「ふたりのカタチ」
ふたりのカタチ(やま)【101~120】

ふたりのカタチ (107)

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戸の向こうで、にっこり笑っていたのは、本物の芸者のお姐さん。

鼠色の縞の着物に羽織を付けて、男っぽく見えるのがかっこいい。

ああ、これでなんとか助かる!

そう思ったけど、おいらの腕は堺屋さんに掴まれたままで、

困った顔でお姐さんを見上げると、お姐さんはニコッと笑って、

堺屋さんの腕をパシッと叩く。

「困りますねぇ。辰巳の芸子は芸は売っても身は売らぬ、

 そう聞いたことはござんせんかねぇ?」

お姐さん!

ずいぶんドスの利いた声……。

しかも、目力、すごっ!

なんか、ジュン君みたい……。

目力すごいと、みんな似るのかな?

「ふ、ふん、生意気な芸子じゃないか。

 ま、こういうのが、なかなかいいと言うからな……。」

堺屋さんがいやらしく笑う。

それを見て、お姐さんもふふんと鼻を鳴らし、おいらをお姐さんの隣に引っ張る。

「見ない顔だね?その恰好、吉原かい?……どこの者だい?」

お姐さんがおいらの耳元にそっと口を添え、小さな声で聞く。

「お、おいら……なんでこうなっちゃったのか、わかんないんですけど……。」

おいらも手で袖を押さえて、お姐さんに耳打ちする。

「何をこそこそしゃべってるんだ。ほら、酒がないぞ?

 老中が来てからこれでは困る。」

ろうじゅう?

ろうじゅうって、あの老中?

時代劇とかに出てくる、あれ?

水野なんとかとか……田沼なんとかもそうだっけ?

なんか……悪い人って印象だけど……。

ってか、これ、なんかのお芝居?

どっかにカメラある?

おいら、お芝居なんてできないよ~!

おいらがキョロキョロしていると、お姐さんはクスッと笑う。

「とりあえず、お酌しとくれればいいから。」

お姐さんに言われて、しかたなくおいらは堺屋さんにお酌する。

こんなとこ、ショウ君が見てたら、なんて言うか……。

また女装したからだって怒られちゃうよっ!

「堺屋様は西の方のご出身とか?こちらはどうです?」

お姐さんの営業スマイルは完璧。

色気といい、粋な所作といい、もう、本当に本物の深川芸者に見える!

本物なのかな……?

今でもいるんだね~。

う~、描いてみたい!

一度、お座敷遊びしてみたいって言ったら、ショウ君びっくりするかな?

そんなことを二人の会話を聞きながら、ぼーっと考えてたら、

堺屋さんがおいらをじっと見ているのに気づく。

「な、何か?」

おいらがビクッと体を引くと、堺屋さんが、手招きする。

「ここへ来い。お前はすぐに酌を忘れる。

 それじゃいつまで経っても半人前だ。俺が教えてやる。」

そう言って、隣の畳を叩く。

どうしようか困ってお姐さんを見ると、お姐さんは仕方ないと小さくうなずく。

なんか……いやらしそうで嫌なんだけど……。

でも、どんどん話は進むし、出て行くタイミングはわかんないし。

観念して、堺屋さんの隣に座ると、

堺屋さんは満足そうにおいらに向かってお猪口を差し出す。

おいらは不器用ながらもお酌して……。

「お前は顔はいいのに……おぼこだな……。」

「おぼこ?」

おいらが首を捻ると、隣のお姐さんが、ククと笑って言い放つ。

「無粋ですねぇ。そんなことを口にする……、それは西の作法でございますか?」

「な、何を!?」

「今日は粋な飲み方ってやつを……お教えしましょうかねぇ?」

「なんだと!?お、お前なんかいらん!帰れ帰れ!」

「これまた無粋な……。」

お姐さんは口に手を添えて高らかに笑う。

「では、私も西の作法とやらでお相手した方がよろしいようで?

 生憎、生まれも育ちも江戸なもんですからねぇ。

 あっちの作法なんて、とんと知るよしもない。

 江戸に来たなら、江戸の作法で飲みやがれ!

 郷に入れば郷に従えって言葉、知らないのかい!」

お姐さんの目がキラリと光る。

片膝を軽く立て、その膝に腕をついて言い放つお姐さん。

か、かっこいい~!!

惚れる!惚れちゃう~!!

片膝立ててるのに足は見せないし、啖呵切る時の鋭い視線!

思わずおいらが拍手をすると、緊迫して睨み合ってた二人がおいらの方を向く。

おいらは、拍手する手を徐々に、ゆっくり小さくしていって……。

背中を丸めて小さくなると、そんなおいらを見て、お姐さんが声を上げて笑う。

「すまないねぇ。私は短気で……。

 お前さんのその穏やかな雰囲気は、強い武器になる。大事におし。

 さ、堺屋様、仲直りに一献……。」

そう言って、お姐さんがお銚子を手にする。

「う、うむ……。」

お姐さんに圧倒されてた堺屋さんも、お猪口を差し出し仲直り……。

これ、本当にお芝居?

芝居じゃなかったら……なんでこんなことしてるんだろ?

おいらは行灯の揺れる明かりを見つめる。

続いて障子、襖、鴨居……。

どれもよくできていて、古さって言うか、機械感がないって言うか……。

ほら、襖にしても、屏風にしても、本当に描いてるみたいで……。

え?描いてる?

建物もコンクリートっぽさが全くなくて……。

すごい。ここまでこだわって作ってるの?

撮影用なのに?

おいらはちょっと体を伸ばして窓から外を見下す。

下を行きかう人々は……ポツポツと……人通りは少ない。

町の明かりは穏やかで、とてもLEDの明かりには見えない……。

2階の窓からなのに、遮る物がないから、遠くの方まで見渡せる……。

確かにここは京都の繁華街からはちょっと離れてるけど……。

こんなに遠くまで何もないってことある?

しかも、こんなに真っ暗?

街灯もないなんて?

まさか……。

本当の本物の江戸ってわけじゃ……ないよね?










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