「ふたりのカタチ」
ふたりのカタチ(やま)【101~120】

ふたりのカタチ (115)

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「それ……櫻井様に言っちゃうよ。」

「ああ、いいよ?」

え……?

櫻井?櫻井って言った?

聞き返したいけど、智さんは縁側に向かって行ってしまう。

「はぁ、朝から疲れた、疲れた。」

わざとお道化たように言ってくれてるけど、面倒かけてるのは事実で……。

「す、すみません……。」

おいらは申し訳なくて、頭を下げる。

「ああ、いいの、気にしなくて。

 ちょっと言ってみただけだから。」

雅紀さんが、ニコッと笑っておいらの後ろに回る。

「はぁ……。」

雅紀さん優しい……。

名前もそうだけど、マー君みたい。

ほら、周りの空気感も、なんとなく柔らかくって優しくって……。

「さ、さっさと着替えちゃお。何があったかしれないけど、

 力になるからさ。」

「そんな……これ以上、御迷惑は……。」

「気にしなくていいよ。その代り、手伝ってもらうから。」

「手伝う?」

おいらが小首を傾げると、帯を手にした雅紀さんが笑う。

「そう。ちょっと忙しくなるから。」

帯をおいらに回しながら、雅紀さんが言う。

「それに……ちょっとお化粧しとこうか?」

「お化粧?」

おいらは、首を傾げてハッとする。

あ……さすがにメイク落としてかつらのままじゃ、おかしいよね?

恥ずかしくってうつむくと、雅紀さんが優しく笑う。

「話は着替え終わってからね。」

雅紀さんの優しい声。

おいらが顔を上げて、小さくうなずくと、雅紀さんも安心したように笑う。

ああ、おいら好きだな……雅紀さんの雰囲気。

「あ、あの……。」

雅紀さんの雰囲気に便乗して、さっきの……聞いてみてもいいかな?

「さっき言ってた櫻井さんって……。」

「ああ、櫻井様?智の……いい人。」

「いい……人?」

いい人って……つまり……彼女ってこと?

「いるんだ……。」

そんな人がいるようには見えなかったけど……。

「なに?智、気に入っちゃった?」

「え……あ、そういうんじゃなくて……。」

「智は難しいよ。止めといた方がいい。」

「だから、そういうんじゃ……。」

雅紀さんが、クスッと笑う。

「櫻井様もいい男だよ。会っても惚れちゃダメだからね?」

「え……櫻井さんって……。」

「ん?男だよ。南町奉行所の同心で、真面目ないい男。」

雅紀さんが楽しそうに笑う。

男同士……。

こんなあけっぴろげなの?

全然オープンって言うか……気にしてない?

そういうもんなのかな?

「じゃ、じゃぁ、さっき言ってた前帯は……?」

おいらは首だけ後ろに回して聞く。

「ああ、育ちがいいと知らない?

 前帯は花を売る女達の着方……。すぐ解けるから。」

雅紀さんがニヤッと笑う。

花を売るって……。

夜の……。

おいらの顔が赤くなり、雅紀さんがそんなおいらの顔を見て、おもしろそうに笑う。

「初心だねぇ。遊んだこともないの?」

「お、おいらには……将来を誓った相手がいるから……。」

「将来?そんな相手がいるのに、なんでまたこんな格好?」

なんでって言われても……。

おいらにもわかんないし。

「その相手ってのは、今、何してんの?」

……今、プレゼン中ですって言ってもわかんないよね?

なんて言おうか考えてたら、体がブルッと震える。

窓、開けっ放しだし、ちょっと寒い?

「はい。できた?寒い?」

おいらが小さくうなずくと、羽織を出してきてくれる。

「これ着てればそんなに寒くないだろう?」

続けて、雅紀さんが白粉を叩いてくれて、なんとか女に見えるようになったけど……。

この時代のメイクって、面白いね。

みんな粉で、それを筆や刷毛で顔にのせていく。

「借りてもいい?」

おいらは雅紀さんから刷毛と筆を借りて、顔に濃淡をつけていく。

真っ白じゃ紙みたいだもんね。

眉もすっと細く引いて、目尻と頬をほんのり染める。

この時代の唇はおちょぼ口?

小さめに、でもふっくら描いて……。

雅紀さんを見上げると、雅紀さんが驚いてる。

「うん、すっごく綺麗になった。」

「ふぅん、お前さん、絵師かい?」

おいらはうなずいて、智さんに向き直る。

絵師……絵描きってことだよね?

智さんは近づいてきて、顎を掬うと、右側、左側からおいらを見て、にっこり笑う。

「こいつはいい助っ人がやってきたな?」

雅紀さんを見上げてニッと笑って、おいらの顔をじっと見つめる。

智さんは黙ったまま、おいらから筆を取り上げ、目尻に朱色の線を引く。

「この方が粋じゃねぇか?」

鏡に映る自分の顔を見る。

「うん。」

確かにちょっとキリッとして、顔がはっきりする。

智さんも……絵師?

「さて……そろそろ話を聞こうか?」

智さんがおいらの前に胡坐を掻き、雅紀さんがお茶を淹れてもってきてくれる。

二人に見つめられて、どこからどう話せばいいか……。

でも、とりあえず、今までのことを……、

未来から来たらしいことを、全部話そうと思った。

おいらに話せるかな?

あ~、ここにショウ君がいてくれたら!










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