「ふたりのカタチ」
ふたりのカタチ(やま)【101~120】

ふたりのカタチ (113)

 ←ふたりのカタチ (112) →miyabi-night 二十三話 - japonesque side story -


「観たことないって言うからね。それだけのことだよ。」

そうだよ。

それだけだよ。

だけど……、潤吉姐さんがあれだけ踊れるんだもん、潤さんも踊れる?

顔を上げたら、男の人と目が合った。

男の人は意外にも柔らかく笑ってくれる。

あれ……そんなに嫌な人じゃ……ない?

「やっぱり、似てねぇかい?」

潤さんがおいらと男の人を交互に見て言う。

似てる?

おいらとこの人が?

「似てる?」

男の人も同じこと思ったみたい。

そうだよ。

おいら達、似てる?

潤さんが、不思議そうにしてるおいらを前に押し出す。

「ほら、顔が……似てないかい?」

男の人がおいらの顔をじっと見つめて……。

わかった。

この人の目……。

なんか、何でも見透かしそうで怖いんだ。

「おいらはこんなに美人かい?」

「笑った顔なんて、そっくりさ。」

潤さんが、今度はおいらと男の人を並べてにっこり笑う。

「うん。似てる。兄妹みたいだねぇ。」

「へぇ~、そんなに似てるかねぇ?」

男の人がじっとおいらを見つめる。

おいらは見られたくなくて、顔を背ける。

「ま、何にしても、一日くらいかまわねぇよ?」

「そうかい。恩にきるよ。」

潤さんはホッとした顔をして、おいらの肩を軽く叩く。

潤さんに心配かけちゃいけない。

おいら、いつ帰れるかわかんないし……。

おいらが笑うと、潤さんも安心したように笑う。

「それより……、稽古、まだ続けなきゃいけないのかい?」

男の人が潤さんに聞く。

え?この人も踊るの?

「当然だろ?侑李が見つかったからと言って、どうなるかわからない。

 いざという時に、お前さんも踊れる方がいいだろ?」

侑李……誰だろ?

「そりゃそうだろうけど……。」

「もうしばらく、よろしく頼むよ。」

「だったら、ちっとは加減しろ!あれじゃ、体がいくつあったって……。」

うふふふふ。

潤さん、稽古は厳しいんだ。

あんなに優しいのに。

あれ?優しいのは女の人にだけ?

潤さん、ナンパ師?

二人が会話を続けてく。

なんか……とっても仲がいいみたい。

潤さんも、ジョーダンを言ったりして笑ってる。

最後に男の人が、頬を膨らませて腕を組むと、

潤さんは笑いながら、おいらの肩を掴む。

「じゃ、くれぐれも頼んだよ。」

潤さんは背中でそう言って、店を出て行った。

「あいつは頼み事しかしやしねぇ。」

文句を言ってるけど、そんなに嫌がってそうには見えない。

文句を言いたいだけ?

意外に子供かも……。

そう思ったら、男の人がおいらに近づいて来た。

今朝の潤さんのこともあったから、思った以上に体がビクッとする。

ほら、ここの男の人は、みんな情熱的かもしれないから!

「大丈夫。成田屋の女に手だしなんかしねぇから。

 芸者のくせに、男慣れしてねぇみてぇだな?」

男慣れしてたらショウ君に怒られちゃうよ!

「……は、初めてだから……。」

慌てて言い訳してみる。

今日一日お世話になるんだから、少しは歩み寄らないと。

「お座敷は昨日が初めてかい?」

おいらがちょっとうなずくと、男の人が、おいらを上から下まで見る。

「じゃ、とりあえず、その恰好をなんとかしないと……。」

え……着替え?それはまずい。

おいらが逃げるように後退ると、男の人が同じ歩幅で近づいてくる。

「そのままってわけにもいくめぇ?」

「で、でも……。」

脱いだら……着れないし、手伝ってもらうこともできない……。

「ここには女用の着物もあるから、それに着替えればいい。

 あっちに行ってるから、一人で着替えれば……。」

おいらはぶんぶん首を振る。

「なんだ?そんなに着替えるのが嫌かい?」

男の人は不審そうに眉山を上げる。

「……このままがいい……。」

おいらは願いを込めてそう言う。

どうか、穏便に事がすすみますように!

「それは……男だから?」

え……気付いてる……?

