「ふたりのカタチ」
ふたりのカタチ(やま)【100~120】

ふたりのカタチ (112)

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朝起きると、潤さんがすぐに出かけると言う。

「お稽古があるから、出かけなくちゃならない。

 智千代を一人にするのは心配だが……。」

え、ええ~?

潤さん、出掛けちゃうの?

潤吉姐さんは?

おいら一人?

一人で町を散歩するのも楽しそうだけど、ちょっと怖い気もする。

女の恰好してるし、ここがどこかわかんないし……。

おいらが顔を上げると、潤さんが心配そうにおいらを見てて……。

「友達にお願いするから、夜は一緒においで。」

潤さんは、おいらを安心させようとしてくれてるのか、背中を撫でてくれる。

「潤さん……。」

おいら、できれば友達より潤吉姐さんがいいんですけど……。

とは言えず、うなずくしかなくて。

「じゃ、行くよ。本当は着替えさせてあげたいんだが……。

 すまないねぇ、ここには女着物は置いてなくて。」

潤さんがすまなそうに眉尻を下げる。

おいらにとってはそっちの方が都合がいい。

だって、着替えられないし、脱いだら……男ってバレちゃうし。

でも、もうバレても平気?

潤さんなら切られることないよね?

むしろ、その方が身の危険が少ないかも……?

「そんな顔して……お稽古より、智千代と居たくなってしまうよ?」

潤さんの腕がおいらの肩に回り、おいらの顔にイケメンの顔が近づいてくる。

え?おいら、どんな顔してた?

ほ、ほらね……。

おいらが女の恰好なんてしてるから……。

さらに近づくイケメン……。

ま、まずい……。

「じゅ、潤さん、お稽古の時間……。」

潤さんは、後10センチのところで止まって、しげしげとおいらの顔を見つめる。

そ、そんなに見られたら恥ずかしいから……。

潤さんの胸を押して、顔を背けると、潤さんの唇がこめかみに当たる。

「俺の気持ちは昨日話した通りだよ。

 会った時から気に入っていたが、一緒にいればいるほど……。」

潤さんの艶っぽい声と息が耳にかかる。

まずい~。

おいら、耳、弱いから……。

だって、ショウ君が、耳ばっかり攻めたりするんだもん……。

耳だって感じやすくなるって……。

慌てて耳を手で塞いで、潤さんを見ると、潤さんが、フッと笑う。

「大丈夫。急いだりしないから。

 智千代が俺を好いてくれるまで……待つから……。」

潤さんの手がおいらの手を握り締める。

親指で愛しそうにゆっくり手の甲を撫でる。

「お、おいらには……将来を誓い合った相手が……。」

「将来……?許嫁?」

許嫁……?

パートナーってなんて言ったらいい?

おいら、今、女だから、旦那様でいいのかな?

でも、ちょっと違うような……。

でも、奥さんって言ったら余計ややこしくなるし……。

おいらはゆっくりとうなずいて、潤さんを見上げる。

「じゃ、どうしてそこから逃げて来たの?」

逃げて来たわけじゃ……。

おいらにだって、どうしてここにいるのかわかんないのに……。

ショウ君……。

ショウ君のことを思ったら、寂しそうな顔になったのか、

潤さんの指が頬を撫でる。

「辛い事があったんだね……。」

違うけど……説明もできないから……。

おいらは無理やり笑顔を作って見上げる。

辛い事があったわけじゃないんだよ、潤さん。

潤さんはおいらを見つめて抱きしめて……。

「ずっとここにいていいから。気持ちが落ち着くまで……待つから……。」

「潤さん……。」

勘違いしたままの潤さんだけど、説明のしようもなくて、

おいらは黙って抱きしめられる。

力強い潤さんの腕……。

……潤さんって情熱的だよね。

だって、昨日会ったばっかりだよ?

この時代の人って、みんな、こんななのかな?

潤さんはおいらを離すと、立ち上がらせてくれる。

「さ、行こうか。」

そう言って、にっこり笑って……。

おいらをその店に連れて行ってくれた。



「ひがしくも……?」

見上げると、潤さんが笑う。

「ははは。しののめって読むんだよ。読み書きは苦手?」

「う、うん……。」

しののめって読むんだ……。

どういう意味だろ……。

後でショウ君に聞いてみよう……。

潤さんは、東雲の暖簾を上げて、中に入って行く。

「ごめんよ。」

中からは……誰の声も聞こえない。

もしかして、いないの?

「誰かいるかい?」

潤さんはどんどん入って行く。

おいらも遅れないようについていく。

「なんだい、朝っぱらから……。」

そう言いながら出て来たのは、眠そうに欠伸を噛み殺して、

潤さんとは違って、着物の着方もだらしない男の人。

「おや?朝っぱらからいい身分だねぇ?」

その人がいやらしく笑う。

なんか、嫌な感じ。

「ま、これが昨日の成果でね?雅紀はいるかい?」

成果って……?

「雅紀はまだ寝てるよ。もうすぐ起きてくることはくるが……。」

「ああ、そうだったね。すまない。ちょっと……頼みがあってね。」

潤さんがその男の人に近づいて行く。

「頼み?」

「ああ、お前さん、今日の稽古はいいから、一日、こいつを預かって欲しいんだ。」

「こいつ……?」

潤さんが斜め後ろにいるおいらを、チラッと見る。

おいらはなんか、この男の人に見られたくなくて、

下を向いたまま、黙って顔を逸らす。

「なんでも、まだ江戸に出てきて日が浅い、

 ここらには不案内だというから、一日面倒みて欲しくてね。」

潤さん、おいらの心配してくれてる……。

「そりゃ、かまわねぇけど、今日は和の双六が刷り上がってくるから、

 あんまり外には行けねぇよ?」

……すご…ろく?

「それで構わないよ。夜になったら、俺の舞台に連れて来てくれれば。」

「あんたの舞台を見たら、いちころって寸法かい?

 いやいや、もうすでに……。」

男の人がまたいやらしく笑う。

なんか……この人、ちょっと苦手かも!










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