手を掴み、ぐいっと身を乗り出す。

「すまねぇが……。」

智が東山の手を振り払う。

「おいらにゃ、いい人がいるんでね。」

「いい人?」

「そうだよ。おいらがおっこちきってる。」

智はそう言うと、櫻井の顔を見つめ、ふわりと笑う。

「智殿……。」

櫻井の頬が染まり、見つめ合う二人を見て、東山にもすぐにわかり、渋い顔をする。

「なんだ、相手は櫻井か。」

「……申し訳ありません……。」

櫻井が済まなそうに頭を下げる。

「ああ、もういい。私は智千代に似た女を探すぞ。

 どこかにいないか?」

「それならいい女がいますよ。」

和が、会話に割って入る。

「なかなか可愛い顔をしてるし、育ちもまずまず。

 ちょっと気が強いが、それもご愛敬。

 女は気が強いくらいがちょうどいいっていいますからね。」

「ほぉー。その人は智千代に似てるのかい?」

「そうですねぇ……似てないこともないかな?」

「それはいい!ぜひ会ってみたい。」

「そうですか、そうですか。では、すぐに段取りして参ります。」

和が揉み手しながら、東山を見上げる。

「頼んだぞ。」

「はい。」

和の笑顔に、雅紀が口をへの字に曲げる。

「お侍さんには、おみよちゃんが合ってると思ったけどな?」

智がくすりと笑うと、はっとした東山が一同を見回す。

「申し訳ない。そろそろ行かないと、団子がなくなってしまう!」

「なんだ、おみよちゃんは取っといてくれないのかい?」

「あの子は商売上手でね、そういう特別扱いはしてくれないんだよ。」

「ははは。それは脈がないってこったな?」

みんなが一斉に笑うが、東山は団子が気になって仕方ない。

「このたびは大変世話になった。礼を言う。ありがとう。」

東山が、みんなに向かって会釈する。

「なぁに、大したことはしてねぇよ。」

智が軽く手を上げる。

「こちらこそ、感謝してもしたりません。」

雅紀が全身でお辞儀する。

和も隣で雅紀に倣う。

「じゃ、智千代似の女、楽しみにしているよ。」

東山はみんなに背を向け暖簾を避ける。

その後ろ姿を見送って、雅紀が和に耳打ちする。

「さっきの女の人って……。」

「ん?ふふふ。わかった?お嬢さんにもいい人見つけてあげないと、

 私が祝言あげるはめになりそうだからね?」

和がにやりと笑った。










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