Believe

Believe -5-

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「ショウ様、今日の午後はピアノに変更でございます。」

「ピアノ?神学の先生の都合が悪くなったの?」

「はい。先生がいらっしゃるまで、少し練習なさいますか?」

「うん……。今回の課題、難しくて……。」

僕が下を向くと、ジュンが優しい声で言う。

「難しくても、練習して練習して……最後にはできるようになる。

 そんなショウ様が私は素敵だと思いますよ。」

顔を上げると、ジュンが天使の微笑みで僕を見てる。

僕はドキッとして顔を背ける。

「では、レッスン室の方へ……。」

ジュンと連れ立って、レッスン室へ向かう。

そんな風に何度か授業の時間割が変わることがあったけど、

それは決まってピアノのレッスンで……。

ピアノの先生は有名な人みたいだったから、そのせいだと、

特に奇妙に思うこともなかった。

それよりも、使用人達が声をひそめてする噂話……。

そっちの方が、僕の心を掻き乱す。

あいつの父親、教皇様はとてもえらい人だと言う。

勉強したから少しはわかる。

教皇というのは教会で最も上の称号だ。

えらくないわけがない。

けれど、聖職者でありながら女と金が大好きで……。

あいつの母親以外にも何人もの女がいて……。

それぞれに子供もいて……。

あいつは庶子という身の上で、17歳で大司教になったと言う……。

だから……結婚するまで女は抱かないと言ったのか……?

父親に対する反発?

自分のような子供を作らない為?

……違う。

そんな優しいわけがない。

優しかったら、村をあんな目に合わせることなんかできなかったはず!

優しいわけがないんだ!

そしてもう一つ。

あいつには弟がいて、弟は心優しく争いを好まない……。

田舎で母親と一緒に、安穏と暮らしているガンディア公……。

あいつはローマに置き、弟マサキにはガンディアの地を守らせる。

家族でありながら、バラバラになって……。

いったい教皇は何を守ってる?

地位?名誉?金?

家族を守っているのは教皇?

それとも……あいつ?

噂話は僕の心をグルグルさせる。

夜、スヤスヤと寝息を立てる美しいあいつを見ながら、

僕の心臓がドクンドクンと音を立てる。

だめだ。

惑わされてはいけない。

こいつが何を背負っていようとも、村を襲ったのは事実だ。

こいつは……敵(かたき)だ……。



その日は、教皇様が見えられると言うことで、僕のピアノのレッスンが中止になった。

まだまだ拙い僕のピアノを、教皇様にお聞かせするわけにはいかない。

代わりにラテン語と数学の授業が入った。

ラテン語は難しかったけど、昔の書物が読めるのが面白い。

数学は商業用計算だけでなく、物同士の距離の測定についてなど、

実際目の前にある事柄が、数字になるのが面白かった。

「これを応用すると、空に輝く星と星の距離や角度まで計算することができます。」

先生は目をキラキラさせて語る。

本当に数学が好きなんだと思って、僕も笑顔になる。

星と星の距離……僕とあいつの距離はどのくらいなんだろう?

少しは近づいたのか?

全くそんな気がしない。

こんなに毎日勉強してるのに、全然あいつに追いつかないのがもどかしい……。



夜、いつものようにあいつの部屋に行ってベッドに横になる。

珍しく、あいつがベッドの上で、僕の方を向いた。

いつもと逆で、じっと見つめられると、動くことができなくなる。

それだけ、あいつの存在は周りの人間に影響を与えると言うことだ。

きっと、僕だけじゃないはず……。

「勉強は……楽しいか?」

あいつの声は驚くほどに透き通って、僕の中に入って来る。

「別に……。」

自分を偽るように、声の調子を落とす。

「ピアノは……上達しているな。」

…………!

僕は目を瞠って、あいつを見つめる。

こいつが僕のピアノを、上達がわかるほど聞いてたことにびっくりする。

あいつはクスッと笑って、僕の髪を撫でる。

「少しの間に……大人の顔付きになってきた……。」

そうだよ。

僕は早く大人にならなきゃいけない。

そうでないと、父さんと母さんの敵は取れないから。

「でも髪は……まだ子供のように柔らかいな……。」

あいつは僕の髪を一束掬い、ぎゅっと握る。

「痛っ。」

束で引っ張られるみたいな痛みを感じ、悲鳴を上げる。

あいつは僕に近づいて、髪に口付けた。

「いつまでも、子供のままでいろ。……子供のままで……。」

あいつの唇は髪から離れ、僕の唇の上を撫でる。

サラッとした感触が、僕の唇の上を滑り、見上げると、

今にも泣き出しそうに、眉と目尻を下げたあいつの顔があって……。

僕がぎゅっと口を引き結ぶと、あいつの唇がもう一度降りて来た。

あいつとの、二度目のキスだった。










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