おいらが男だって!

おいらは息を飲んで男の人を見つめる。

「どうして……。」

「どうしてって……。」

男の人は、フッと鼻で笑う。

「男と女じゃ体の線が違う。

 どんなに取り繕ったって、細い男だって、おいらが男と女を見間違うこたぁねぇよ。」

男の人は笑いながらおいらを見る。

「それに、これ……。」

男の人が顎を上げて、喉を指さす。

あ……喉仏?

「これがある女を、おいらは見たこたぁねぇな?」

軽く片目をつぶって笑う男の人は、

おいらが女装してることを咎めるような感じでもなくて。

どうしたらいいか考えて……。

「おいら……騙してたわけじゃないんです……。

 自分でも、どうしてこうなっちゃったかわかんなくて……。

 これは夢じゃないかと思ってるんですけど……。」

「夢?」

男の人が、一瞬、目を瞠って、大声で笑いだした。

「こいつぁいい!この世が夢なら、辛いこともなくなるわなぁ?」

「……やっぱり違う……?」

「残念だが、夢じゃねぇ。だから、潤にも本当のことを話してやんな。」

……わかってる。

ちゃんと謝らなくっちゃ……。

「でも、女の恰好はしてた方がいいんだろ?」

どうなのかな……女の方がいいのかな?

男の恰好になっても、元に戻れる?

やっぱり芸者の恰好じゃないとダメなんじゃ……。

「まぁいいさ、とりあえずは女の恰好にしておくか?

 夜、歌舞伎に行く時にまたその着物着ればいいだろ?」

おいらはコクリとうなずいて……男の人の言う通りにすることにした。

「まだ、名前も言ってなかったな。

 おいらは智。お前さんは智千代……でいいのかな?」

おいらはびっくりして声も出ない。

まさか……おいらと同じ名前なんて!










関連記事
スポンサーサイト



 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png a Day in Our Life
総もくじ 3kaku_s_L.png Kissからはじめよう
総もくじ 3kaku_s_L.png Step and Go
総もくじ 3kaku_s_L.png 果てない空
総もくじ 3kaku_s_L.png タイムカプセル
総もくじ 3kaku_s_L.png Hello Goodbye
総もくじ 3kaku_s_L.png season
総もくじ 3kaku_s_L.png 夏の名前
総もくじ 3kaku_s_L.png Welcome to our party
総もくじ 3kaku_s_L.png Deepな冒険
総もくじ 3kaku_s_L.png 三日月
総もくじ 3kaku_s_L.png WONDER-LOVE
総もくじ 3kaku_s_L.png みんなと作ったお話
総もくじ 3kaku_s_L.png 大人の童話
総もくじ  3kaku_s_L.png a Day in Our Life
総もくじ  3kaku_s_L.png Kissからはじめよう
総もくじ  3kaku_s_L.png Step and Go
総もくじ  3kaku_s_L.png 果てない空
総もくじ  3kaku_s_L.png タイムカプセル
総もくじ  3kaku_s_L.png Hello Goodbye
総もくじ  3kaku_s_L.png season
もくじ  3kaku_s_L.png 五里霧中(5人)
総もくじ  3kaku_s_L.png 夏の名前
もくじ  3kaku_s_L.png Troublemaker(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png Crazy Moon(5人)
総もくじ  3kaku_s_L.png Welcome to our party
総もくじ  3kaku_s_L.png Deepな冒険
もくじ  3kaku_s_L.png 花火(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png miyabi-night(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png ZERO-G
もくじ  3kaku_s_L.png 復活LOVE(やま)
総もくじ  3kaku_s_L.png 三日月
総もくじ  3kaku_s_L.png WONDER-LOVE
総もくじ  3kaku_s_L.png みんなと作ったお話
もくじ  3kaku_s_L.png Believe
もくじ  3kaku_s_L.png コスモス
総もくじ  3kaku_s_L.png 大人の童話
もくじ  3kaku_s_L.png 智君BD
もくじ  3kaku_s_L.png ブログ
もくじ  3kaku_s_L.png ティータイム
【ふたりのカタチ (112)】へ  【miyabi-night 二十三話 - japonesque side story -】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit
  • 【ふたりのカタチ (112)】へ
  • 【miyabi-night 二十三話 - japonesque side story -】へ