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Believe -4-

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「んんっ……。」

口の中を動き回るあいつの舌は強引で……。

逆らって、逃げ回る僕の舌をあいつの舌が追いかけまわす。

逃げてるうちに、どんどん苦しくなってくる。

どうやって息をしたらいいかわからないでいたら、あいつの唇が離れた。

「はぁー……。」

大きく息を吸い、ホッとして息を吐く。

上半身を起こしたあいつは、僕を見下ろして笑ってる。

急いで右腕を振り払い、手の甲で強く唇を拭う。

「拭っていいと言ってない。」

冷ややかなあいつの声。

「こんなこと……、お、女にしろよっ!」

「私は結婚するまで女は抱かぬ。」

抱くと言う言葉にカァッと顔が熱くなる。

僕だって、それくらいは知っている。

こいつは僕を抱く気なのか!?

今度は背筋を冷たい物が走る。

もう片方の腕も払い、身構える。

どうやったら逃げられるか……。

「ふん。ガキだと思っていたが、わかるんだな?」

あいつが乾いた笑いを浮かべる。

「それなら、ここに連れて来られた意味もわかるな?」

意味……。

まさか……。

「お前は私を倒すのだろう?

 近くにいた方が、その機会を逃さずに済むのではないか?」

僕はじっと考える。

そうだ。

その通りだ。

近くにいれば、こいつの隙を見つけられるかもしれない……。

「明日から……お前は毎晩、私の寝所に来なければならない。

 それがお前の仕事だ。」

「仕事……。」

「そうだ。ここにいるのに……。

 何もしないのでは、気が引けるだろう?」

あいつが、ふふんと笑う。

カッと怒りが込み上げてくる。

こんなやつに、こんな……。

僕の手が、あいつに向かって勢いをつける。

それを、あいつは動じることなく、片手で跳ね返す。

「そんな元気があるのなら、早く力を付けろ。

 力を付けて、私を倒せばいい。」

「言われなくたって!」

あいつが楽しそうに笑う。

「なるべく早く倒しに来い。私はそれほど気が長くない。」

「ふんっ!お前になんか、すぐに追いついてやる!」

「ふふふ、それは楽しみだ。」

あいつはベッドから立ち上がり、僕に目もくれず出て行く。

扉の閉まる音がして、怒りで身震いする。

僕はもう一度、唇を拭う。

悔しさで涙が溢れてくる。

絶対、すぐに追いついてやる。

追いついて、必ず、父さんと母さんの敵を……!



次の日から、あいつに言われた勉強が始まった。

勉強なんかしたことなかったけど、やってみたら面白かった。

小さな村しか知らなかった僕にとって、世の中は広く、深く、

知りたい欲求がどんどん沸き上がって来る。

ピアノも……。

無心でピアノを弾くのは楽しかった。

音楽は、乾いた僕の心をほんの少し癒してくれる。

もちろん、夜の仕事も始まった……。

初めてあいつの部屋に行く時は、何をされるのか、不安で不安で仕方なかった。

ビクビクしながら、あいつのベッドに入ると、

あいつは僕の隣に横になって、静かに寝息を立て始める。

僕は、じっとあいつの顔を見つめる。

オレンジ色の前髪が顔にかかって、閉じた睫毛と共に影を作る。

偶然作られる、そんな様子まで絵に描いたようで……。

思わず見惚れている自分にハッとする。

憎い相手を綺麗だと思うこと自体が罪だ。

こいつは父さんと母さんの敵だ。

村のみんなの敵だ。

自分に言い聞かせ、目の前のあいつを見据える。

あいつが何かする様子がないことを確認し、僕もゆっくり目をつぶる。

まだだ、まだ。

まだ僕には力が足りない。

いつか必ず……。

そう思いながら眠りについた。

不思議とすぐに眠ることができて、朝目覚めてびっくりする。

憎い相手の隣で、何を呑気に寝ているんだ……。

自分の無神経さに腹が立つ。

腹が立って、ラテン語の先生に、矢継ぎ早の質問で八つ当たりした。

見ていたジュンが、笑って頭を掻くのが目の端に映る。

それから毎晩、僕は、あいつの部屋へ行く。

行っても、ただ同じベッドで寝るだけだ。

あいつは僕に触ることもないし、唇を塞がれたのも、あの一度きり。

朝、僕が起きる頃には、あいつはもうベッドにはいなくて、

僕は、起きると同時に自分の部屋に向かう。

何をするわけでもない夜の仕事……。

それでも毎晩、部屋に来いと言う。

それが僕の仕事なら……。

そう思って、毎晩あいつの隣で眠る。

あいつの顔を眺めながら……。



数日が経つと、ジュンが新しく、数学と地理の先生を連れて来てくれた。

さらに勉強の時間が増える。

母さんを手伝って、やぎの世話をすることもないし、

父さんを手伝って、畑に行くこともない。

僕の生活は、村にいた頃とは一変していた。










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