「ふたりのカタチ」
ふたりのカタチ(やま)【121~140】
ふたりのカタチ (123)
2017.03.04 *Edit
「ショ、ショウ君!」
ショウ君はおいらの腕を引っ張って、大股で歩く。
「どうしちゃったの?」
「どうもしないよ。」
ショウ君はすました声で言う。
でも、歩くスピードは変わらないし、おいらの方を向いてくれないし……。
「ショウ君……なんか……怒ってる?」
「怒ってないよ。」
……嘘つき。
絶対怒ってる。
「怒ってるじゃん。」
ショウ君の腕を掴んで、自分の方へ引っ張る。
「怒ってないって。」
やっと振り返ったショウ君の顔は……。
張り付けたような笑顔で……。
やっぱり怒ってるじゃん!
「ね?おいら、何かした?」
「何か……。」
「なんか、言っちゃいけないこと言った?」
「…………。」
ショウ君は今日チェックアウトしたホテルに入って行く。
「え?ちょっと……ショウ君!」
何?忘れ物?
ショウ君はそのままフロントに向って、真っ直ぐ歩く。
「予約してないんですけど、今日、泊まれますか?」
え……泊まるの?
おいらはショウ君の腕を掴んで顔を見上げる。
「ご希望のお部屋は……。」
「ダブルで。」
フロントの女の人はテキパキと確認して、ショウ君が名前やらを書き込んで……。
「ちょ、ちょっと……。」
おいらはショウ君の腕を引く。
「泊まったら、明日帰れる?」
「朝一の新幹線に乗れば間に合う。」
「そんな、大変じゃない?」
「大変じゃないよ。すぐに二人になりたいでしょ。」
「え……家でも……。」
おいらは言葉を飲み込む。
ショウ君が笑ったから。
なんか……ショウ君、怖いんですけど?
部屋は眺めのいい上層階。
でも、カーテンを開ける暇もなく、ショウ君がおいらの服を脱がせていく。
「ショウ……。」
「サトシは……、自分がどんな風に見えてるかわかってる?」
黙ってショウ君に脱がされてるけど……、どういう意味?
「まず最初は、映画村での侍役の人……。
明らかに気があったよね?」
「そ、それはおいらにもなんとなくわかったから……お断わりしたよ?」
「うん。断ったみいだね。でも、これ。」
ショウ君はシャツをかなぐり捨て、おいらのポケットから携帯を取り出す。
「こんなにくっついて写真撮って……。
あなたのいい匂い、彼も感じたでしょ?」
「いい匂いってショウ君!おいらそんな匂いしないし……。」
「アドレス聞かれた?ご飯、誘われた?」
おいらはドキッとして視線が泳ぐ。
さっき、そこは話さなかったんだけど……なんでバレてる?
「それが証拠。」
「それは……芸者の恰好してたからで……。」
「その次は接待。潤吉姐さんがいなかったら、大変なことになってたよね?
間違いなく、あなた、酔ってたでしょ?しかも相当!」
「あ、あれは……夢だと思ってたし……。」
ショウ君の手が、おいらのベルトをカチャカチャと外す。
「百歩譲って夢だと思ってたから、酔っても大丈夫と思ったとしよう。
それでも、老中に寄りかかってシナ作って、
腕握って、艶っぽい目で見上げちゃダメでしょ?」
「っ……。」
ショウ君、見て来たように言ってるけど、そ、そこまでしてないから!
腕は……掴んでたかもしれないけど……。
「シ、シナなんか作ってない!」
「意識して作ってなくても出ちゃうの。サトシは。」
「そ、そんなことな……。」
ショウ君がズルッとおいらのジーパンと下着を下げる。
Tシャツだけにされたおいら。
「だから、堺屋さんに狙われて……。」
ショウ君はしゃがんで、足首に溜まったジーパンと下着を取り除く。
「堺屋さんは女なら誰でもいいって感じだったよ?
おいらをずっと女だと思ってたし……。」
ショウ君はおいらを見上げて、大きな溜め息をつく。
「さらには潤吉姐さん。」
「潤吉姐さん?姐さんはおいらを助けてくれて……。」
立ち上がったショウ君が、おいらをベッドに押し倒す。
「サトシは本当にわかってないの?
どう見ても、潤吉姐さんは潤さんでしょ?」
「え?まさか……。」
「まさかじゃない。一緒に現れないのがその証拠。
歌舞伎にも来なかったんでしょ?」
「そうだけど……。」
本当に……?
潤さんと潤吉姐さん、同一人物?
「だから、寝起きですぐに告白されて……。肩ぐらいは抱かれた?」
思い起こして……抱かれたような……?
おでこにチューされたのは覚えてる……。
チラッとショウ君を見ると、ショウ君がニヤッと笑う。
「されたんだ。まさか、キスまで許してないよね?」
ショウ君の顔がおいらの顔に近づく。
目が……怖いっ。
「ゆ、許してない、許してないから!」
おでこにチューはショウ君の言うキスには入らないよね?
「それから、智さん?」
「智さんは違うでしょ?好きな人いるって言ってたし。」
「それでも、あわよくばと狙ってたに違いない。」
ショウ君の唇が、パクッとおいらの頬を食べる。
「それはないよ。」
「ない?」
ショウ君の顔がちょっと上がって、今度は鼻の頭を食べる。
「うん。だって……智さんの好きな人、ショウ君そっくりだったし……。」
「俺?」
「ショウ君みたいな人がいて……おいらなんて目に入らないよ。」
おいらが笑うと、ショウ君の舌先が、おいらの鼻筋を移動する。
「ほんと、何にもわかってない。
こんだけみんなを魅了して、それでもわからないってなんだろうね?」
「魅了って……。」
おいらも呆れてショウ君を見る。
それは、ショウ君がおいらに……惚れてるから思うことで……。
惚れられてる……。
カッと耳が熱くなる。
自分で思って恥ずかしいなんて……バカだ、おいら。
「なに?なんでそこでその反応?何思い出したの?」
ショウ君の舌先は、おいらの鼻筋からおでこを通って、生え際へ……。
「思い出してない……。」
「じゃ、なんで?」
「おいら……愛されてるなぁと思って……。」
ショウ君は驚いた顔をして、ふんと鼻を鳴らす。
「やっと自覚できるようになった?
そうだよ、愛してるから、サトシが見えない物も見える。」
ショウ君の舌先と唇が、こめかみ辺りを甘噛みする。
「や…んっ……。」
おいらの体がビクッと反応する。
「最後は……コーヒーショップで隣に座った人。」
「お侍さんに似た人?」
……何したっけ?
ちゃんとご飯誘われたのは断ったし……。
おいらが首を捻っていると、ショウ君のおでこがおいらのおでこにくっついた。
「わからないの?」
ショウ君を見上げると、あんまり顔が近すぎて、ショウ君が一つ目の悪魔に見えた。
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