Believe

Believe -1-

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「とう…さ……。」

目の前に広がる焼野原。

「かぁ……さ…ん……。」

いつも母さんと買いに行ってたパン屋から上るのは、パンを焼く煙じゃない。

職人仲間と飲んでる父さんを、迎えに行ったパブの看板は傾いて、

今にも落ちそうだ。

燃え上がる火の手。

崩れる家々。

転がる……人々……。

もう……誰もいない……。

僕以外、誰もいなくなった……。

父さんも、母さんも……。

一緒に遊んだ友達も、パン屋のおじさんも……。

……本当に……誰もいないの?

「誰かっ!誰かいないのーーっ!」

大声で叫んでみても、聞こえるのは、燃え落ちる木の音と風の音……。

い……ない……。

誰もいないんだ……。

突然現れた甲冑の兵士達。

噂では聞いていた。

でも、それは町の話で、遠い国の話で……。

僕の村とは関係ない話のはずで……。

それが突然現れた。

訓練された兵士達の襲撃に、小さな村など、あっという間だった。

家の中も安全じゃないとわかった母さんは、僕を玄関の物入れに押し込んだ。

「いい?何があっても出てくるんじゃないわよ。わかった?」

真剣な母さんの表情に、僕はうなずいて……。

物入れの戸が閉まって、しばらくして、玄関の戸が開いた音がした。

ドカドカと数人の足音と甲冑の擦れる音……。

母さんの声。

その後は怖くて怖くて……。

目をつぶって、耳を塞いで……。

ただ、この恐怖が過ぎるのを待った。

早く終わって欲しい、早く過ぎ去って……。

辺りから物音がしなくなっても、怖くてそこから出ることができなかった。

膝を抱え、何も見ず、何も聞かず……。

でも、時間が経つと、逆に中にいることが怖くなってくる。

父さんと母さんが、僕を置いてどこかに行ってしまうんじゃないか、

誰も僕に気付かないんじゃないか、そんな思いに囚われて……。

辺りに人の気配がないことを確認して……戸を開けた。

玄関は無残にも荒らされて、家の中もひっちゃかめっちゃかで……。

「母さん……?」

家の中に母さんの姿はなく、思い切って玄関の戸を開けると……。

いつもの村からは想像もできない光景が広がっていた。

兵士達に荒らされた村の姿……。

それなのに、空に昇る太陽は、いつもと同じように村を照らす。

幾筋も立ち上る煙が朝陽に照らされ、これが現実なのかと疑いたくなる。

「さ、探さなくっちゃ。」

僕は村中を彷徨い歩いた。

瓦礫の中、火の側を避けて、父さんと母さんを探した。

でも、見つけることはできなくて……。

誰も……誰もいない……。

「父さぁーーんっ!母さぁーーんっ!」

大声で呼んでも、返事してくれる声はない。

僕は泣きながら、叫び続けた。

いつか、誰かが答えてくれるんじゃないか、微かな期待を胸に。

涙でグチャグチャな顔を手の甲で拭って、ただ、叫ぶしかできなかった。

僕の声だけがこだまする中、僕の声すらも段々小さくなっていく。

「……と…さん……。」

馬の嘶(いなな)きと、蹄の音にビクッとする。

まだ、兵士がいる……?

「……一人か?」

甲冑を付けたその人は、馬上から僕を見る。

顔は……朝陽のせいでよくわからない。

ただ、オレンジ色の髪だけ、陽に透けてきらきらと輝いている。

「一人かと聞いている。」

馬上の男の声は冷たい。

この……この甲冑にやられたんだ。

村も、父さんも母さんも……。

この甲冑が……。

僕は、逆光で見えない男の顔をじっと見据える。

「生意気にも、私を睨むか?」

男の鼻で笑う声に、僕の怒りが大きくなる。

「ふん、気に入った。着いて来い。」

男は馬を操って、向きを変える。

「聞こえなかったのか?それとも怖くて声も出ないか?」

「き、聞こえてるよ!」

僕は叫ぶようにそう言って、立ち上がる。

「憎いか?それとも悔しいか?」

憎いし……悔しい。

自分に力がないことが。

村をめちゃめちゃにされたことが。

父さんも母さんも助けられなかったことが!

男は僕を見て、フッと笑う。

「なら、着いてくるがいい。お前の復讐、いつでも受けてやる。

 その力を身に付けたらな。」

男は僕に背を向けて、馬を歩かせる。

僕はその後ろ姿をじっと見つめる。

朝陽を浴びて、銀色に光る甲冑は眩くて、オレンジの髪が金色(こんじき)に輝く。

僕は……右足を一歩前に出す。

あいつが……こんなことをしたのなら、僕が……必ず……。

左足を前に出し、体が疲れていることに初めて気づく。

「待っ……て……。」

足元の瓦礫に躓き、顔から突っ込む。

涙と鼻水と苦い……灰の味が、口の中で広がる。

あいつに……着いて行って……思い…知ら…せて……。

ああ、でもいいか……このままここに居れば……父さんと母さんに会えるかも……。

僕は霞む目をゆっくりつぶる。

僕も……父さんと母さんのとこに行ける……。

意識がなくなる寸前、僕の体が温かい何かで包まれる。

天に昇るって、こういうことなのか。

まるで、朝陽に包まれてるような、そんな温かさだった。










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