miyabi-night(5人)

miyabi-night 三十話 - japonesque side story -

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智は稽古場で、踊る侑李の姿をじっと見つめる。

三日前、智の稽古が終わると同時に、侑李が稽古場に入って来た。

神妙な面持ちで潤に挨拶する侑李を、智は柔らかな笑顔で見守る。

だが、侑李が踊り始めると、智の顔色が変わる。

しなやかな侑李の足さばき、首を捻る時の視線の動き。

「女にしか見えねぇな……。」

智はぽつりとつぶやき、顎を伸ばして首筋を掻く。

幼い頃からやっていただけのことはある。

並みの踊り手でないことは一目瞭然。

潤の言うことに、うなずいては繰り返す侑李を、智の視線が真っ直ぐに見つめる。

これだけ踊れれば十分じゃないのかと智は思うが、

侑李にも潤にも何かが足りないらしく、稽古はどんどん白熱していく。

「違うって言ってんだろ?一から出直してくるかい?」

「もう一度お願いします!」

二人の熱気に、智は肩を竦める。

こんな風に踊りに情熱を傾けることは、智にはできない。

侑李がいれば大丈夫だな。

そっと出て行こうと、智が戸口に向かう。

「待て。もう少しいてもらえるかい?」

潤に声を掛けられ、振り返ると、侑李も口を噤んでうなずく。

「なんでだ?おいらはここには必要ねえだろ?」

「三日後、道成寺をやろうと思っている。お前さんも……一緒に踊ってはもらえないかい?」

「おいらが?」

智は不満そうに眉間に皺を寄せる。

「侑李と一緒に……踊ってみたくはないかい?」

「二人いたらおかしいだろ?」

智は不満顔そのままに、腕を組んで二人を見比べる。

侑李は、挑むような視線で智を見返す。

それを見た潤は、軽口を叩くような口調で続ける。

「白拍子だけなら……。

 お前さんだって、せっかく稽古したんだ、舞台に立ってみたいだろ?」

「おいらは別に……。」

潤が軽く笑う。

「そんなことはないはずだ。曲が流れれば、お前さんの体は勝手に踊り出す。

 それは、踊りたいってことじゃないのかい?」

「そんなことはねぇよ。」

智はそのまま戸を開ける。

「明日もちゃんと稽古に来るんだよ。待ってるからね。」

ぴしゃりと、後ろ手で戸を閉めたが、

潤の視線を背中に感じ、どうしたもんかと溜め息をつく。

それから今日で三日目だ。

智は二人の心配をよそに、稽古にはちゃんと顔を出した。

踊り終わった侑李がにこりと笑顔で智を見つめる。

「どうしたい?」

智の問いに、侑李は笑って答える。

「心配だったんです。あなたは……もう稽古に来てくれないんじゃないかって。」

汗一つかかずに、涼しい顔でそう言う侑李が面白くなくて、智はふんと鼻を鳴らす。

「来るさ。前金でもらってるからな?舞台が始まるまでは、何が起こるかわからねぇ。」

「その通りだよ。」

潤も笑って、扇子を広げ、ぱたぱたと仰ぐ。

「で、どうなんだい?舞台に立つ気は?」

「ねぇよ。侑李で十分だろ?」

「あの金は、舞台に立つ分も含んでるんだけどねぇ。」

「知るか!」

智はすっと立ち上がると、侑李の隣に並ぶ。

「二人で踊る姿が見たいんなら、今見るんだな。」

潤は声を上げて笑う。

「俺は、煌びやかな衣装を着けた二人が見たいんだけどね?」

「勝手に想像してくれ。侑李が踊れるなら、おいらが踊る必要はねぇ。」

智の頑なさに、潤は侑李と顔を見合わせ、小さく息をつく。

「じゃ、見せてもらおうか?」

潤が扇子を閉じ、膝に当てると、二人が一斉に踊り出した。

見つめる潤の脳裏に、今夜の舞台が浮かぶ。

今、目の前で踊るように、舞台の上で並んで踊る姿。

潤は、強引に演目を変えた。

二人が並んで踊ったら、今までにない舞台になる。

なんとか、手入れが入る前に……。

急すぎると反対もあったが、小屋が取り壊されれば、

せっかくの踊りを見せる場所がなくなってしまう。

智にいたっては、もう踊ってくれないかもしれない。

同調するように踊る二人に、潤は息を飲む。

どんな反対にあっても、舞台に乗せなければ……。



二人の踊りを見終わった潤は深い溜め息をつく。

もったいない……。

こんな白拍子を舞台に上げないなんて……。

「どうだった?侑李。」

「は、はい……。」

踊り終わっても、まだぼーっとしている侑李は返事をするのが精一杯で、

何を答えていいやらわからない。

「智は?」

「そうだな……面白かったよ。」

にっと笑って、その場に胡坐を掻く。

「しかし、疲れた!」

膝に肘を付き、潤を見つめ、視線で感想を求める。

「いや、想像以上の出来だよ。二人一緒に踊ることで、張り詰めた糸のようになって……。

 そして、より艶(あで)やかで、艶(なま)めかしくなる……。

 二人とも、良く稽古したね。」

侑李は思いきり頭を下げる。

智はふふんと笑う。

「侑李は……踊りが変わったね。鳥井様のせいかい?」

「…………。」

踊りが変わったかどうかすらわからない侑李には、何も答えられない。

「それとも、智のせいかい?」

侑李は隣に座る智に視線を移す。

智はにっと笑って、気持ち良さそうに足を伸ばす。

鳥井との幸せと引き換えにしても、踊りたいと思った。

それは智に負けたくないという気持ちからだ。

どちらもが自分を成長させているように思う。

「誰のおかげでもかまいやしない。お前さんの最上を見せておくれ。」

潤が扇子で膝を叩くと、侑李は深々と頭を下げる。

踊る場所を与えてくれた潤に、感謝の気持ちを込めて。










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