「ふたりのカタチ」
ふたりのカタチ(やま)【100~120】

ふたりのカタチ (118)

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智さんが、お蕎麦屋さんに連れて行ってくれて、美味しいお蕎麦を食べた。

本当に美味しくって、お腹空いてたんだなって、改めて気づいた。

お店を出ると、そのまま潤さんの所へ向かう。

この時代だもんね。

タクシーってわけにいかない。

歩いたらどれくらいかかるんだろ?

智さんは心配する風でもなくスタスタと歩く。

昔の人ってよく歩くんだなってつくづく思う。

そうだよね?昔は何日もかけて、京都やお伊勢さんまで歩いたんだもんね。

父ちゃんの好きな三人組なんて、日本中を周ってたし!

すると、智さんがなぜかクスクスと笑い出す。

「何かおかしなことがあった?」

「いや、何も……。」

智さんはがに股で、男前に歩き続ける。

「お前さんは……自分を知らなすぎるな。」

「自分を?」

「そうさ。道を歩く輩(やから)を見て見ろ。

 男ばっかりだろ?」

おいらはきょろきょろと辺りを見回す。

通りを歩くのは確かに男の人ばっかり。

女の人は外歩いちゃいけないのかな?

みんなおいらを見て行く……。

女が外を歩くって、相当めずらしい?

「この江戸にゃあ、男ばっかりだ。仕事を求めて男がやってくる。

 女の仕事は少ねぇ。あって、遊女か芸者、仲居にでもなれればいいが、

 働き口はほとんどねぇ。」

「で、でも、女の子だって産まれるでしょ?」

「ああ、商いをしてる家で産まれれば、箱入り娘だ。

 家から出ることはほとんどねぇ。家の手伝いをちょいとするくれぇだ。」

本当に女の子は家から出ないの?

現代とは大違いでびっくりする。

だって、現代じゃ、女の子の方が強かったりするし、

消費の鍵を握ってるのは女の子だって言われるくらいなのに。

「じゃ、みんなどうやって知り合うの?」

「知り合う?男と女がか?」

「うん。」

おいらはうなずいて、智さんを見つめる。

「男と女が出会うことなんぞ滅多にねぇな。それに、なんで知り合う必要がある?」

「だ、だって、恋愛したり、結婚したり……。」

「結婚……?ああ、祝言か。それは家同士が決めるからなぁ。

 見合いか許嫁か……。」

家同士……?

恋愛ってしないの?

「誰かを好きになったりしないの?」

「好きに?そりゃ、勝手に好いたり嫌いになったりするさ。」

「相手もいないのに……?」

知り合う相手もいなくて、好きになったりする?

「そうだな。相手がいることが、奇跡みたいなもんだな?」

「奇跡……。」

うん……奇跡みたいなものだよね。

ショウ君に出会って、好きになって、好きになってもらえて……。

こんな奇跡、ないよね?

おいらはちょっとの間、空を見上げ、ショウ君に思いを馳せる。

早く……ショウ君とこに帰りたい……。

会いたいよ……ショウ君……。

「智さんは……いるんでしょ?そういう人。」

智さんが柔らかく笑う。

この顔する時、相手の人を想ってる時なんだよね。

だって、本当に幸せそうに笑うんだもん。

「ああ、いるよ。」

「男の……人……なの?」

「そうさね。」

「どんな人……?」

「……真面目で無骨で一途で……男前で可愛い……いい男だよ。」

「そうなんだ……。」

「お前さんもいんだろ?」

おいらは素直にうなずく。

「そいつはいい男なのかい?」

どうして……相手が男だってわかったんだろ?

おいらがこんな格好してるから?

それとも……やっぱりその目は、全ての物を見透かしちゃうの?

じゃあ、きっと、ショウ君のこともわかっちゃうよね?

「いい男だよ。頼りになって、かっこよくて、おいらのことを大事にしてくれて。

 おいらにはもったいないくらいの、いい男!」

「そりゃあよかった。大事にしねぇとな?」

「うん。」

だんだん、空の色が変わって来る。

夜が近づいて、オレンジ色の空に、深い群青が混ざり始める。

ふいに、智さんがおいらの腕を引っ張る。

「人が多くなる。おいらから離れるなよ?」

「うん……?」

あ……女の人が少ないから、トラブルに巻き込まれやすい?

おいらは智さんの隣に寄り添うように歩く。

「今、お前は芸者だろ?おいらと一緒に芝居見物だ。」

「んふふ。楽しみ。潤さん、きっとかっこいいよね?」

「あたぼうよ。潤は看板。みんな、潤を見に来るようなもんだ。」

「あ……。」

ふと、目の前の光景に、足が止まる。

暗くなり始めた空を背景に、華やかな芝居小屋が姿を現す。

芝居小屋なんて言うから、小さな物を想像してたけど、

こんなに大きくて賑やかだとは思わなかった。

ポツポツと灯りが灯り、その柔らかい灯りが幻想的な風景を作ってる。

人々の、さざ波のような声。

これから始まる芝居に対する期待?興奮?

むせ返るような煩雑さと、整然とした小屋の佇まいが上手く溶け合って、

神秘的な雰囲気を醸し出してる。

智さんはその中をどんどん進んでいく。

「あんまり手持ちがねぇんだ。切落しでいいかい?」

「きりおとし?」

「いい席じゃねぇってこった。」

「うん。全然平気。潤さんの踊りが見られれば、どこでも!」

智さんがお金を出し、中に入って行く。

おいらも遅れないように智さんの後に続く。

ああ、江戸時代って、こんな感じなんだ……。

まるで、映画を観てるみたいだ。

智さんに着いて行くと、中はさらに映画みたいだった。










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