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Believe -2-

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「ん、んん~っ。」

暖かくて……気持ちいい……。

「あ、気付いた?」

柔らかい……もっとこのまま……。

「まだ、眠い?でも一日中、眠ってたんだよ?」

誰……?

誰の声……?

霞む目が、少しずつ開く。

目に飛び込んできたのは……綺麗な……瞳。

クルクルの巻き毛。

心配そうな……顔。

「だ……れ?」

僕は、自分の体を起こそうとして、肌に当たる絹の感触にドキッとする。

すべすべで柔らかく、サラサラとすべる。

「ここ……どこ?」

聞いてはみたものの、僕には想像がついていた。

ここは天国……。

きっと、父さんと母さんもここにいる。

「父さんは……?母さん……?」

ベッドの脇で心配そうに見ていた綺麗な瞳は、その表情を曇らせる。

「ね?父さんと母さんは?」

綺麗な瞳が、巻き毛を揺らしながら首を振る。

「どうして?ここ、天国でしょ?父さんと母さんも来てるはず……。」

綺麗な瞳が少し伏せられて、同情するような色を浮かべる。

「ごめんね。ここは天国じゃない。」

「じゃ……どこ?」

すると、扉がバンっと開いて、男が一人入って来る。

「なんだ?やっと気づいたのか。」

「大司教!」

綺麗な瞳が一歩下がる。

「ジュン、もういい、下がれ。」

「は。」

綺麗な瞳はジュンと呼ばれ、後ろ向きのまま、下がって行く。

男は黙って、僕のベッドに腰かけると、僕の顎をクイッと持ち上げる。

顎を動かし、僕の顔を右から左からと確認し、その手を下げる。

僕にはこの男が誰だかすぐにわかった。

オレンジ色の髪なんて、そうそういない。

「名は?」

返事をしない僕を見て、オレンジがクスッと笑う。

「助けてもらって、礼もなしか?」

「助けてくれって頼んだわけじゃない!」

「では、お前は頼まなければ、礼も言わないのか?

 恩人に名も名乗らないのか?」

オレンジの言うことは……、

悔しいけど、間違ってない……。

「……ショ…ウ………。」

「ショウ?」

僕はコクリとうなずく。

「年は?」

「……12。」

「12?小さいな。」

僕は年よりもずっと小さく見える。

よく母さんが、高くならない背に不満を言う僕に、

もう少ししたら、急に大きくなるから、心配しないで待っておいでって言ってくれてた。

父さんは、大きくて力持ちで、僕を腕にぶら下げて、

また重くなったなって、嬉しそうに笑ってた。

もう……二人ともいない……。

目に涙が溜まってくる。

「お前は……私に復讐するのではなかったのか?」

そうだ。

この男は甲冑を着ていた。

村を滅ぼした甲冑を。

「ふふん、いい目だ。

 なら、泣くな。泣いてる暇など、お前にはない。」

男がベッドから立ち上がる。

「私を倒すんだな?」

僕はうなずく。

男はなぜか一瞬嬉しそうにし、扉に向かって大声を上げる。

「ジュン!」

すぐに扉が開いて、ジュンが現れる。

「読み書きはできるな?」

僕が何も言わなくても、できることはわかったみたいで、男はジュンに向かって、

次々と指示を出す。

「こいつにラテン語と神学、法学の教師を。」

「は。」

ジュンは上体を下げて、返事する。

「剣と格闘技……。」

男は僕をじっと見つめ、何を思ったのか、最後に付け加える。

「……ピアノ……。」

「……は。」

何を考えているんだろう?

僕にそんなものを教え込んで、どうするつもり?

僕は力を付けたらこの男を……。

「それと……ここでのマナーは、お前が教えてやれ。」

「はっ。」

ジュンが頭を下げると同時に、高い声が響き渡る。

「サトシ様……大司教!」

「騒ぐな。聞こえている。」

入って来たのは小柄な男……?

色白で、一瞬女にも見える。

「御父上、教皇様がお帰りです!」

「……父上の様子はどうだ?」

「この度のナポリ進軍、シャルル様は喜んでおられたようですが……。」

小柄な男の眉間に皺がよる。

「父上のご機嫌は良くないと……。」

「はい……。」

男はすっと扉に向かう。

「わかった。ジュン、後は任せた。」

「は。」

「今日中に最低限のマナーは叩き込め。」

「は。」

「カズ、行くぞ。」

「はい。」

男はカズを連れて出て行く。

重い扉がゆっくり閉まり、僕と二人になると、ジュンがホッとしたように笑う。

「疲れたでしょ?もう少し休んで。」

「でも……僕、いろいろ勉強しないといけないんでしょ?」

「そうだね。たくさん勉強しないとね。

 だから、いろいろ用意しないと……。

 もう少し、お休み。」

ジュンが僕をベッドに寝かせる。

ジュンの手が僕の瞼の上を滑り、目をつぶらせる。

優しくて、でも少し冷たいジュンの手。

「……ありがと。」

ジュンはちょっとびっくりしたように笑う。

「お礼は……サトシ様に言ってあげて。

 ここに連れて来たのはサトシ様だから。」

僕は、プイッとそっぽを向く。

あんなやつに礼なんて……。

クスッと笑ったジュンが、僕の肩まで薄がけを引っ張った。










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