Believe

Believe -3-

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「サトシ様は、騒々しいのを嫌います。

 足音にまで気を遣ってください。」

午後。

久しぶりの食事は、びっくりするほど美味しくて……。

僕は夢中になって、スプーンを動かす。

「それと、とにかくサトシ様には逆らわないこと。」

「なんでも……言うことを聞けっていうの?」

僕はもぐもぐと口を動かしながら、水を飲む。

「そうです。どんな小さなことでも、サトシ様のおっしゃるように……。」

「…………。」

「呼ばれたら、必ずすぐに行ってください。

 遅くなると、サトシ様は不機嫌になります。」

不満そうな僕の口元を、ジュンがナフキンで拭う。

「……サトシ様は若くして大司教になられました。

 それだけ背負う物も大きいのです。」

「ふぅん……。幾つなの?」

「19になられたばかりです。」

「19……。」

僕の7つ上……。

7つの違いは大きい。

僕があいつに追いつく為に、何が必要?

力?お金?

あいつを倒す為に必要なもの……。

またジュンが僕の口を拭う。

「食事のマナーも……少しずつ覚えていきましょう。」

ジュンが笑う。

クルクルの巻き毛が、フワッと揺れて、僕の気持ちをちょっと明るくする。

不思議……。

母さんに……少し似てるからかな?

食事が終わると、すぐに屋敷の中を案内された。

ジュンは僕の体を心配しながらゆっくり歩いてくれる。

ちょっと疲れてただけだと思う……。

あんなことがあったから……。

ジュンは僕が行ってもいい所、いけない所を教えながら歩く。

行ってもいい所は主に居住部分。

いけない所は、あいつが仕事をする場所、応接間、ゲストルーム……。

誰がいるか分からない所には行っちゃいけないらしい。

午後中回って、やっと最後の庭に辿り着いたのは、陽が沈み始めた頃だった。

「ああ、もうこんな時間。そろそろ夕食の準備をしないと……。」

ジュンが空を見て焦り出す。

「僕も手伝うよ。母さんの手伝いしてたから、ちょっとはできるよ?」

「そうですか?では……少し手伝ってもらいましょうか。」

ジュンが楽しそうに笑って、僕の肩に手を置く。

僕も嬉しくなって、ジュンを見上げる。

なんだか、優しいお兄ちゃんができたみたいだ。

キッチンに行って、じゃがいもの皮剥きを任されて、

ナイフで皮を剥いたら、調理係のおばさんが溜め息をついた。

「これじゃ、任せられないねぇ。」

おばさんが僕の剥いたじゃがいもを摘まむ。

じゃがいもは元の大きさの半分くらいで、いびつな形に変わってる。

ちらっとジュンを見ると、ジュンがくすくす笑ってるのが見える。

できるとこ見せたかったのに……。

恥ずかしくなって下を向く。

「ショウ様はこっちに来て、お皿を拭いて。

 ピカピカになるように……。」

布巾とお皿を渡されて、キュッと音がなるように拭いていく。

僕を見ていたジュンが安心したように笑う。

僕も一緒になって笑った。

ジュンの笑顔は天使みたいだ。



夕食はみんなとキッチンで食べた。

使用人は順番でご飯を食べる。

みんなで食べるご飯は、村のみんなを思い出す。

何かあるとみんな一緒になってご飯を食べてた……。

いつも笑ってて、ケンカっぱやい父さんは、よく靴屋のおじさんとケンカしてたけど、

それでも最後は笑ってて……。

そんな村を、あんな目に合わせたのは……あいつだ。



僕は部屋に戻され、布団に入る。

明日から、ラテン語と神学の勉強が始まるとジュンが言っていた。

ラテン語なんて、聞いたこともない。

なんの為の勉強だ?

しかもピアノまで……。

天井を見つめながら考えていると、部屋の扉が開く。

首だけでそっちを見ると、あいつが無表情で立っていた。

僕は上半身を起こして、身構える。

「……何?」

「私の物に会いに来るのに理由がいるのか?」

あいつが僕のベッドに近づいてくる。

無表情のあいつに、内心ビクついていたけど、顔に出さないよう、

僕も無表情を作る。

「……私に逆らおうって言うのか?」

無表情が気に入らないあいつが、僕の顎を持ち上げる。

「……別に。」

視線を逸らしてそう言うと、いきなり唇を塞がれた。

「んっ……。」

慌てて、両手であいつの胸を押す。

でも、あいつの力は強くて、僕の力じゃビクともしない。

それどころか、両手首を掴まれ、ベッドの上に抑え込まれる。

重なったままの唇が、僕の唇を食べるみたいに挟み込む。

「んんっ……。」

手足をバタつかせ、必死で逃げようとすると、僕の上にあいつが覆いかぶさってくる。

あいつの体の重さで、身動きが取れない。

しばらく頑張ったけど……、観念するしかなくて……。

僕の体から力が抜けると、あいつがやっと唇を離す。

「口、開けろ。」

しかたなく口を開けると、あいつの舌が、僕の口の中に入ってくる。

びっくりして目を見開く。

目の前には、あいつの顔が、これ以上ないくらい近くにあって……。

オレンジ色の髪が揺らぐ。

綺麗な眉が少し上がる。

あいつのグレーの瞳に……僕が映ってる。










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