miyabi-night(5人)

miyabi-night 二十七話 - japonesque side story -

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次の日、東雲は慌ただしかった。

刷り上がった双六をどこで配ろうか、みんなの意見が分かれた。

「やっぱり人の多いところで配らないと。」

雅紀が言うと、和が答える。

「そりゃ、そうですけどね、人の多い所ったって、時間に寄っちゃ変わるし。」

「あんまり遅くなると、本当に女の人はいなくなっちゃうからね……。」

「それはいいとしてだな、おいらがあれで配るなら、雅紀と和も着てくれなきゃぁ

 間尺に合わない。」

智は、奥に掛けてある振袖を顎でしゃくる。

「そんなことはないですよ。着慣れている人とそうでない人じゃぁ、違いますから。」

和がしたり顔でうなずく。

「和、お前は本当にずりぃな?」

「そんなことないですよ。」

和がニヤッと笑う。

「お前も雅紀も似合うと思うぞ?」

「雅紀は似合うけど、私はどうでしょうね?」

「え~、和は肌も綺麗だし、色白だから、絶対似合うよ。

 その辺の女より全然綺麗だもん。」

雅紀が和を見て、にっこり笑う。

見られていた和が、頬を染め、頭を掻くと、智はおげさに溜め息をついて見せる。

「はぁ~あ、ごちそうさん。おいらは稽古があるから、行くよ。」

智は立ち上がり、草履に足を突っ込む。

「あ、待って。成田屋さんにもこれ。」

雅紀が双六の束を掴んで風呂敷で包む。

「侑李の事も手伝ったし、これくらいはお願いできるよね?」

「ま、成田屋なら、軽くさばけるだろうが……。」

智は風呂敷を受け取り、雅紀を見上げる。

「お前らもちゃんと配れよ?」

「わかってるよ。」

雅紀は片頬を膨らまし、信用してないのかと怒ってみせる。

「目立つ格好でな?」

智がニヤッと笑うと、雅紀と和が顔を見合わせる。

智が行ってしまうと、残された雅紀と和は双六を見ながら溜め息をつく。

「俺は絶対嫌だからね。」

雅紀が智の振袖を見上げ、そう言うと、和は持ってきた風呂敷を広げる。

「仕方ありませんねぇ。私が着ますよ。」

風呂敷の中から、お嬢さんのお古の振袖を取り出す。

「え?借りてきたの?」

「ただ配っても、もらってくれないでしょうから、これくらいはね?」

和が机の上に置いたのは、小金と翡翠の鮮やかな振袖。

「なんか、成金ぽくない?」

「仕方ありません。成金ですから。」

和が笑って振袖を肩に当てる。



夕刻、それぞれが人通りの多い道端で双六を配る。

浅草では和が、人好きのする可愛い笑顔を浮かべ、

日本橋では、振袖を身に纏った雅紀が艶めかしく双六を配る。

数は限られている。

一枚一枚手渡しで配って行く二人の周りには、人山が出来上がる。

双六はあっという間に無くなり、満足して帰路につく。



智は稽古が終わると、潤に双六を渡す。

「なんだい、これは。」

不思議そうに双六を一枚手に取る潤に、智は汗を拭きながら答える。

「ま、人助けだな?」

「人助け?」

潤は首を傾げながら、双六を読んでいく。

「それを配って欲しいんだ。」

「ふ…ぅん、配ればいいんだね?」

「ああ、それでいい。」

「わかった。引き受けるよ。」

「助かる。」

智はふわっと笑う。

潤は、その顔をじっと見つめ、智に近づく。

「やっぱり似ている。」

「似ている?」

智は体を拭いた手ぬぐいを、合わせから腹に押し込む。

「ああ、智千代に……。」

「ふふふ、未練か?」

智がにやっと笑う。

「ああ、珍しくそうらしい。」

潤が智の前に立ち、智の顎を掴む。

「おいらは智千代じゃない。」

「わかっている。」

潤の力強い目に見つめられても、臆することなく視線を返す。

「で、堺屋の件はどうなった?」

「ああ、あれはどうやら、堺屋一人の思惑らしいが……。」

「が?」

「もしかすると、裏に黒幕がいるのかも……。」

「それは老中じゃなかったのかい?」

「老中は、そんなやましいことを考えてる様子はなかった。

 真面目そうに見えたよ。」

「ふぅ…ん……。」

智はじっと潤を見たまま言う。

「そろそろ離しちゃもらえないかい?」

潤は智の顎を掴んだ手に力を込める。

「いやだね。」

「そいつは困った。」

智は潤の手首を掴んで捻り上げる。

「痛たたたっ。」

潤が捻られた腕に合わせて身を捩る。

「役者よりゃ、力はあるぜ?」

「は、離せ。」

「もう、勘違いすんなよ?」

智は潤の腕を離すと、潤に背を向け歩き出す。

「お前さんは……武家の出か?」

智は振り向かず答える。

「いいや。」

「じゃぁ、どこでその身のこなしを習った!」

手首を押さえながら、潤が怒鳴る。

「はっはっは。生まれつきでね。」

「生まれつき!?」

「それ、頼んだよ。」

智は最後まで振り返らずに稽古場を後にする。

潤は手首を振って、痛みがないことを確認すると、智のいなくなった戸の辺りを見つめる。

「俺が後ろから飛びかかるとは思わなかったのか?」

潤は智の後ろ姿を思い出し、小さく首を振る。

「いや……飛びかかられても、俺ごときに負けると思わなかったのか……。」

潤は窓の外を見つめ、稽古場を出る。

そろそろ舞台の用意をしなければ……。

気持ちを切り替え、役者の顔になると、襟を正した。



夕刻の舞台が終わり、客が帰り支度をし出すと、衣装のままの潤が舞台に戻って来る。

終わったと思っていた客達がざわざわし始める。

「皆々様に、わたくしからのお土産にござりまする。」

そう言って、潤が小脇に抱えていた紙を舞台からばら撒く。

ひらひらと舞う紙を、先を争って奪い合う客達。

さらに又、潤の手が空に向かって放り投げる。

客達の、悲鳴のような声が響き渡る。

幾重にも舞う、大きな紙吹雪に、帰ろうと出口に向かっていた人々が戻って来る。

「皆さまが、楽しんでくれますことを!」

潤の手が舞う度に、客達の歓声が響き、潤は最後の一束をばらまくと、

小さく一礼して戻って行く。

客達は押し合い、奪い合いしながら、双六を掴んだ。










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