miyabi-night(5人)

miyabi-night 二十三話 - japonesque side story -

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「どうして……。」

智千代がびっくりしたように智を見つめる。

「どうしてって……。」

智は鼻で笑って腕を組む。

「男と女じゃ体の線が違う。

 どんなに取り繕ったって、細い男だって、おいらが男と女を見間違うこたぁねぇよ。」

智は笑いながら小上がりに腰掛ける。

「それに、これ……。」

顎を上げて、喉仏を指さす。

「これがある女を、おいらは見たこたぁねぇな?」

片目をつぶって、茶目っ気たっぷりの笑みを浮かべる。

「おいら……騙してたわけじゃないんです……。

 自分でも、どうしてこうなっちゃったかわかんなくて……。

 これは夢じゃないかと思ってるんですけど……。」

智千代が不思議なことを言い出し、智はぷっと吹き出す。

「夢?」

声を上げて笑い、右足を左膝に乗せる。

「こいつぁいい!この世が夢なら、辛いこともなくなるわなぁ?」

「……やっぱり違う……?」

不安そうな智千代に、智ははっきりと言い切る。

「残念だが、夢じゃねぇ。だから、潤にも本当のことを話してやんな。」

智千代は、わかってると言いたげに静かにうなずく。

「でも、女の恰好はしてた方がいいんだろ?」

智が聞くと、智千代は口を尖らせて、眉間に皺を寄せる。

智千代の、どうしていいかわからない様子に、智が優しく助言する。

「まぁいいさ、とりあえずは女の恰好にしておくか?

 夜、歌舞伎に行く時にまたその着物着ればいいだろ?」

智千代は小さくうなずいて、智をじっと見つめる。

少しは安心してくれてるのか……?

智千代の目から、不安の色がなくなったわけではないが、

なんとか、警戒心は緩んでくれてるらしい様子に、智が微笑む。

「まだ、名前も言ってなかったな。

 おいらは智。お前さんは智千代……でいいのかな?」

驚いた顔の智千代に、智も首を傾げる。

智と言う名前に、聞き覚えがあるのだろうか?

「なんだい?知り合いにでもいるのかい?おいらと同じ名前のやつ?」

「あ……うん。そう……。」

智千代は、歯切れ悪く応える。

「じゃ、奥の部屋、貸すから、ついて来な。」

智は草履を脱いで小上がりに上がる。

「あ……あの……。」

智千代が小さな声で智を呼び留める。

その申し訳なさそうな態度に、智は訝しさを隠せない。

「なんだ?まだ着替えるのが嫌かい?」

「そうじゃなく……。」

智が首を傾げると、智千代はおずおずと口を開く。

「おいら……一人じゃ着れなくて……。」

智は一瞬息を飲んで溜め息をつく。

「着替えも一人でできないなんて……どこのお殿様だい?」

「え……東京の……。」

「……とうきょう?」

智千代は頭を振って、智を見上げる。

「……今まで、教えてくれる人がいなかったから。」

智はまた溜め息をついて、智千代の手を取る。

「来な。手伝ってやっから。」

智千代はにこりと笑うと、智の手を握り締め、小上がりに足をかけた。



白塗りを取り、着替えをしていると、雅紀が欠伸をしながらやってくる。

「ふぁあ~、おはよ。」

思いっきり伸びをして、両手を上げ、ぎゅっと目をつぶる。

「おはよ。」

「……おはようございます。」

智千代の声に、雅紀の目が一気に覚める。

「え……誰?」

「ああ、智千代だよ。潤が連れて来た。」

智はぎゅっと腰紐を引っ張る。

「潤って……成田屋さん?」

「そうだ……。……ほら、動くな。」

「え……でも、苦し……。」

「これぐらい我慢しろ。」

「我慢って……。」

着替え途中の智千代は柱に手を付き、一生懸命踏ん張る。

「何?何してんの?まさか……成田屋さんの女に手を出したんじゃ……。」

雅紀の目がきつくなる。

「ばか言え。それほど困ってないわ。雅紀、帯、結んでやってくれ。」

「え……でも……。」

「自分じゃ結べないんだと。」

「結べないって……。」

雅紀は智千代を見つめる。

智千代は苦しさを紛らわすように、にこりと笑う。

「どこのお姫様だい?」

「そう思うだろ?とりあえず、着替えを済ませたら話してもらうことになってるから。」

智は結んだ腰紐に余りの紐を巻き込んで、ぽんと叩く。

「話……?」

「急がねぇと剛が来ちまうからな。」

「そうだ!双六!」

雅紀は、はっと思い出し、縁側から空を見上げる。

「あ~、お天道様があんなに高い……。」

「急いで結んでやってくれ。」

「え?智は結べないの?」

「おいらは前帯専門だ。」

智がにやっと笑うと、雅紀の頬が赤くなる。

「それ……櫻井様に言っちゃうよ。」

「ああ、いいよ?」

智は悪ぶる風もなく、智千代を雅紀に任せると、縁側に向かって腰を下ろす。

「はぁ、朝から疲れた、疲れた。」

「す、すみません……。」

智千代が小さくなって頭を下げる。

「ああ、いいの、気にしなくて。

 ちょっと言ってみただけだから。」

雅紀がにこにこ笑いながら、智千代の後ろに立つ。

「はぁ……。」

智千代は、申し訳なさそうに眉を下げる。

「さ、さっさと着替えちゃお。何があったかしれないけど、

 力になるからさ。」

「そんな……これ以上、御迷惑は……。」

「気にしなくていいよ。その代り、手伝ってもらうから。」

「手伝う?」

智千代が小首を傾げると、帯を手にした雅紀が笑う。

「そう。ちょっと忙しくなるから。」

帯を智千代に回し、手元を見ながら雅紀が言う。

「それに……ちょっとお化粧しとこうか?」

「お化粧?」

首を傾げた智千代が、はっとして、恥ずかしそうにうつむく。

「話は着替え終わってからね。」

雅紀の優しい声色に、智千代が顔を上げて、小さくうなずく。










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