「ふたりのカタチ」
ふたりのカタチ(やま)【101~120】

ふたりのカタチ (114)

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「なんだい?知り合いにでもいるのかい?おいらと同じ名前のやつ?」

「あ……うん。そう……。」

びっくりして……なんて言っていいかわかんない。

「じゃ、奥の部屋、貸すから、ついて来な。」

智さん……。

なんか、不思議な感じがする……。

同じ名前で顔まで似てて……。

智さんが、家の中に入って行く。

あ、待って!

おいらは小さな声で呼び留める。

「あ……あの……。」

智さんは眉間に皺を寄せて振り返る。

怒ってる……?

「なんだ?まだ着替えるのが嫌かい?」

あ~、気難しそうな顔になってる!

「そうじゃなく……。」

言ったら怒らせちゃう?

でも……。

「おいら……一人じゃ着れなくて……。」

智さんは、びっくりした顔で溜め息をつく。

「着替えも一人でできないなんて……どこのお殿様だい?」

「え……東京の……。」

東京の渋谷区のお殿様だよ~!

着物、自分で着れる人なんてあんまりいないんだからね!

おいらのところじゃ。

でも、ここで着物が着れないって、何にもできない人だよね?

「……とうきょう?」

小首を傾げる智さんに、おいらは慌てて訂正する。

「……今まで、教えてくれる人がいなかったから。」

智さんが呆れたように笑って、おいらの手を掴む。

ダメかな……?

呆れちゃって、手伝ってくれない?

「来な。手伝ってやっから。」

智さんが優しく笑ってくれて、おいらはホッと胸をなで下ろす。

よかった。

着替えれば、今よりはちょっと楽になる?

ずっと我慢してたけど、この帯、きついんだもん。

息するのも辛くって。

おいらは嬉しくなって、智さんの手を軸に、部屋に上がる。

小さな部屋の奥に、同じ位の部屋があって、縁側に繋がる障子が開いている。

入って正面に台所?土間が広がってて、

何かで見たことのあるような、かまどや水場が並んでる。

右手奥にも部屋があるのかな?

おいらがきょろきょろしていると、智さんが後ろの帯をスルッと外す。

なんか……手慣れてる?

「こうやって見ると、確かに男だが……、化けるねぇ。」

そうなんだよね。化粧と衣装ってすごい!

「さて……うちにあるのはこれくらいなんだが……。」

智さんが箪笥から2枚の着物を取り出す。

一つは艶やかな柄で、青地に赤い大きな牡丹の花。

もう一つは地味目のからし色に萩の柄。

おいらは迷わず萩を指さす。

「だぁな?こっちじゃないと動きにくい。」

着物を広げながら智さんが笑う。

あ……いい笑顔。

おいらに着せると前を合わせて、腰紐を両手で回す。

ぎゅっと抱きしめられたみたいになったけど、

朝の潤さんの時とは違くって、困った感じが全然しない……。

本当に兄弟みたいって言うか……。

まさか……生き別れになったお兄ちゃん?

おいらは一人で頭を振る。

ないない。時代が違うもん。

おいらは着替えながら整理する。

まず、ここはたぶん、江戸。

そして、時代も江戸時代。

歴史の勉強、あんまりしなかったからわかんないけど、

歌舞伎があるんだから、きっと江戸!

ショウ君なら、もう少しいろいろわかるんだろうな……。

帰ったら、歴史の勉強もちょっとしよう!

……ちょ、ちょっとだけね?

「ふぁあ~、おはよ。」

突然、伸びをしながらやってきたのは……誰?

「おはよ。」

智さんは、顔を上げずに挨拶する。

「……おはようございます。」

おいらも倣って挨拶したけど……。

黒目勝ちな目を、まん丸にして、その人がびっくりしてる。

「え……誰?」

おいらは申し訳なくて、小さく会釈する。

「ああ、智千代だよ。潤が連れて来た。」

腰紐をぎゅっと結ばれて、ウッと小さな声が漏れる。

「潤って……成田屋さん?」

「そうだ……。……ほら、動くな。」

「え……でも、苦し……。」

苦しいよ……なんかいろいろ詰めてるし……。

それがずれないように、きつ目にしてくれてるんだろうけど……。

「これぐらい我慢しろ。」

「我慢って……。」

柱を掴んで踏ん張るけど……苦しい!

「何?何してんの?まさか……成田屋さんの女に手を出したんじゃ……。」

男の人の顔が険しくなる。

ち、違うから……。

おいらが言うより先に、智さんが答えてくれる。

「ばか言え。それほど困ってないわ。雅紀、帯、結んでやってくれ。」

「え……でも……。」

「自分じゃ結べないんだと。」

「結べないって……。」

雅紀と呼ばれた男の人が、おいらをじっと見つめる。

どうしたらいいかわかんなくて、苦しいながらもにこっと笑う。

「どこのお姫様だい?」

「そう思うだろ?とりあえず、着替えを済ませたら話してもらうことになってるから。」

智さんがポンとおいらのお腹を叩くと、おいらの姿を、後ろから、前から確認する。

「話……?」

「急がねぇと剛が来ちまうからな。」

「そうだ!双六!」

雅紀さんは、縁側から空を見上げて、慌てた顔をする。

「あ~、お天道様があんなに高い……。」

「急いで結んでやってくれ。」

「え?智は結べないの?」

「おいらは前帯専門だ。」

智さんがにやっと笑って、雅紀さんの顔が赤くなる。

前帯って……どういう意味?










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